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週刊こぐま通信
「室長のコラム」

ステップ3 学習のポイント

第613号 2018年2月23日(金)
こぐま会代表  久野 泰可

 ばらクラスの授業は、先週でステップ3の学習が終了し、2回のトレーニングを経たうえで近くステップ別発達診断テストが行われます。このステップ3の学習内容は、実際の入試で出題されることも多く、基礎学力の育成としてとても大事なステップです。以下がその内容です。

未測量長さくらべ
位置表象方眼上の位置および移動
等分
図形同図形発見、点図形
言語話の内容理解、お話づくり
生活 他分類(2)

こうした基礎学習に関連し、入試ではどんなかたちで出題されているのかについて少しご紹介しましょう。
「長さくらべ」に関しては、「個別単位」の考え方が重要です。方眼上に描かれた道を歩くという前提で、どの道を歩くと一番遠いか(近いか)を問う問題です。正方形の一辺を1単位として、それがいくつ分あるかということですが、曲がり角が多いほど道も長いと考えたり、辺の長さが1単位でも2単位でも、真っすぐなところは「1」と数えてしまう間違いが時々見られます。この個別単位の考え方は、正方形を1単位とした「広さくらべ」としてもよく出題されます。

長さくらべ
クマさんとウサギさんが一緒に出発して、旗のところまで行きます。旗までは、線の上を通って1番早く着くように行きますが、×がかいてある道は通れません。
  • どちらが先に旗のところに着きますか。ウサギさんが先に着いた時には、クマさんが先に着いたときは×をそれぞれの右のお部屋にかいてください。
広さくらべ
  • 左のお手本を見てください。白いところと黒いところは広さが同じです。では、右の形の中で白いところと黒いところの広さが同じものを探して、青いをつけてください。

次の「方眼上の位置および移動」に関しては、左右関係が絡む大事な課題です。また、「方眼上の位置の移動」の課題は、「地図上の移動」と同じように、移動課題の中では典型的な問題の一つです。また、「方眼上の位置」は記憶問題としてもよく出されます。3×3の9マス全部を覚える問題も出たことがありますが、これには覚え方があります。絵を見てその頭文字をひたすら記憶するのではなく、まず真ん中を覚え、次に四隅を覚えます。残りは挟まれたものとして覚えると、かなりの確度で正解できます。実際、一度の練習で覚えてしまう子は、クラスの3分の1程度います。これは子どもの能力の長けているところで、フラッシュカードが大人より得意なのは、そうした特性を生かしただけのことであり、思考力とは何の関係もありません。実際の試験では、4つか5つを覚える問題がほとんどで、5つになると少し壁が高くなります。「方眼上の位置」の言語化は、同じ場所を4つの違う言い方で表現できるかどうか一度やってみてください。1つのものを(この場合は場所を)違った角度から見る練習として、とても大事です。

位置の記憶
見本の絵をよく見て、何がどこに入っているか覚えてください。
  • 今見た絵と同じものを選んで、下にをかいてください。

次に数の問題では、「等分」の課題を練習しました。等分は、数の等分だけでなく量の等分も一緒に学習しました。量の等分は、水・ひも・ホットケーキなど素材はいろいろありますが、どれも3等分する方法が課題です。以前、ある学校でホットケーキの3等分が出題されて以降、よく出されています。また、数の等分は、2~4等分まで問われますが、余りが出るか否かによって難易度は変わります。余りが出る等分は、常に配る人数と残っている数との関係を考ながら配る方法を身につけることが大事です。
授業では次のような内容で学習しました。

セブンステップスカリキュラム step3-3
数3「等分」
(1) 連続量の等分
  1. 水を3人に同じ量ずつ分ける。
  2. ひもを2等分、4等分する。
  3. 1枚のおり紙を4等分する方法がいろいろあることを学ぶ。
(2) 分離量の等分
  1. 12個のおはじきを同じ数になるように分ける。
    2等分(6個ずつ)
    3等分(4個ずつ)
    4等分(3個ずつ)
  2. 20個のおはじきを使って、同様に行う。
  3. 13個のおはじきを4等分するといくつ余るか、余りの数が出る 場合の等分を学ぶ。同様に、19個でも行う。

