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週刊こぐま通信
「室長のコラム」

「今私たちにできること(1)」

第717号 2020年4月24日(金)
こぐま会代表  久野 泰可

 緊急事態宣言によって塾も休業要請の対象になり、こぐま会でも4月7日から5月6日まで休校措置を取っています。3月からの小中高校への休校要請に対応する形で、こぐま会でも3月3日から14日までの2週間休校となりましたが、それ以前からも三密を避けるためにいろいろ工夫して授業をしてきました。特に大人同士、あるいは大人と子どもの接触をできるだけ少なくするために、授業終了後の説明を教室内で行うことを止めました。狭い空間に20名から30名の大人と子どもが集まることだけは避けようと、ビルの入口で子どもを引き取り、授業終了後の説明についてはご家庭で映像を見ていただくという対策をとってきました。3月の休校分については同月下旬の振替授業でしのいできましたが、4月7日からの緊急事態宣言に伴う休校措置に関しては、それまで行ってきた振替授業では対応しきれなくなり、オンライン授業を中心にさまざまな取組みに挑戦しています。

私自身は、突然決まった学校の休校措置に対しては疑問を持っていました。なぜここで急に・・・という想いと、それ以降こそ本当に休校措置が必要になるのではないか・・・多くの塾の経営者は、休校か継続かの判断に相当迷ったことだと思います。民間の塾は、飲食店ほどではありませんが、教室での授業ができなくなることは経営にとって大打撃です。そのため、授業を継続したところもあったようです。しかし、個人的には疑問を持っても国の方針に協力しないわけにはいきません。その時考えたことは、休校措置を取るのはいいけれど今度は再開の判断が難しいのでは・・・ということでした。なぜか。それは、休校措置の根拠が示されなかったからです。もっと他に止めなけばならないところがあるのではないか・・・と。その懸念があたってしまい、3月23日から再開したものの、緊急事態宣言により再び4月7日から休校措置を取らざるを得なくなりました。なぜ休校なのか、どうしたら再開できるのか・・・その根拠が示されなければ、民間の教育事業は混乱し破綻してしまいます。

現在、1カ月間の休校措置に入って3週間が過ぎようとしていますが、いまだに5月7日から再開できる状況ではありません。家庭教師はいいけれど学習塾はだめ。ただし1,000平方メートル未満の規模は該当しないという表現に民間の多くの塾経営者が戸惑ったところではないかと思います。明確な根拠を示さない、今の政治に不安を持っている経営者は多いのではないかと思います。政治のありかた、政治家のありかたが今ほど問われたことはなかったのではないかと思います。しかし、国のリーダーに不満があっても、命を守り、早く収束させなくてはいけませんから、国民の1人として休業要請に協力していかなければなりません。

4月7日からの休校措置以降、私たちもいろいろ工夫して授業を継続しています。私が社員に伝えたことは、
  1. 休校措置で教室での授業はできなくなっても、教育の継続性を中断してはならない
  2. 受験生の保護者の皆さまに、どこまで学習が進んできたか、そしてこれからどのように学習が進んでいくか、その見通しをしっかり示さなければならない
  3. オンライン授業を進めるとしても、子どもたちや保護者の皆さまとの心理的距離を広げてはいけない。特に、受験を控える年長の皆さまには、不安な気持にならないように、目標と情報をしっかりお伝えして常に連絡が取れる体制をつくらなければならない

こうした方針を共有し、これまで実現してきたことは、
  1. 4月に予定されていた授業は、オンライン授業(教師による指導動画を見ながら学習する)として映像配信
  2. 授業説明については、これまでよりも詳しく解説した内容を映像配信
  3. 家庭用の教材やテスト教材を充実させるために、家庭用学習教材を3倍以上に増やして配布。5月からは日付の入った毎日トレーニングを制作して送る
  4. 保護者の皆さまからの学習相談に答えるホットラインを開設

特に1.のオンライン授業には、民間の教育機関ではみな取り組んでいると思いますが、幼児を対象としたものについては上級学年と違って難しさがあります。特にこぐま会では、事物教育を指導の中心にしていますので、上級校のようにテキストを使ったオンライン授業だけでは不十分です。ですから、可能な限り実際の授業で使う具体物教材やそれに替わるカード教材をあらかじめご家庭にお届けし、それを使ってできる限りいつもの授業と同じように映像を撮り、ネット配信しています。保護者の方からいただいたメールには、映像を見たお子さまの様子が詳しく報告されていて、例えば「答えは何色ですか?」という質問に、画面に向かって大きな声で「青!」と叫んで集中して学習している様子が伝わってきます。ただ普段の教室では子どもたちの反応を見ながら授業を進めていますし、対話教育を実践してきていますので、こうした配信授業だけでは不十分です。そのことを承知の上で、どうしたら子どもたちが集中力を持続して取り組めるかを考え、ペーパー学習だけに終わらない楽しい学習ができるよういろいろ工夫しています。

例年ならば、この時期に「女子校合格フェア」「共学&男子校合格フェア」を行い、学校情報や合格に向けた家庭学習の方針をお伝えしてきましたが、今年はすべて中止にしております。また、学校説明会も当分の間中止する学校がほとんどです。学校に出向き、第1志望校を決める大事な時期にすべての動きがとまってしまい、今年の受験生の保護者の皆さまは、先が見えない受験対策で不安が多いことと思います。学校側からも受験生の皆さまに何か伝える方法はないかという相談もいただいています。いろいろ工夫して、学校と受験生の皆さまの橋渡しに塾ができることがあれば・・・と考えています。昨年の女子校合格フェアで行ったセミナーの記録もありますので、それを活用する方法も考えています。

新型コロナウイルスによる休校措置により、普段はなかった仕事が増え、休校とはいえ職員は交代で出勤していますが、会員の皆さまが不安なく学習が進められるよう対応しています。思いもよらずオンライン授業を始めることとなりましたが、映像による家庭学習は今回の事態が収束しても有効な方法として継続していくつもりです。今まで模索してきた繰り返しのトレーニングを、配信した映像で行う道も開けてきました。

こぐま会では、この度の休校措置以前からタブレットによるトレーニング、アニメを使った家庭学習、紙媒体の問題集等、いろいろな開発に携わってきましたが、常に対面授業の大切さを念頭においてきました。ですから、今回の休校措置については大変困惑しましたが、いろいろな試みを通じて新しい指導の方法も見えてきました。1日も早く収束することを願いつつ、教育崩壊を招かないよう、子どもたちの学習を継続していきたいと思います。



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