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週刊こぐま通信
「室長のコラム」

第1回合格判定テストを終えて

第675号 2019年5月24日(金)
こぐま会代表  久野 泰可

 今年の受験生を対象とした「第1回合格判定テスト」が、5月3日・4日に行われました。その結果説明会はすでに終えていますが、これからの家庭学習で解決していただきたいいくつかの課題をお伝えします。基礎段階の学習が終わった今、秋の受験にとって最大の山場となる「夏の学習」の課題を明確にすることによって、効果的な学習をぜひ行っていただきたいと思います。今回のテストにおいて、正解率が6割以下の問題に焦点を当て、どこで躓くのか、どのような学習が必要なのかをお伝えしたいと思います。

個別テスト
  1. 6枚のカードを使った「観点を変えた分類」は、「2つの仲間に分けてください」「3つの仲間に分けてください」といったように、分ける数を指定した分類です。自分で自由な発想で仲間分けするのではなく、指定された数に分ける分類は難易度が高くなります。今回は分類基準として、育つ場所・色・形・果物か野菜かといった類の考え方などがありますが、仲間分けした理由をしっかり言えないと減点になってしまいます。こうした問題を通して、「観点を変えて行う分類」や「仲間の数を指定した分類」ができるようにしてください

  2. こぐまパズル4枚を使った平面構成は、直角二等辺三角形の大1枚・小2枚・正方形1枚を使った構成です。見方を変えれば小さい三角形6枚の構成とも考えられますが、正方形は小さい三角形2枚分、大きい三角形も小さい三角形2枚分ということになり、全部を小さな三角形6枚に分解できないところがポイントです。ですから、大きな三角形と正方形をどこに使うかの見通しが立てられないといけません。そこが分かるかどうかがポイントです。大きさの違う三角形や他の形を使って行う図形構成は、これから増えていくはずですので、しっかり練習してください

  3. 真ん中が欠けている3枚の絵を使ってお話をつくる課題は、「話す力」が求められる課題です。個別テストの多い学校でよく出される課題です。4枚の絵カードを時系列に並べてつくるお話と違って、真ん中の欠けた場面を自分で想像し、前の場面と後ろの場面とのつながりをしっかりと考えながら、筋の通った話としてまとめなくてはなりません。そのためにも、2枚の絵をしっかり読み込むことが大事で、その意味で「観察力」が大事になってきます。人前で話すことが苦手な子は、詩などを暗唱させ、みんなの前で発表してもらうような経験を積み重ねてください

  4. 手先の巧緻性は、バンダナを三角に折り、肩にかけて前でコマ結びする課題です。そのうえで、終わったらバンダナをもとの真四角にたたむ課題です。時間制限がありますので、その中でどこまでできるかどうかが評価されます。意外と時間がかかってしまう子が多く、特に元の形にたたむ課題は差が出たようです。日常的に結んだり、畳んだりする行為が少なくなってきているのでしょうか。だからこそ、入試で問われるのだと思います。家庭でのお手伝いで大いに「たたむ」「結ぶ」をさせてください

ペーパーテスト
ペーパーテストは各領域から1問ずつ、合計6問出題しました。
(1) 未測量:逆対応
(2) 位置表象:四方からの観察
(3) 数:数の増減、一対多対応
(4) 図形:点図形
(5) 言語:話の内容理解
(6) 言語:しりとり
この中で、正解率が6割以上だったのは「しりとり」だけで、あとは今の段階でも5割程度の正解率でした。何が壁になっているのか、もう少し詳しく見てみましょう。

  1. 未測量の逆対応の問題では、残ったジュースから飲んだジュースの量を推理する問題です。3番目にたくさん飲んだジュースは、残りのジュースが3番目に少ないものでなくてはならないのに、3番目に多いジュースをとってしまうことがよく見られます。一番たくさん飲んだもの、一番少ないものは分かっても、3番目となると間違えてしまうのは、生活感覚では解けない、一定の論理性がなければだめだということを物語っています