また、応用問題となるといろいろ工夫されて出題されますが、その典型的なものが昨年度の雙葉小学校の入試で出された次の問題です。

数の総合問題
  1. リンゴのお部屋を見てください。4枚の袋があります。ここにあるアメを3個ずつ袋に入れるには、アメはいくつ足りませんか。その数だけ下のお部屋にをかいてください。
  2. イチゴのお部屋を見てください。ここにあるアメを3人の男の子に2個ずつあげると、アメはいくつあまりますか。その数だけ下のお部屋にをかいてください。
  3. バナナのお部屋を見てください。ここにあるアメをお兄さんと弟で分けたいと思います。お兄さんが弟より2個多くなるように分けるとすると、お兄さんのアメはいくつになりますか。その数だけ下のお部屋にをかいてください。
  4. ブドウのお部屋を見てください。四角いお皿から、丸いお皿にアメを1個移しました。2つのお皿のアメの数のちがいはいくつですか。その数だけ下のお部屋にをかいてください。

このような、極めて生活的な問題であるにもかかわらず、数の変化に対する敏感さを求める問題にきちんと答えていける感覚を育てるためには、実際にものに触れ、働きかけ、その結果として数を内面化していく積み上げの学習が必要です。形を教え込んでパターンで解決できる問題ではありません。等分の問題が応用されると、(3)のような問題に変化していきます。状況をしっかり把握しないと、機械的な答えしか出てきません。こうした最近の問題を見ていくと、一見やさしそうに見える課題の中に、工夫された観点がたくさんちりばめられています。

さて図形の課題は、昔からある「同図形発見」と「点図形」です。同じテーマでありながら、問題の中身はさまざまです。学習したものがそのまま試験で出されるわけではないため、基礎をしっかり身につけておくことが大事です。「同図形発見」では、答えを見つけるだけでなく、違うものについてどこが違うかをしっかり言語化させる学習が大事です。また、「点図形」に関しては、従来のような形で出されることはほとんどありませんが、他の領域とセットで出されることはよくあります。特に、「重ね図形」や「対称図形」とセットになるケースが増えています。

位置の記憶
  • 左の2つの形は透明な紙にかかれていると考えてください。この形を左から右へそのままずらして重ねるとどうなりますか。右のお部屋に形をかいてください。

言語領域の課題は、「話の内容理解」と「お話づくり」といった、聞く・話すに関する典型的な課題の練習をしました。最近の入試では、聞く力を求める問題が以前より重視されています。単に話を聞いて覚えるだけでなく、話の内容を理解しなければ解けない問題が多く出題されています。記憶の問題として覚える練習をするのではなく、話の内容を理解するという点に力を入れた練習をしなければ、現在の入試には対応できません。その意味で、読み聞かせの習慣はとても大事です。あまり入試問題を意識した練習をしすぎると、覚えることに力点が置かれ、一番大事な話の内容を理解することがおろそかになってしまいますので、気をつけてください。昨年度の入試で出された典型的な問題を紹介しましょう。

