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週刊こぐま通信
「室長のコラム」

合否の結果から学ぶこと

第460号 2014/11/21(Fri)
こぐま会代表  久野 泰可

 首都圏の私立小学校入試もほぼ一段落し、これから国立附属小学校の入試が始まります。すでに第一次抽選が終了した学校もあり、11月末から12月にかけて本試験が始まります。すべての学校の結果が判明するには、筑波大学附属小学校の最終抽選がある12月20日まで待たなくてはなりません。国立附属小学校を第1希望としてきた子どもたちは、これからが正念場です。面接試験がなかったり、抽選があったり・・・と私立小学校の入試とはやや様相が異なります。また、受験者が減っているとはいえ、出願者の人数を見る限り相当の倍率になることには間違いありません。その意味で、合格には私立小学校とは違った難しさがあります。

さて、今年の私立小学校の入試問題の聞き取り調査もほぼ終わり、授業担当者が分析に取り組んでいます。この分析については、12月7日から始まる「入試結果報告会」「学校別入試分析セミナー」においてお伝えいたしますが、年明け以降に発行する、学校別資料の出版物にも反映させていくつもりです。全体の印象として、どの学校も難問は少なくなり、極めてまともな基礎的な問題に回帰しています。こうした傾向は2~3年ほど前から見られますが、過熱した受験勉強の弊害が入学後に出ていることを懸念した学校側の措置だと考えられます。しかし、基礎的な問題といえども、すべての問題が簡単に丸をもらえるほど単純ではありません。小学校の高学年で求められるような、難しい論理の問題は減ってはいますが、それと入れ替わって、教え込みの訓練だけをされてきた子どもたちにとっては、かなり難しいと思われる方法で問題がたてられています。その方法とは、

1. ペーパーを見ただけでは問題の意図がわからないように工夫し、約束や指示をしっかり聞きとらないとできない問題が増えた
2. その聞き取りは、かなり複雑な指示で、思いこみを排除して聞かないとできない問題が多い
3. 問題の意図に即して作業し、その結果得られた答えを求める場合が増えた
4. 論理で片付く問題だけでなく、感情や気持ちを問いかける問題が増えている。その意味で、社会性や道徳性が問われる問題が増えているといえる
5. 行動観察は、個人の能力を見るというよりも、集団活動における「協力」関係を見ようというテーマが増えた。突発的に起こる事態に対し、自分で考え判断し、行動できる子どもを求めている。決して教え込まれたような、パターン化された行動を求めているのではない

こうした新しい動きは、間違った受験対策を糺そうとする学校側の動きが反映されていると考えるべきです。その意味で、入試の在り方がきわめて正常化されたと言えます。子どもにとって無理のない学習を積み上げ、年齢にふさわしい体験とまともな家庭生活を送っていれば、十分対処できる入試になってきました。特別な方法で教え込む教育が受験対策だと勘違いしないよう気をつけてください。間違った方法で、子どもが正しく成長する芽を摘み取ってしまうばかりでなく、受験「競争」の中で、人間としての大事なものを幼児期のうちに失ってしまわぬようお願いいたします。その意味で小学校受験は、「子育ての総決算」なのです。

来年秋の入試に向け、10月末から始まったばらクラスの授業では、子どもたちが一つ一つの課題に大変興味を持ち、教師の話にも集中してよく聞いています。ペーパー課題に際しても、決して隣の子のやり方を見るのではなく、自分で考え取り組んでいます。始まりの時期のこの集中力、物事に対する新鮮なまなざしが、入試直前になるとなぜ消えてしまう子が増えるのでしょうか。聞き取りの難しい問題が出されている現状を考えると、この集中力と興味関心をいかに持続させるかが、大きな課題だと思います。お母さまが頑張れば頑張るほど、子どもが委縮していくような受験対策にならないよう、子どもの気持ちも考えた学習方法を工夫する必要がありそうです。

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