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週刊こぐま通信
「室長のコラム」

コラム600号達成
  「幼児教育改革に、今こそ実のある議論を」

第600号 2017年11月17日(金)
こぐま会代表  久野 泰可

 衆議院選挙の目玉政策であった「幼児教育の無償化」が、具体化される方向で議論が進んでいます。財源の問題で、今後もいろいろ議論があるでしょうが、子育て支援のひとつとして歓迎すべきことに間違いありません。しかし、そのことで、幼児教育の改革が進んだと考えるのは、間違っています。この点に関しては、韓国の実情を報告した598号で述べたとおり、教育内容の質が深まらなければ、今世界中で進んでいる「幼児教育改革」に遅れをとってしまいます。小学校とのつながりを意識すべきとした、今回の幼稚園教育要領の改訂にもあるとおり、教育内容の変革が進まない限り、現場は何も変わりません。いま、いくつかの幼稚園から、KUNOメソッドを導入したいという要請がきているのも、そうした国からの要請に応えたいと考える幼稚園の新たな動きかもしれません。教育の質の充実に向けた議論が始まることに期待したいと思います。

ところで、2005年から書き続けてきたこのコラムも今回で600号を迎えました。12年間毎週書き続けてきたことになります。毎回大勢の皆さまにお読みいただき、大変感謝しております。この場を借りて御礼申し上げます。

コラムを書き始めてからの12年間、いろいろな方々との出会いがありました。特にこの5年間、さまざまな職種の法人や個人の皆さまがお声掛けくださり、教室運営だけを考えていた私たちに、海外進出や日本各地での教室展開、新しい教材開発の道を開いてくださいました。お声掛けをしていただいた皆さまの共通点は、このコラムをお読みになって、私の幼児教育に対する考え方・実践に賛同していただいて・・・ということのようです。突然かかってくる電話や送られてくるメールに対して、どうして私たちのところに・・・とたずねると、ほとんどの方がそうおっしゃいます。そうして始まった新しい仕事を、コラム500号において3つの事業として紹介させていただきました。
  1. 海外での教育事業
  2. 国内での教室事業
  3. 国内外での通信教育および教材販売事業


現在この3つのプロジェクトは順調に発展し、多くの子どもたちが「KUNOメソッド」で学習をしています。またこの1年間で新たに加わったプロジェクトは、次の4つです。

  1. 海外での教育事業に、タイとシンガポールが加わり、南京(中国)での教室も始まること
  2. 国内での教室事業としては、京都教室が始まり、またいくつかの幼稚園や保育園に講師を送り込む事業が始まったこと
  3. 教材販売においては、こぐまなびプロジェクト として「ひとりでがんばりマスター」 のタブレット用アプリが、今年1月から発売されたこと。また、アニメによる新しい通信教育の制作が進んでいること
  4. 高齢者の認知症対策としての教材やタブレット用アプリの制作に加え、知的に障がいを持つ子どもたちの教材開発に関し、実証研究が始まったこと

KUNOメソッドの考え方がさまざまな分野で広がりを見せています。人が物事をどのように認識していくか、その萌芽形態がこの幼児教育にあると遠山啓氏は述べていましたが、多くの方々からの声掛けは、まさしくそのことを表しています。こうした方々との最初の出会いがこのコラムであったということが判明した以上、これまでにも増して、書き続ける責任の重さを感じます。このコラムが今後も更新されていく、ということはつまり、私にその時点で現場に立てる体力があり、元気に子どもたちと接することができている・・・ということを示すものです。私が現場に出られなくなれば、このコラムも終えざるを得ません。団塊の世代であるわれわれは、最近仲間が集まるたびに「東京オリンピック」までは元気で・・・という言葉が別れ際の合言葉のようになっています。2020年は教育改革にとっても大事な年です。それまで元気に現場に立つことができれば、このコラムも700号までは達成することになりますが、私の目標は、800号です。1972年に現場に出てから、2022年で50年になります。現場で50年間指導ができれば、生涯現場に張り付いてきた証になるでしょう。実践を通してつくり上げてきたKUNOメソッドですから、実践の場を離れるということは進化がとまるということですので、それは許されません。「生涯一教師」を言い続けてきた私には、続ける責任があります。

700号に向けた歩みを、また一歩進め、これから活発になるであろう「新しい幼児教育のあり方」の議論に、私のこれまでの経験を生かして参加して行こうと思います。無償化で終わらないで、実のある議論が活発に行われることを願っています。

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