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週刊こぐま通信
「室長のコラム」

韓国から教育視察団が来日しました

第91号 2007/02/02(Fri)
こぐま会代表  久野 泰可

 1月26日から28日まで、韓国の幼稚園の園長先生方30名ほどが、こぐま会の教育現場を視察に来ました。授業見学や質疑応答、また講演会等3日間盛りだくさんの行事をこなしました。今回は3月に新学期を迎える韓国の幼稚園で、私の開発した「KUNOメソッド」を導入するにあたり、園長先生方の研修会を兼ねて、実際の授業現場を見に来られたのです。

 ご存知のように、韓国の子どもたちの学力水準は、数学も読解力も、日本を引き離し、世界のトップレベルです。大学の入試しかないのに、幼児期からの教育に対する取り組みは日本とは比較にならないほど熱心です。人材の流出を防ぐ意味も含め、国家の幼児教育に対する取り組みも、日本とは全然違います。幼稚園でも日本の小学校のように、時間割がきちんと決められていて、音楽の時間、体育の時間と同じように、学習の時間もしっかり確保されています。園ごとに方針を立て、小学校に入る前の子どもたちの教育を系統立てて行っています。

 これまでも、日本で開発された教育法が、相当取り入れられ、フラッシュカードを使った教育や計算力を養うトレーニングも盛んだったようです。しかし、今は形式だけの教育に疑問を持ち、思考力を養う教育を、脳生理学の成果を導入しながら、右脳教育だけでもいけない、また左脳教育だけでもいけない、バランス脳という考えかたの全脳教育とでも言うべき教育法が模索されているようです。右脳と左脳がお互いにバランスよく補い合い、感性豊かで思考力のある子どもを育てたいと考えているようです。そうした、韓国の幼児教育に携わる関係者から、「KUNOメソッド」は、右脳左脳どちらにも偏らず、バランス脳を育てるにはとてもすばらしい教育法だと評価され、私としても大変ありがたく感じています。

 小学校入試などない韓国の学力は、世界のトップレベルにあります。その最大の理由は、幼稚園関係者だけでなく一般の家庭の両親も、幼児期の教育によって「論理的思考力」を育成しなければだめだという考えを持っていることにあるのだと思います。また、飛び級制度などをいち早く導入し、国家の方針として国を支える優秀な人材を教育によって確保しようと、さまざまな試みをしているようです。そうしたお隣の国の方策を、日本も少し見習うべきだと思います。

 上海を訪問したときお会いした、幼児教育を専門とする著名な学者が、「日本の学者たちはなぜ、教育に理想ばかりを求め、現実を注視しないのか」ということを話していました。韓国の幼児教育への取り組みや、中国の良いものを世界から吸収していこうという意気込みを肌で感じるにつけ、何十年と変わらない、日本の幼児教育の貧困さに、いまさらながら驚きと憤りを感じるのは私だけでしょうか。教育再生会議の議論を見ても、また総論だけで終わるのではないかと今から危惧しています。教育現場で今何が起こっているのかをもっと知り、その解決のための手立てを具体的に示さなければ、新しい指導要領ができても、何一つ変わらない現実が続くだけです。そして、改革がまた新たな矛盾を生む結果になってしまうのではないかと心配しています。

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