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週刊こぐま通信
「室長のコラム」

もう一度脳を育てよう

第800号 2022年1月28日(金)
こぐま会代表  久野 泰可

 2005年から毎週書き続けてきたこのコラムも、今回で800号を迎えることができました。多くの皆さまにお読みいただき、本コラムがきっかけとなる出会いもたくさんありました。また、こぐま会の教育理念をめぐって感想やご意見をお寄せいただくこともあり、書き続ける励みにもなってきました。コラムでは、教室での授業を通じて感じたことや小学校受験に関する分析、日本における幼児教育改革の動きについての私見や提言を発信してきました。書くテーマを探すのが大変な作業ですが、過去に書いたものを立ち止まって読み返してみると、当時の状況がよくわかり、並べてみると私自身の実践記録であったり、こぐま会が歩んできた貴重な記録にもなっていることを改めて感じます。これから日本では幼児教育の改革がかなり進んでいくと思います。その動きを一実践者の立場で受け止め、現場から見た改革の問題点を述べていきたいと思っています。50年間この世界にいた人間にとっては、これからの数年間は大変貴重な時間になるだろうと思っています。書き続けることに私なりの使命感を持ちながら、日本の幼児教育改革を見守っていきたいと思います。


さて、コロナ禍の影響で少し遅れてしまいましたが、コラム614号で紹介しましたように、こぐま会で開発したオリジナル教材を高齢者の認知症対策に有効活用できないかという取り組みがようやく再開の運びとなり、この度教材を世に送り出すことができました(2022年2月10日(木)発売)。「グランブレイン」という"脳年齢を保つ"大人のための教材シリーズで、「もう一度脳を育てよう さんかくパズル」と「もう一度脳を育てよう 台形つみ木」の2種類です。幼児向けに開発した教材を基に、素材の選択や読みやすい文字の大きさなどについて高齢者の方々に直接意見を伺い、実証実験を繰り返して完成させました。わたしたちのカリキュラムと教材は、40年以上にわたる研究と実践の積み重ねで作られた独自のものですが、認知症の専門医が、そこに認知症予防の要である脳の活性化に効果的な「見て、触って、考える」手法が網羅されていることに着目し、こぐま会との共同研究が始まりました。2018年2月より、認知症サポート医 荻野宜子医師のもと、愛知県豊橋市「共立荻野病院デイケアセンターフラミンゴ」にて体験授業やトライアルを繰り返し、約100名の高齢者の方々に協力をいただきました。認知症予防における教材の研究を積み重ねて完成した教具です。2019年には、グランブレイン教材が認知機能の低下を抑えるという仮説に基づいた実験が週1回の認知症予防プログラムに組み込まれ、2カ月間行われました。そのうえで、プログラム体験者を対象に認知症に関する検査(MMSE)を実施した結果、体験前よりも体験後に評価が上昇または不変の方が多かったことから、認知機能の低下を抑える効果が期待できることが実証されました。

【もう一度脳を育てよう 三角パズル】

直角二等辺三角形のパズルが16枚(赤8枚・黄8枚)入っています。
  • パズルを枠の中にぴったりとはめる
  • 見本を見て同じ形や模様を作る
  • パズルを1枚だけ動かして、形を変化させていく
を行うことができます。
「柔らかくて厚みのあるパズル」「簡潔な文章」「大きな文字」など
高齢者の方々に直接意見を伺い、使いやすさを追求しました。
推理・しりとり・記憶・図形の問題などに挑戦できる問題集も付いています。

【もう一度脳を育てよう 台形つみ木】

台形・長方形・三角形のつみ木を使って形や模様づくり、記憶のトレーニングができます。
  • つみ木を積んで立体の形を作る
  • 積み方や並び方の記憶のトレーニング
  • 平面で幾何学模様を作る
を行うことができます。
木のぬくもりを感じながら空間認識力や集中力を鍛え、脳の健康を保ちます。
推理・しりとり・記憶・図形の問題などに挑戦できる問題集も付いています。

これらを全国の高齢者施設で活用いただいて、その成果を集めてより広い観点からこの教材の持つ意味を検証し、次の教材開発につなげていきたいと思います。
人間の認知能力の獲得過程は、子どもも大人も変わりません。ですから幼児向けに開発したオリジナル教材が、これまでも知的な障害を持つ子どものための教材として活用されたり、日本語を学ぶ外国人の言語教材として活用されてきました。今回の高齢者向けの認知症対策の教材もその一つです。教材づくりを通して社会に貢献できれば、わたしたちにとってこの上もない喜びです。

※次回の更新は2月11日(金)です
 重版決定!! こぐま会代表 久野泰可 著「子どもが賢くなる75の方法」(幻冬舎)

読み・書き・計算はまだ早い!

家庭でできる教育法を一挙公開
子どもを机に向かわせる前に実際の物に触れ、考えることで差がつく。
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