ページ内を移動するためのリンクです
MENU
ここから本文です
週刊こぐま通信
「室長のコラム」

学校別入試分析セミナーが始まりました

第563号 2017年1月27日(金)
こぐま会代表  久野 泰可

 昨年12月18日に行いました「2017年度私立小学校入試結果報告会」に引き続き、1月22日より、毎週日曜日を使って学校別に問題を詳しく分析する「学校別入試分析セミナー」が始まりました。こぐま会で出版している入試問題分析資料「教室指導者からのメッセージ」を執筆している担当教師が、2017年度の入試問題を詳しく分析してお伝えするセミナーです。私が担当した「聖心女子学院初等科」には、定員を超す80名近い保護者の皆さまにお集まりいただき、今回の入試に関する最新の分析をお聞きいただきました。最初に、入試に関する情報を現場サイドからまとめたものを用意し、それを使って報告しました。これは今年から作り始めたものですが、受験生の皆さまが一番知りたいと思われる情報をまとめたもので、受験情報誌には載らない情報も含まれています。

【聖心女子学院初等科 入試関連情報】
説明会6月11日 年長児対象お遊び会、個別学習相談会有り
9月10日 校内見学、個別学習相談会有り
その他行事2月03日 学習発表会特別観覧(要予約)
5月28日 運動会(要予約)
6月20日 公開授業(要予約)
10月9日 みこころ祭(中高文化祭)
願書提出10月1日~3日 (郵便受付、消印有効)
受験番号願書受付順(ランダム)
面接日10月15日(土)、10月22日(土)
試験日11月1日(火)
試験当日の集合時間
(1) 8:00
(2) 9:40
試験時間約2時間
倍率約4.2倍
合格発表11月3日 WEBサイトにて
こぐま会生徒の合格者数33名(受験者数:51名)
ペーパーテストの方法発問方法:録音音声
筆記具:クーピーペン(青色)
訂正方法:×印をつける

そのうえで、ペーパー1枚1枚を紹介し、出題する学校側の意図を伝えるとともに、子どもにとって一体何が難しいかをお伝えしました。

聖心は、今回の試験ではペーパーの枚数は昨年度より増えたようです。増えた分の多くは「常識問題」ですから、難易度が上がったわけではありません。むしろ、一つ一つの問題は易しくなっているように思います。ということはどういうことでしょうか。平均点が上がり、学力試験での差はあまり見られなくなってきているということです。しかし逆に言えば、基礎的な問題でしっかり得点しないと、1問のミスが今まで以上に大きな意味を持ってしまうということです。また、学力試験で差がつかない分、行動観察やそれとセットになった面接がより重視されることになるはずです。勉強対策だけしていれば合格できると考えるのは、間違っています。学習場面で常にプレッシャーをうけ、親子の関係においても自立した判断ができないような学習環境では、子どもの成長過程で必要な大事なものを身につけるチャンスを失っていく結果になってしまいます。受験だから特別でよい、子ども同士を競わせて成績を上げるという指導では、年長児としての心の発達が阻害されてしまいます。そこには、行動観察や面接で学校側が求めている「他者との関係づくり・他者への思いやり」が育つチャンスがありません。学力以外の非認知能力も重視され、学力だけで決まっていかない小学校入試の現実をしっかり踏まえた入試対策がなされなければなりません。

最近のペーパー試験の特徴の一つである、作業して答えを導き出す典型的な問題が、今年も出題されました。

  • 動物たちがすごろくをしました。スタートのからはじめて、上のお部屋のようにサイコロを振って最後に着いた場所に、それぞれ動物の絵がかいてあります。ただし、のところに止まると3つ進み、のところに止まると1つ戻るお約束です。まず練習してみましょう。ゾウは3、次に4、その次に1の目が出たので、今いる場所に着きました。
  • ウサギとリスも上のお部屋のようにサイコロを振りました。あいているところには、どんな目が出たと思いますか。その数だけエンピツでサイコロの目をかいてください。

何が工夫された問題なのか、少し分析しましょう。
  1. 4回振るさいころのうち、途中の3回目に振ったさいころの目を考える問題は、「逆思考」といわれる方法で問題が作られており、結果から戻って、考える問題の形式になっています。
  2. ウサギの場合は、は関係なくできるので問題はないですが、リスの場合は、10進んで丸のところに行き、約束の3進むとに着くので、今度は1もどらなければなりません。その作業を踏まえて、3回目に振った目を予測できるかどうか。この問題が、難しかったはずです。
移動に関する問題は過去にも出されていますし、他の学校の問題を見てもよく出される問題です。こうした問題は、指示をしっかり聞き、約束を理解し、自ら手を動かし、作業して答えを導き出さなければなりません。こうした問題が今後増えていくことが予想されます。自分の力で問題を解く学習環境を整えることが大事です。こぐま会からは、今回33名の合格者を出しました。51名受験して、33名が合格した今回の実績は、最近になく良い結果だったと思います。われわれが大事にしてきた「事物教育」による自ら考え、自ら答えを導き出す経験が、良い結果を導き出したのだと思います。

PAGE TOP