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週刊こぐま通信
「室長のコラム」

ちょっとだけ背伸びして・・・

第477号 2015/3/27(Fri)
こぐま会代表  久野 泰可

 基礎段階最後のステップであるステップ4の学習がほぼ終了し、春休みを迎えました。昨年9月から半年余り積み上げてきた基礎段階の学習内容は、入試問題の8割をカバーしています。これまでは、できる限り具体物やカードを使った「事物教育」を中心に進めてきましたが、これからは、ペーパートレーニングが意味を持つ時期です。過去問トレーニングもその一つですが、問題の難易度には相当の開きがあるのも事実で、すべての過去問が今すぐにできるわけではありません。基礎的なものから始めて、いわゆる難問まで同じ領域の問題を系統立てて学習していかなくてはなりません。その際、子どもたちの能力を高めるために、ちょっとだけ背伸びをさせる、ということが必要です。教育効果を高めるには、今の理解力ですべて解けてしまう問題だけやっていればよいのではなく、一歩先、二歩先の問題に挑戦させなくてはなりません。壁を与えるということです。しかし、それが五歩も六歩も先の問題を与えたら、子どもたちは自分の力で解くことはできず、教え込まれた方法で解くしかありません。この一歩先、二歩先の問題に「ちょっと背伸びして」挑戦すること、立ちはだかった壁を何とか乗り越えようとする努力、そこに子どもたちが理解力を高めていくチャンスがあるのです。

しかし、大勢のお母さま方の学習相談を受けていると、子どもが理解できない理由の一つとして、与える問題の難易度が今の学力からかなりかけ離れた五歩も六歩も先の問題である、ということがあります。ちょっと背伸びして解決可能な一歩先、二歩先の問題を与え続ければ、子どもは目に見えて自信をつけ伸びていきますが、その際、一体何が壁になっているかを周りの大人は把握しておかなければなりません。難易度も考えず、手当たり次第に過去問を与えトレーニングするというのは、わからなければ教え込めば良いと考えている証拠であり、100問あったら100問が横並びで、どれから始めてもかまわないという考えです。しかし、それではあまりにも非効率です。100問あったら、そのうちの基本となるいくつかの問題を抽出し、それを徹底して自分で解かせ、そこで得た考え方をより難しい問題に挑戦させることによって確認するといったやり方が必要です。その意味で、「基礎」が何で「応用」が何かという分析ができなければなりません。「ちょっとだけ背伸びして」できる問題を与え続けることによって、子どもの学力は確実に伸びていきます。

しかし問題は、「ちょっとだけ背伸びして」出来る問題がいったいどれなのか・・・それを見極める大人の力が問われてくるのです。それには、問題の難易度の系統性と、子どもがものごとをどのように理解していくかの見通しが必要です。そこが受験教育といえども、幼児期の基礎教育には専門性が必要だと言われる理由です。それではどうするか。

  1. 教室指導者が授業内容を説明する際、今やっている課題の位置づけをしっかり伝え、一歩先、二歩先の問題が何であるかを明確に示す
  2. 教室での授業に関連づけ、系統性を示した具体的な問題を家庭学習用問題集として作成し、家庭ではそれに沿って学習する
  3. どこまで解っていて、どこから解らなくなっているかを把握するため、必ず答えの根拠を説明させる
  4. もしそうした問題が準備できない環境の方は、こぐま会が授業経験をもとに作成した「ひとりでとっくん」100冊シリーズを使ってください。この3,000枚のペーパーには難易度がつけてあり、一歩先、二歩先の問題が何であるかを明確に示してあります

これから過去問に取り組む時期に、難易度も考えず、手当たり次第に取り組むことほど非効率なことはありません。子どもに自信を与え、そしてお母さまもゆとりを持って子どもを見守るために、問題の与え方に相当の工夫をしてください。その想いを「ちょっとだけ背伸びをして」という言葉に込めました。

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