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週刊こぐま通信
「室長のコラム」

生活の中で学ぶ (3) 夏休みをいかに過ごすか

第861号 2023年6月23日(金)
こぐま会代表  久野 泰可

 秋の入試にとって、夏休みをどう過ごすかは大事な課題です。特に月齢が低いお子さまにとっては、これまでの遅れを取り戻す最大のチャンスです。かつての入試では、月齢によって入試問題が変えてあったり、合格させる人数を月齢の区切りに振り分けたりしている学校もありましたが、最近はそうした考慮はあまりありません。実際に子どもの成長を見ていくと、確かにばらクラスが始まった年中の11月頃は、問題の出来具合に月齢差が大きく影響していました。しかし例年、夏休みが終わった9月はじめの子どもたちの様子を見ると月齢差はほとんど感じなくなっており、またそうしたことを学校側も認識しています。実際、例年9月に行われる模擬テストでは、これまでの順位が大幅に変わることがあり、多くの場合、月齢の低い子たちが大勢上位に上がってきます。そうした意味でも、年長の夏休みの経験は子どもの成長にとって大きな意味があるように思います。

昨年秋に行われた入試で希望の学校に合格した皆さまに、アンケート形式で35の質問に答えていただきました。大勢の卒業生の皆さまから感想が寄せられています。これらをまとめて「合格者からのアドバイス」として集約し、こぐまクラブで閲覧できるようにしています。その中で、「夏休みの学習や過ごし方について、工夫された点や気を付けた点がございましたらお聞かせください。」という質問へのご回答をいくつかご紹介させていただきます。

  1. 早生まれの子どもでしたので、7月下旬にようやく発達レベルが最低限のレベルに到達したという感覚がありました。そのため、夏休み前までの学習はペーパーを朝1時間のみでしたが、夏休み以降はペーパーを2時間(朝と午後)& 巧緻性1時間(夜)と増やしました。
  2. 勉強は朝と午後で合わせて3時間ほどでした。毎日できるだけ同じスケジュールで過ごしました。それまでは具体物中心でペーパーは少なかったですが、夏休みはペーパーの枚数を増やし、ペーパーの練習もしました。過去問もしっかりやりました。
  3. 毎日規則正しい生活を心がけました。早寝早起き、朝のラジオ体操、学習はこぐま会の課題と過去問、ひとりでとっくんをひたすら丁寧に行いました。苦手を減らすことをメインに取り組み、得意な点はひとりでとっくんで更に自信をつけて行きました。制作の課題は気分転換になるので毎日必ず取り入れました。
  4. 家族の時間を優先し、講座を選択する際には復習の期間と子どもの休憩時間の確保も考慮しながら選択しました。7月に入ると9月第一週までの予定を立てました。入学試験から遡っていつぐらいの時期までに何が出来るようになっていないといけないのか、夏休みに何をしなくてはいけないのか・・・こぐま会から得た夏休みの過ごし方を参考にしながら子どもに合ったプランを考えました。しかし、実際には思うように進まず8月に計画を見直しました。夏休み用に頂いた問題以外にも問題集をやっていたので、頂いたものを全ては解くことができず、問題集を整理して過去問の進め方を考えました。基礎問題を入れながら応用問題を多く解くようにし、できない問題が多かったり疲れている時は翌日誰もが解けるような簡単な問題を選び、満点を取って本人のやる気が低下しないよう気を付けました。ただ、子どもの気持ちが乗らず勉強を始めるまでに時間がかかる時期で、これはとてもストレスでした。ですのでその前日まで何とか勉強ができたのであれば、怒鳴ってしまいそうになる日は思い切って全く勉強せず、勉強の話題にも触れず疲れるまで外に連れ出しました。
  5. 遊ぶ時間の確保、お友だちとお祭りや公園にたくさん行きました。お手伝いも大切にしました。夏休みはお昼ごはんが必要なため最初は母親が作ったおかずをお弁当に詰める作業をやってもらい、徐々にできる範囲を広げていきました。買い物は毎日連れて行って、食材の常識や豆知識を話したり、何か良くない行いの場面を見た時は、その後で「他の人が困っちゃうよね。ああいう時はどうしたらいいのかな?」と子どもに考えさせたりしました。続けていく事で、夏の後半では子どもが主導になって買い物をし、食材についても詳しくなっていました。最終的には店員さんに気づいたことを自ら伝えに行ったり、商品の場所を店員さんに聞きお礼を言って戻ってくる、電車内の落とし物を駅員さんに自ら届けに行ったりするようになりました。
  6. 過去の面接の質問の中に「最近お子さんが出来るようになったことは何ですか?」という質問がありましたので、夏休み中に自転車の練習をしました。自転車に乗れるようになって自信がついたようで、その後に縄跳びにもチャレンジして跳べるようになりました。ペーパー以外にも運動などでできることが増えると本人のやる気や自信に繋がり、子どもも「夏はいいね!」と喜んでいたので、親子共に楽しんで夏を過ごすことができました。たとえペーパーのできが親の思うように伸びなくても、子どもが笑顔で楽しそうに過ごせれば、親子(特に母親)の心の安定にもつながりますし、面接や行動観察では子どもらしくかわいい姿が先生方にも伝わるだろうと考えておりました。
  7. 飛行機、電車、レンタカー等さまざまな乗り物に乗る旅行を計画し、家族でストレス発散し大いに楽しみました。けれども、画用紙や季節カード、小さいサイズの常識問題の冊子は持って行き、移動中やホテルなどで活用しました。
  8. 祖父母の家に一人で止まる挑戦をさせたり、家族で海に行ったり、カブトムシを捕まえたり、トウモロコシを蒸し焼きしたり・・・年長の夏休みならでは、という経験をさせてあげるように心がけました。
  9. 旅行は7月中に、それ以降はこぐま会の各講座をタームをずらして取る事で、勉強する習慣や生活、学習リズムを崩すことなく過ごせたと思います。1タームに詰めるのではなく、各週になにかしら講座が入っている状態にしました。
  10. 10月に精神面のピークを持って行きたかったので、気合を入れすぎないようにしました。遊びとモノづくりの時間を一番大切にし、家族で区民プールに通ったり、夏の終わりには旅行に行って海で思いっきり遊びました。工作では海で拾った貝と砂で写真立てを作ったり、風鈴に絵を描いて飾る、観葉植物に小さなログハウスを割りばしやカラースプレーでDIYするなど、多くの時間を割きました。絵画や工作の時は好きな曲を流しながら楽しく実施しました。
  11. 夏休みは時間があるので計画的に過ごしていきたいと思い、生活すべてが子どもの学びの場であると意識しながら過ごしました。ただ実際に過ごすと大変な日々であったので、過ぎてから思いましたが、区のサービスやお預かりしてもらえる習い事などを利用して親がリフレッシュする時間を何回か作ればよかったと思いました。

