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週刊こぐま通信
「室長のコラム」

入試をひかえた子どもたちの心配ごと

第77号 2006/10/20(Fri)
こぐま会代表  久野 泰可

 間近に控えた入試。面接も始まり、子どもたちも緊張の日々です。願書書きで忙しかったお母さんも時間的に少しゆとりが持て、最後のまとめに力が入ります。しかし、心配事は尽きず、今までできていた問題ができなかったり、家ではできるのに模擬テストになると点が取れないといった状況に、イライラが募ります。

 こぐま会の基本クラスもあと1回で終了し、その後は学校別・テーマ別の直前講習が続きます。先週の授業の終わりに、私の担当するいくつかのクラスで、子どもたちに聞いてみました。「もうすぐ学校に行って、テストを受けるけど、何か心配なことや、先生に聞いておきたいことはありますか?」

 最初のうちは、何を聞けばいいのかわからなかった子が多く、静まり返っていた教室も、1人2人と質問しだすと大勢の子が手を挙げ始めました。

「途中でおなかがいたくなったらどうしたらいいの」
「途中でお手洗に行きたくなったらどうしたらいいの」
「お試験のとき、足ががたがた震えたらどうしたらいいの」
「やめ、といわれて全部できていなかったら、その学校に行けないの」
「電車が止まって、遅刻したらどうしたらいいの」
「わからなくて涙が出てきたらどうしたらいいの」
「横に座ったお友達が、いじわるしたらどうしたらいいの」
「この中(14人)で、1人だけうかるの、それとも1人だけおちるの」

 まだまだたくさんありました。お母さんやお父さんが日ごろから話し合っていることを耳にして、自分なりに心配していることや、子ども自身が考え、心配していることもあるようです。ただ、私たちが想像する以上に間近な「試験」のことが気になり、プレッシャーを受けていることだけは事実のようです。子どもの質問に、一つ一つ丁寧に答えてあげると、安心したような顔でうなずいていました。

 入学試験を子どもがどのようにとらえているかは、それぞれのご家庭で、勉強することの意味や動機付けをどのように言い聞かせてきたかによってまちまちですが、家庭の中だけでなく、幼稚園のお友達や、一緒に勉強している塾のお友達との会話の中から、なんとなく感じ取ることもあって、すべてがわからないだけに、余計に心配になっている面もあるようです。
 これまでも、あれもいけない、これもいけない、こうしなさい・・・とたくさんのことを言われ続け、そしてまた、最後のまとめの勉強で、お母さんからいろいろなことを注意されると、子どもにとって入学試験は、何か自由に振舞えない、怖いものにうつるのでしょう。そんな精神状態で試験を受けても、普段の力が発揮できるはずはありません。私たち教師は、子どもたちが抱くどんな小さな不安にも、丁寧に応え、その不安をできるだけ取り除き、子どもに元気に明るく振舞ってもらわなくてはなりません。入試を受ける今の段階で、ある事項が理解できていないという子はほとんどいないはずです。しかし、テストをすると得点に差がつくのは、聞き取る力や取り組むスピードに違いがあるからです。不安を抱えたままの状態では迷いが生じ、集中力を持続して取り組むことは出来ません。どんな精神状態で試験を受けるのか、そのことが合否の分かれ目になるということは、これまでたくさん見てきました。

 子どもたちに最後の授業で渡す「お守り」は、一年間一緒に学び、信頼関係ができているからこそ、意味のあるものだと考えています。これから入試まで、体調を崩さないための健康管理とともに、精神面での健康管理がとても大事な時期だと思います。

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