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週刊こぐま通信
「室長のコラム」

正確な情報を

第658号 2019年1月25日(金)
こぐま会代表  久野 泰可

 合格者を対象とした保護者会がそれぞれの学校で行われる時期になりました。4月入学に向けた準備がいよいよ始まりました。新しい制服の採寸を終えた子どもたちは、制服を着て学校に通うことを楽しみにしているようです。補欠合格をいただいてもまだ連絡のないご家庭では、落ち着かない毎日かと思いますが、現在でも補欠合格者の動きはあるようです。複数校合格してまだ迷われている方や、補欠合格が動いて連絡をいただいても、すでに別の学校に決めていて辞退される方もいらっしゃるようで、まだまだ動く余地はありそうです。学校側としても定員割れして入学式を迎えるわけにはいきませんから、早く確定したいのは当然です。これまでの経験から3月半ばになって連絡が来たという例もありますので、これからも動きはあるかも知れません。また最近では、補欠合格の動きを教えていただける学校もあるようです。

昨年12月2日に行った「私立小学校入試結果報告会」を踏まえ、1月20日から日曜日を使った「学校別入試分析セミナー」が始まりました。それぞれの学校の問題を分析し、今年秋以降受験される方に最新の情報をお伝えするセミナーです。私が20日に担当した学校では、次のようなお話をさせていただきました。

2019年度 学校別入試分析セミナー「聖心女子学院初等科」
  1. 2019年度入試はどのように行われたか
    1. 入試に関する情報
    2. 入試問題の解説:学力試験・行動観察・面接
    3. 何が求められていたか:典型的な問題の分析
  2. 合否判定はどのように行われたか
    1. 合格者数・受験者総数
    2. 合格者の1年間のテスト成績
    3. 最後のテスト結果との相関関係
  3. 2020年度の入試を予想する
    1. 10年間の問題の変遷
    2. 注目すべき傾向を読み取る

まず今回の入学試験の概要を一覧表にし、出願方法・倍率・面接日・集合時間・合否発表・こぐま会からの合格者などについて報告しました。細かいことですが、質問の仕方はどうか、筆記用具は何を使うのか、訂正するときはどうするのか・・・といったこともお伝えしました。こうしたことも受験生にとっては大事な情報です。また、補欠合格者の動きなどは、学校の評価などに繋がる大事な情報ですので、分かる限りお伝えしました。最近は、補欠合格者の動きが以前ほどありません。それは、最初の段階で定員を上回る水増し合格者を出しているからだと思います。これまでの統計から何人くらい補欠が動くのかを考慮して、それを上乗せして合格者を出しているからにほかなりません。入試事務も含め、小学校受験が守ってきた伝統が大学式に変わっていくことには賛否両論ありますが、これも時代の流れでしょうか。補欠合格者の動きをあまり外部に知られたくない、また定員割れを起こしたくない・・・という学校側の苦肉の策ですが、補欠合格の通知をもらったご家庭の立場に立つと、「水増し合格の上になお補欠ですか」・・・という気持ちになるのは当然です。回ってくることを期待している分、ほとんど回らない補欠合格とは何なのか考えてしまうのでしょう。水増し合格を出すならば、いっそのこと補欠合格者を出さないで、回ってきた段階でご家庭に連絡するという方法でいいのではないか・・・とも思います。

さて今回の入試は、全体として学力試験は易しくなっているように思います。その分、行動観察重視の動きが見られます。ペーパー試験であまり差がついてしまうと、行動観察や面接の評価を合否判定に絡ませることが難しくなり、逆にペーパー試験である一定の点が取れれば、あとは行動観察で決めるという考え方があるのではないかと思います。問題が易しくなれば、当然平均点も高くなり、1問のミスが大きな痛手になる可能性もあります。そのためには基本をしっかり身につけることが何より大事です。難しい問題はできても、基本的な問題ができないという状況はあまりよくありません。基礎学力をしっかり身につけることが何より大事です。そのためには、最初からペーパートレーニング・過去問トレーニングの学習を行うことは好ましくありません。子どもの理解の道筋に沿った事物教育が何より大事です。学力試験で学校側が求めているのは、今現在の学力というよりも、これからの学習で伸びていく子どもであるかどうかという点です。そのために、学校は何を重視しているかというと、難しい問題をたくさん与えるということではなく、基本がしっかり身につき、将来の学力の基礎がしっかりできているかどうかを見ようとしています。聴く力・考える力・作業する力が重視されるのは、将来の学習にとってとても大事だということだと思います。また、面接重視の傾向もその流れの中で説明がつきます。つまり、本人が持っている能力を知るということはもちろんのこと、子どもを育てる環境についても大変注目しているはずです。家庭環境、特に子どもを取り巻く人間関係(親子関係)を重視しています。願書・面接試験は、行動観察とセットになって家庭の子育ての様子を見ようとしているのです。言葉を変えて言えば、行動観察は子育ての総決算としての試験であり、つまり親の試験であると捉えるべきです。その意味で、子どもを訓練のために行動観察の講座に預けるという発想は本末転倒なことです。形を教え込む教室に預けるくらいなら、まずお母さまがお子さまと一緒に遊んであげることの方がどれだけ大事か・・・私はそう思います。「お母さまとどんな遊びをしますか?」という質問に答えられない子どもや、「遊んでもらったことはありません」と答える子どもがどれだけたくさんいることか。家庭ですべき基本的なことがなされないまま、入試対策として行われている行動観察講座に入れておけば大丈夫だという発想は捨てるべきです。

セミナーでは、学力試験・行動観察・面接試験の内容を細かく分析した後、2020年度の入試を予想する前提として、過去10年間の問題を分析しました。そうすることによって、その学校の傾向が読み取れ、何を重点的に学習したらよいかが手に取るように分かります。こうした情報をしっかり持っていれば、焦らず11月の本試験を迎えることができるはずです。情報が未公開の小学校入試ですから、正しい情報をどれだけ身につけているかが合否に関係してきます。2月3日まで続く「学校別分析セミナー」に、ぜひ足をお運びください。
情報をどれだけ持っているかどうか、また分析する能力があるかどうか、その上で正しい指導が行われているかどうか・・・これが幼児教室の質を決める条件です。

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