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週刊こぐま通信
「室長のコラム」

第14回 女子校合格フェア

第623号 2018年5月4日(金)
こぐま会代表  久野 泰可

 4月22日から始まった今年の女子校合格フェアのテーマは、「学校が求める正しい学習法」です。入試の内容や方法が変わりつつある現在、正確な情報をもとに「正しい入試対策のあり方」をお伝えするフェアです。

4月22日は、午前中の「願書・面接対策セミナー」を皮切りに、午後には「合格者からのアドバイス」を実施し、受験を終えた保護者の皆さまに、どんな家庭学習を実践し、合格につながったかを具体的にお聞きしました。それぞれのご家庭で工夫したこと、また苦労されたことなど、これから受験する方々にとっては大変参考になるアドバイスをしていただきました。保護者の皆さまには、貴重ですぐにでも実行したいアドバイスばかりだったと思います。こうした先輩 - 後輩のよきつながりが、「正しい受験対策」を行ってきたこぐま会の伝統を支えてくださっています。

4月29日の午前中は、私の基調報告を「学校が求める正しい学習法」というテーマで行いました。準備段階から今年のテーマをどうすべきかという議論を、担当者の間で積み上げてきました。そして、
  1. いまだに間違った情報が氾濫し、「受験は特別な教育をしないと合格できない」といった誤ったうわさが流れ、保護者の皆さまが落ち着いて学習できない環境にある
  2. 変わりつつある受験の中で、学校が求める子ども像がはっきりしてきた
  3. 考える力を育成するためには、ペーパートレーニングだけでは限界がある
  4. 受験のための学習が、将来の学習の基礎として意味があるような受験対策を行う必要がある。そのためには、学習の方法を具体的に伝える必要がある

といった観点を踏まえ、今年の女子校合格フェアを「学校が求める正しい学習法」としました。その方針に沿って、私の基調報告も行いました。

第14回 女子校合格フェア
基調講演「学校が求める正しい学習法」
  1. 入試の現状
    1. 2018年度入試 女子校10 校の応募状況・倍率
    2. 学校運営の方針変化
    3. 入試問題の質の変化
    4. 行動観察および面接重視の背景
  2. 入試問題の分析
    1. 学力の基礎として考える力が求められている
    2. 新傾向の問題
  3. 具体的な学習法の紹介
    1. 交換
    2. 飛び石
    3. 言葉づくり・言葉つなぎ
    4. 魔法の箱
  4. 合格のための家庭での学習法
    1. 入試対策を基礎教育の発展と考え、特別な訓練とは考えない
    2. ペーパーだけを何十枚とやりこなす学習では、今の入試には対応できない
    3. 事物教育を徹底し、試行錯誤する時間を確保し、考える力を身に付ける
    4. 考え方の根拠を言葉で表現させる
    5. 1枚のペーパーを深く、多面的に学ぶ
    6. 行動観察は、親の試験である ( 子育ての総決算としての入試)
    7. 行動観察の対策は、「かたち」を教え込むことではない。経験の蓄積を大事にする

「入試の現状」については、昨年度の女子校10校の志願者数をお伝えし、ほとんどの学校で志願者が増えている実態を明らかにしました。一方で国立附属小学校の受験者が減少している背景もお話しし、これからの学校選びのあり方について、私の考えをお伝えしました。また、最近の学校側の動きから、どんな変化が読み取れるかを分析し、入試問題がなぜ変化しているのか、そしてまた、学校側が何を求めているのかをお伝えしました。中でも、「行動観察」や「面接試験」がなぜ重視されているのかも関連付けながらお話ししました。その上で、入試問題の質が変化している実態を具体的に明らかにするために、最近出されたさまざまな学校の入試問題を16問ほど提示し、学力の基礎として何が求められているのかを分析しました。その中で、新傾向と言われる問題も明らかにし、最近の入試で出やすくなっている問題を予想問題として提示しました。特に「交換」「飛び石」「言葉づくり・言葉つなぎ」「魔法の箱」の4つについてはボード教材をお渡しし、学習手順を具体的に説明しました。最後に、開校初年度の慶應義塾横浜初等部の準備室長のメッセージをご紹介し、受験にあたって「型」を教え込む対策がいかに間違っているかをお伝えしました。最後に、正しい家庭学習のあり方を7つの視点にまとめました。

  1. 入試対策を基礎教育の発展と考え、特別な訓練とは考えない
  2. ペーパーだけを何十枚とやりこなす学習では、今の入試で求められている「考える力」は育たない
  3. 事物教育を徹底し、試行錯誤する時間を確保し、考える力を育てる
  4. 考え方の根拠を言葉で表現させる
  5. 1枚のペーパーを深く、多面的に学ぶ
  6. 行動観察は親の試験であると考え、「子育ての総決算としての入試」と受け止める
  7. 行動観察は「型」を教え込むことではない。経験の蓄積を大事にする

午後には、聖心女子学院初等科の校長先生と教頭先生をお迎えし、「聖心の求める子ども」と題したご講演をお願いしました。まず、校長先生は映像を交えながら、聖心の教育方針や子どもたちの日常の学習の様子を1時間ほどお話しくださいました。続いて教頭先生が、これからの子どもを育てるにあたって大事な3つの観点からお話しくださいました。今、受験の最中にいる保護者の方々にとってはもちろんのこと、受験指導にあたっている私共塾の教師にとっても、お二人のお話は大変参考になりました。「聴く力」を高めること、「試行錯誤し、失敗し、そこでまた考える」、その繰り返しで「考える力」のある子を育てる、また、作業を通して取り組み、「あきらめない心を育てる」ことの大切さをお話しされていました。
また、「受験は、親に子どもと向き合うチャンスを与え、父母が向き合う時間を与え、そして父・母・子のかかわりを深めるといった時間の深さを与えてくれるとても良い機会である」という校長先生のお話は、心に深く響きました。日頃から、正しい受験の取り組みは基礎学力の土台づくりになり、子育てのあり方を振り返るよいきっかけになるという私たちの考えが間違いでなかったことを確信でき、とても勇気づけられるお話でした。ペーパー主義の特別教育が蔓延している現在の受験勉強のあり方が、少しずつ変わっていくことを願っています。大切な幼児期の教育に携わる指導者の方々にも、もう一度受験対策のあり方を考えていただきたいと思います。45年間、聖心受験の指導に携わってきて、初めて塾の教室で校長先生・教頭先生のお話を聞くことが出来たのは、夢のような出来事でした。今回のお話を踏まえ、聖心を目指すご家庭にきちんと学校側のお考えをお伝えし、教室で正しい指導をしていくことが、私たちの役割だと考えております。

5月3日からの3連休中には学校別合格対策セミナーを実施し、10年間の問題分析を通して今年の入試問題を予想しました。行動観察チェックや両親模擬面接も行っております。大きな曲がり角に来ている小学校受験ですが、今年の女子校合格フェアは、私共にとっても大変充実したものとなりました。

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