話の内容理解
次のお話を聞いて後の問題に答えてください。
あるところに2人の姉妹がいました。お姉さんは小さいものが大好きで、妹は大きいものが大好きです。
ある日、お姉さんと妹は動物園に行きました。小さいものが好きなお姉さんは、モルモットやウサギ、ハムスターを見ました。大きなものが好きな妹は、ゾウとキリンとクマを見て楽しみました。
たくさんの動物を見たので、そろそろ帰ろうとしたときです。「今日動物園に来てくれた人には、プレゼントがありますよ」という、アナウンスが流れました。プレゼントを配っているところに行ってみると、動物園の人がいろいろな植物の苗を配っていました。そこで、お姉さんは小さい鉢の苗、妹は大きい鉢の苗をもらって帰りました。
2人は、お家に帰ると裏のお庭に畑を作って、もらってきた苗を植えました。そして、お姉さんは小さな畑、妹は大きな畑を作って耕しました。それから2人は、毎日草むしりや水やりをして一生懸命育てました。しばらくすると、お姉さんの畑には黄色いお花が、妹の畑には白いお花が咲きました。秋になると、お姉さんの畑は、ジャングルのように生えた葉っぱの中から大きなカボチャが出てきました。ところが、妹の畑を見ると、花は枯れてしまっていて何もできていません。
それを見たお姉さんが「私のカボチャをあげる」と言ってくれましたが、妹は「また育てるから大丈夫だよ」と言いました。そして、妹が畑の上を歩いていると、何かに足を引っかけて転んでしまいました。よく見ると、それはツルでした。ツルが出ているところを見てみると、土の中から赤いものが出ていました。お姉さんが「土を掘ってみたら?」と言うので、妹はシャベルで土を掘ってみました。すると、どうでしょう。土の中から、大きくて真っ赤になったサツマイモがたくさん出てきました。たくさんなったサツマイモを見て、妹は「お花が枯れても、水やりを続けていて良かったな」と思いました。
たくさんとれたカボチャとサツマイモで、2人はお母さんと一緒にケーキとスイートポテトを作りました。そして、お友だちをたくさん呼んでパーティーをしました。
  1. お姉さんが育てた苗と、苗が育って咲いたお花を青で線結びしてください。
  2. 妹が育てた苗と、苗が育って咲いたお花を赤で線結びしてください。
  3. 4人の女の子が工作をしました。そのときの気持ちをお話しします。その中で、お花が枯れてしまったあとの妹と、同じ気持ちの人は誰でしょう。

    1番左の女の子は「好きな色のおり紙がないから、工作をやめよう」と思いました。
    左から2番目の女の子は「これとは違う紙をくださいって先生に言おうかな」と思いました。
    右から2番目の女の子は「飾り付けが上手くできなかったけれど、もう1回頑張って作ってみよう」と思いました。
    1番右の女の子は「お友だちが大変そうだな。手伝ってあげよう」と思いました。

    妹と同じ気持ちの人に青いをつけてください。

生活 他の領域では、「分類課題」を学習しました。ステップ1で生活用品を使った分類を学習しましたが、今回はトランプカードのような、観点がはっきりしているものを使って仲間あつめをしました。用意したカードは12枚です。形が4種類、色が2種類、数が3種類あるカードを使った分類です。分類の方法としては、
  1. 自由に分類する
  2. 一度集めた仲間を壊し、違った観点で仲間あつめをする(観点を変えた分類)
  3. 仲間の数を指定して、それに合うように仲間あつめをしてもらう
以上の3つの方法で分類を行いました。こうした活動が次のような入試問題の基礎となっていくのです。

観点を変えた分類(1)
この3枚の絵カードよく見て覚えてください。(見せた後、カードを裏返して並べる)
  • 今見たものと同じ仲間だと思うカードを探してください。探したら裏返したカードの下に並べてください。
観点を変えた分類(2)
  • いろいろな鉛筆があります。この鉛筆を見て仲間だと思うもので分けてください。1度できたら、また違った分け方で分けてください。
    (赤、白、縞模様、消しゴム付きのもの、削ってあるもの、削ってないもの、太いものなど)

昔からある「仲間あつめ」も「仲間はずれ」も、大事な観点は「物事の共通性をどう発見するか」です。ですから、仲間はずれの理由説明のしかたも、取り出した仲間はずれの特徴を言うのではなく、取り出した後に残ったものがどんな仲間になるのか、その共通性を言語化することが大事です。違いを見つけることよりも共通点を探すことの方が難しいからです。そのため次のような極めて基本的な問題をしっかりやっておくことが大事です。

二者の異同
  • ここにある2つのものをくらべて、似ているところと違うところを言ってください。

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