  2. 四方からの観察は、今はやりのつみ木を使った四方からの観察ではなく、2人の子どもが、机の上のおもちゃの電車と車掌さんを横側と向こう側から見たらどう見えるかを問いかける問題です。昔からある典型的な問題ですが、正解率が51%であることを見ると、やはりまだ難しい問題の一つであることには変わりません。ペーパー化された問題が難しければ、実際にその場面をつくり、指定の場所に座った時の見え方を実際に描いてみたり、言語で説明させるような練習をしてください

  3. 点図形は、3つの形を大きな枠の中に描き込む形になっています。当然、点の数も多くなり複雑になりますが、それよりも点の位置が一つずれてしまうような間違いが目立ちます。また、点と点の間を通って曲線を使ってお手本を描かせる課題も、初めての子にとっては難しかったかも知れません。学校側もいろいろ工夫して問題を作成していますので、発想を変えた新傾向の問題にもチャレンジしてください。大きな枠の中に描き込む点図形は、最初の形を描くところがポイントですから、どこの点から始めるかをしっかり見て行うようにしてください

  4. 話の内容理解は、家族で湖に出かけたお話を聞いて、あとの質問に答えるというものです。その中に、数に関する次のような問題がありました。
    「おにぎりはみんなでいくつ食べましたか?」という質問があります。4人家族で、みんな2個ずつ食べたので合計8個が正解ですが、2個だったり4個だったりする子も大勢見られました。2個ずつ食べたところから2個、4人家族であると分かったために4個とする間違いが見られます。また、正解に必要な4人という人数については、どこにも「家族4人」とは言っていません。最初の「太郎君と花子さんはお父さんお母さんと一緒に・・・」の部分をしっかり聞き取り、4人家族だということを把握しなければなりません。このように、話の内容をしっかり理解しないと、音として話を聞いても答えが出てこない場合が結構あります。その意味で、話の内容理解=記憶問題としてしまわないで、しっかりと内容を理解するという学習の仕方をしてください。

今回のテストは、100点満点中平均点は63点でした。今回は会員と外部生が参加してのテストでしたが、平均点が70点ぐらいになるように想定して問題を作りました。結果はそれよりもかなり下回っていて、今年の子どもたちの学力について少し心配しています。どこに原因があるのかいろいろな角度から調べてみましたが、一番の問題は、いつも授業で感じている「話の聞き取り」「設問の聞き取り」が十分できていないところだと思います。1回の指示を聞いて問題に取り組む場合、小学生と違って読み直しができませんから、そこでしっかりと問題の意図を聞き取り、作業の仕方・約束を理解しなければ、どんなに理解力のある子でも得点につながりません。授業でも同じことが言えます。問題の指示をしっかり聞こうという構えができている子とそうでない子は、今の時点でははっきりしています。学習に向かう気持ちの持ち方だと思いますが、学びに新鮮さを感じないで、なんとなく机に向かっている子どもの聞き取り能力は相当落ちています。その意味で、ともかくたくさんのペーパーをやりこなすということよりも、8枚ぐらいのペーパーに集中して取り組む訓練をした方が、実際の試験ではよい結果につながるはずです。子どもの集中力は30分程度であるということを踏まえ、実際の試験時間に合ったトレーニングをすべきです。それが聞き取りの姿勢に大いに関係していることだけは、はっきりしています。今回の結果をよく分析し、夏の課題にしてください。最近の入試は、行動観察が以前よりも重視されている関係で、学力試験の方は基礎的な問題が多いようです。むやみに難しい課題だけを与えるのではなく、基礎的な問題に自信を持って取り組む姿勢を身につけてください。

第2回の合格判定テストは8月下旬に行います。例年、このテストの結果を見て、過去の合否のデータをつき合わせて最終的な志望校を決めていきます。夏の学習の目標を、このテストにおいて高得点を取ることにおき、がんばる子どもたちが増えています。ぜひそのような気持ちで夏の学習に取り組んでください。

年長児対象「第2回 合格判定テスト」のお知らせ
実施日:8月18日(日)、25日(日)
事前にご登録いただいた志望校の合格の可能性を、昨年度入試の合格者データを元に算出します。また、ご登録以外の学校についても合格の可能性を把握する資料(昨年度は私立・国立合わせて全80校掲載)をお渡しします。小学校受験におけるあらゆる試験内容や方法に対応できる力を見極めることができるように工夫して作られたテストです。

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