夏休みは秋の入試にとって最大の山場だといわれることが多く、多くの皆さまがペーパー学習にどれだけの時間が割けるかを問題にしがちです。しかし、ここに寄せていただいたご回答からは、机に向かう勉強だけでなく、時間があるときにこそできるさまざまな体験をさせていることがお分かりいただけると思います。
5の方は、お祭りや公園に行ったりし、お手伝いも大切にしました。また、買い物には毎日連れていき、食材の常識や豆知識を話したりし、よくない行いの場面を見たときは「ああいうときはどうしたらいいのかな」を問いかけ考えさせることをしたようです。6の方は、面接試験の際の「最近できるようになったことは何ですか?」という質問に答えられるように自転車の練習をしたようです。7の方は、いろいろな乗り物に乗って家族での楽しい旅行をしています。8の方は、ひとりで泊まる経験をさせたり、夏休みならではの体験をさせたりしています。10の方は、遊びとモノづくりの体験をたくさんさせ、10月に精神的に一番良い状態で試験が受けられるよう夏の過ごし方を工夫しています。11の方は、生活すべてが子どもの学びの場であると考え、いろいろな経験をさせています。またその一方で、親がリフレッシュする時間も大切なことを強調しています。もちろん、まず第一に1~4にあるように、ペーパーを使った学習を行う上での工夫も大事です。しかし、夏休みを勉強漬けの毎日にしてしまわないよう、生活の中でさまざまな体験を通して主体的に学ぶ姿勢を身につけることも大切です。夏休みにしかできない体験や家族旅行などもぜひ計画してください。10月下旬から始まる入試に、心身ともに一番良い状態で臨むために、その子にあった夏休みの過ごし方をどうしたらよいかを工夫してください。

これまで多くの子どもたちの夏の過ごし方を見てきた私の経験から、ぜひ次のような「生活の中での学び」を実行していただきたいと思います。

  1. 毎週生活の中で頑張る目標を子どもと一緒に掲げ、実行できたかどうかをチェックする「がんばり表」のようなものを作る
  2. 早起きの練習と模倣体操の練習を兼ね、毎日ラジオ体操を行う
  3. ひとりで泊まる経験をさせてください。精神的にたくましくなるはずです
  4. お手伝いをたくさんさせてください。料理の経験はとても意味があります。実体験をもとにした「お料理レシピ」も作ってみてください
  5. 毎日絵日記を書かせてください
  6. ゲームをたくさんしてください。特にトランプゲームやオセロはおすすめです
  7. 旅行は計画の段階から子どもを参加させ、できるだけ自家用車ではなく公共交通機関での移動をお勧めします。自分で企画した乗り物体験は貴重で、多くの学びがあるはずです



 こぐま会代表 久野泰可 著「子どもが賢くなる75の方法」(幻冬舎)

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子どもを机に向かわせる前に実際の物に触れ、考えることで差がつく。
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