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週刊こぐま通信
「室長のコラム」

インドで行った秘密袋の授業

第478号 2015/4/10(Fri)
こぐま会代表  久野 泰可

 3月28日より4月1日までインドを訪問し、モデル授業やセミナーを行ってきました。2回目となる今回の訪問目的は、デリーとグルガオンに住む日本人と、3つのインターナショナル幼稚園に通う現地在住の外国人を対象に、図形の公開授業と、教師及び保護者対象のセミナーを行うことでした。4日間で5回の公開授業と4回のセミナーを行い、「KUNOメソッド」の内容と方法を具体的に伝えました。昨年6月に初めて訪問し、1回目のセミナーを行いました。それから日本人と現地人向けの授業が始まりましたが、今回は新たに開講を希望されるインターナショナル幼稚園において、公開授業とセミナーを行ってきました。ほぼ1年間経過した現在、日本人スタッフ1名、インド人スタッフ4名で授業を進めていますが、教室数の拡大に伴い、日本語のわかる現地人スタッフを増やさないといけない状況です。ベトナムにしてもインドにしても、日本式の教育に対する信頼度は高く、学習内容だけでなく、子どもへの声かけ等にも大変興味を持たれていたようです。授業の終わった後、いろいろな質問を受けました。園によっては相当量のペーパーを行っている幼稚園もあり、また、ピアジェ理論をベースにした内容で行っている幼稚園もありました。その意味でかなり専門的な質問もありました。具体物を使い、最後にペーパーで学習するKUNOメソッドの方法に大変興味を持たれたようです。試行錯誤しながら考えることの意味を、大使館勤務のドイツ人の方から評価していただきました。


今回行った公開授業は、新年中と新年長の2学年でしたが、「秘密袋を使った触索」と「つみ木を使った立体構成」を、難易度を変えて行いました。その内容は以下のようなものです。
1.秘密袋を使って
A) 箱に入った具体物のうち、最初に取りだしたものと同じものを取り出す(4歳)
B) 教師の示したものと同じ立体を取り出す。(4歳は3個・5歳は6個入れる)
C) 触ったもの(平面)を紙に描いて表す(5歳のみ)
2.立方体つみ木を使って
A) 4個の構成(4歳) 見て作る・記憶して作る
B) 8個の構成(5歳)
C) 8個のつみ木を1個ずつ動かし変化させる(5歳)
D) つみ木の数当て(5歳)
E) 隠れたつみ木の数当て(5歳)
3.図形模写
見本と同じ形を鉛筆で描く(4歳・5歳)
その内容は、逆三角形・ひし形・立方体

同じ教具を使い、4歳児と5歳児の発達の違いを考慮し、扱う素材の難易度や扱う数、質問の仕方などを変えて行いました。同じ素材を使いながら、1年間の発達の違いを踏まえて、少し背伸びしないと解決しない課題をその場で工夫しながら、90分の授業を行いました。つみ木はともかく、秘密袋は初めての教材ですから、子どもたちも大変興味を持ち、集中して取り組んでいました。その様子を、幼稚園の園長や保護者の皆さまも大変興味深くご覧になっていました。大声を張り上げていた5歳の男の子も、この教材を出したとたんに集中しました。その姿は、ベトナムで行ったモデル授業の際の子どもたちの様子と重なりました。子どもが興味を示す教具・教材をいかに準備し、授業を進めるか・・・事物教育の意味を再確認しました。

今回初めて訪問し、公開授業を行った幼稚園では、日ごろからピアジェ理論をベースに学習内容を考えているということでした。「KUNOメソッド」もピアジェ理論を踏まえて内容や方法を考えていますので、大変よく理解していただけたようです。諸外国に行って教育関係者や保護者の皆さまにお会いして意見交換することは、私自身にとっても大変勉強になりますし、日本の幼児教育のおかれた位置と課題が良く見えてきます。図形模写などを通してみると、海外の子どもたちの方が、日本の子どもたちよりもすぐれていることを痛感します。「日本の幼児教育は変わらないといけない」という想いを、今回も強く持ちました。

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