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週刊こぐま通信
「室長のコラム」

合否を分ける「時間」「聞き取り」対策をどうするか

第501号 2015/10/2(Fri)
こぐま会代表  久野 泰可

 都内の小学校の願書提出もほとんど終わり、これから面接・入試本番と続きますが、一番良い状態で入試本番を迎えるために、何をどう工夫したら良いのか・・・これはとても大事なことです。直前の学習方法を誤ると、せっかくこれまで積み上げてきた学習が生かせず、入試本番で力を発揮できない場合が少なくありません。笑顔が消え、自信をなくした状態で入試本番を迎えたのでは、合格できるはずはありません。そうならないために、何をどう工夫すればよいのか。特に、合否の決め手となる「時間内に処理する能力」「質問の意図を1回で正確に理解する能力」をどうするかについてお伝えします。

まず何よりも大事なのは、健康管理です。季節の変わり目で体調を崩しやすい時期でもあるし、伝染性の病気がはやる時期でもあります。食事・睡眠の管理とともに、手洗い・うがいを必ず実行することです。しかし、だからと言って、幼稚園や保育園を休ませるようなことをしてはいけません。それはかえってマイナスです。体の健康管理だけでなく、心の健康管理も大切だからです。そのためには、まず日常生活のリズムを変えないということが大事です。休む理由もなく入試のために欠席することは、その生活リズムを壊すことになり、好ましくありません。最後までこれまでと同じ生活を続けることです。その上で、勉強面や人間関係で精神的なプレッシャーを与えないということです。如何に自信を持たせて、本試験に送り込むか・・・これをこそ考えなくてはなりません。

学習において自信をなくしていく主な原因は、直前になっても難しい問題をやり過ぎることです。入試問題の8割は基本問題です。2割の難しい問題のためにだけ時間を割くと、基本問題すらもかえって難しく考えてしまい、得点できないケースが目立ちます。ともかく、みんなが得点できる所で点を落とさない・・・まずこれを徹底すべきです。しかし、基本問題といえども、昔の知能テストのように同じ問題が出されるわけではありません。基本問題においても、学校側は子どもにとって新出の問題と映るように工夫しています。ですからこうした課題への取り組みは、パターンで覚えるのではなく、考え方をしっかりと身につけることです。おそらく、実際の入試問題は、今まで練習してきた問題と同じ形で出されることはないと考えておいたほうが良いと思います。ですから、形で覚え込むような学習では対応できないのです。毎日50枚トレーニングしても、同じ問題は出ないと考えたほうが良いと思います。ですから私は、いろいろな質問がなされる可能性があるため、「1枚1枚のペーパーを大事にしてください。同じペーパーでもいろいろな質問をしてください。その上で、必ずどう考えて解いたのか、理由説明をさせてください。」と言い続けてきました。

そうした学習方法で臨むとすると、1日に取り組むペーパーの枚数には限りがあります。とても毎日50枚もできるはずはありません。何枚やったかではなく、どこまで深く学習できたかを大事にすべきです。こうした点も含め、入試直前のペーパー学習は、次のような点を工夫してください。

(1) 実際の入試においては、多くてもペーパーは10枚前後です。10枚のペーパーをテスト形式でやるとすると、実際にかかる時間は30分前後です。この時間が大事です。つまり、「30分間どこまで集中できるか」が大事だということです。そのためには、家庭で行うペーパー学習は入試本番を想定し、30分を一区切りにテスト形式で行うことをお勧めします。その上で、1枚1枚ていねいに答え合わせすべきです。それが1日何回できるのか。1時間も2時間も連続してペーパーをやっても効果的ではありません。なぜ「集中力が大事」かというと、それを学校側が強く求めているからです。時間制限をするのはそのためです。集中力があれば時間は短縮できると考えているからです。

(2) それだけではありません。以前は、練習問題をやってから、本番をやるというケースが多かったものです。問題の意図が伝わったかどうかを確認してから取り組ませるというように、かなりていねいに行っていました。集団用の知能検査のやり方が、そのようになっているからです。しかし、最近の問題は練習問題がなく、すぐに本番というケースがほとんどです。ですから正確に聞き取れたかどうかが大事なのです。ペーパーで得点を積み重ねるためには、この「設問の聞き取り」が大事です。1回限りの質問を正確に聞き取ることができるかどうか・・・これが最後の決め手になります。特に最近の問題は、作業能力が求められる問題が増えています。どういう約束で作業すべきか・・・その聞き取りができないケースが目立ちます。こうしたことを考えると、がむしゃらにペーパーを使ってパターントレーニングするという方法は、今の入試に合っていないということになります。

(3) では、どうすべきか。時間制限に関しては、時間内にできなくてはいけないとプレッシャーを与えるのではなく、がんばれば自分でもたくさんできるという自信を持たせることです。こぐま会では「スピードトレーニング」と称した練習を、8月以降の授業で毎回行っていますが、これはそうした意図を持って行っているトレーニングです。子どもたちも集中して取り組み、「スピードトレーニング」と言っただけで相当盛り上がります。運動会感覚で取り組むからなのでしょうか。そのトレーニングを通して、誰もが、がんばればできるという気持ちを育てるのです。

(4) そうは言っても、すべての問題が時間内でできるわけではありません。学校側も明らかに、誰1人としてできない時間で「やめ」ということもあります。今まで完璧にできていた子ほど、こうした場面にぶつかると、その事実を受け止めることができず、相当精神的なダメージを受けます。その結果、次の質問がほとんど冷静に聞けないケースが考えられます。こうした事態にぶつかった時どうするか。仮にできない問題があったとしても、次の問題を冷静に聞くためには、普段からそうした場面を意図的につくっていくことです。「難しい問題や、時間が短かった時は、できないこともある、でも一生懸命頑張ることが大事である」という経験を積んでおけば、できなかった場面でも、それを冷静に受け止め乗り切ることはできるはずです。こうした練習も、毎回行っていて効果が見られます。

(5) 聞き取りの対策として有効な方法は、次のような点です。
  1. ペーパーを出して問題をやらせるという前提で、質問した後すぐには取り組ませず、「どんな質問だったかもう一度言ってみて」と質問の内容を説明させることです。意図が理解できなければ、この段階で説明できません
  2. もう1つ有効な方法は、「お母さんが問題を解くから、問題をつくってみて」、と子どもに質問をつくらせることです。ペーパーを見て自分で問題をつくれれば、それだけ理解しているということです

この2つの方法も、効果があることが解っています。

(6) ペーパー問題ができても、本当に解っているのかどうか、疑いたくなる場面もあります。そうした場合は、子どもにどう考えて答えを出したのか説明させることです。こぐま会が一番力を入れているのは、この点です。ペーパーができたから、「では次に進みましょう」・・・ではなく、そのが本当に解っているのか一度疑い、どう考えてそうした答えになったのか説明させます。また、その上で違った質問もしてみます。どんな方法で問われても、理解できるのかどうかを確認しながら進めていくので、答え合わせに相当の時間を割いています。そこにこそ「学ぶ」チャンスがあるからです。

以上、入試直前対策としていつも課題になる、「時間制限」と「聞き取り」の取り組み方をご紹介しました。追い込みの家庭学習を効果的に進めるために参考にしてください。

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