週刊こぐま通信
「室長のコラム」子どもの「今」から見えてくるもの
第446号 2014/8/1(Fri)
こぐま会代表 久野 泰可
こぐま会代表 久野 泰可

夏季講習会も3クール目に入り、夏季講習期間の中でも一番多くの子どもたちが参加する時期になりました。お弁当持ちの講習会も4クラス同時に進行し、「こぐまクラブ」で行う全クラス対象の授業説明が一度に出来なくて、2班に分かれて行わざるを得なくなっています。これから8月中旬までこの状況は続きます。
我々教師も、毎日朝から夕方まで平均して3クラスを担当し、(1クラス1時間半)体力の限界に挑戦しています。受験生にとっての熱い夏は、指導する教師にとっても熱い夏にならざるを得ません。夏を無事乗り越え、精神的にバランスを崩しやすい入試直前まで、ご家庭と協力して子どもたちを守り、一番良い状態で本試験を迎えさせなければなりません。
毎日連続して同じクラスで学習したり、お弁当持ちの長時間講習を経験すると、子どもたちも週1回の授業では見られなかった個性を見せ始めます。
- ほとんど口を開かなかった子が、積極的に話しかけてくるようになる
- 自信が持てず、周りの動きに引きずられていた子が、ある授業でほめられたことをきっかけに、自分で取り組み、自分の考えに自信を持つようになる
- 同様に、みんなの前で発表する経験を積み、それが評価されると、それまで一度も発表出来なかった子が積極的に挙手しはじめる
- ペーパーは相当できるのに、答えに至る自分の考えを説明できない
- ペーパーでは解決しているように見える問題が、事物を使ってやらせるとほとんど手がつけられない
「対称図形」の学習で、折り紙を折って切ったらどのような形ができるかをペーパーでは簡単に解く子に、実際に折り紙を渡して指示した形を切らせようとしても、どうやれば良いのかが分からないのです。また、「数のやりとり」の問題がペーパーでできても、友だちと実際にじゃんけんゲームをやって数をやりとりした結果の「差」が分からないのです。答えを導き出す過程を言語化できてこそ、初めて「わかった」ことになるのですが、ペーパーだけをこなしてきた子どもの多くは、教えられた通りに問題を解決するため、それがなぜ良いのかもわからず、説明もできないのです。ペーパーではできても、同じことを具体物を使ってできないのは、本当に理解していない何よりの証拠です。こうした、一見できるように見える子が模擬テストで点数が取れないのは当然のことです。同じ問題が出れば解決できるけれど、ちょっと別の要素が入ったり、問いかけの仕方が違ったりすると、お手上げなのです。ペーパーができる子ほどこうした傾向にあるのは、受験といえども、やはり学習の仕方が根本的に間違っているからです。
訓練で問題を解けるようにすること・・・、それが受験対策だと思っている方々はその考え方を変えない限り、今の入試に十分対応できません。5,000枚のペーパーをトレーニングしても、同じ問題は出ないと考えたほうがよいと思います。なぜなら、最近は学校側の考え方も変化し、同じ問題は出さなくなりました。子どもたちにとって初めての問題、思考力を問う問題をどう工夫するか。そうした問題を課すことによって、学力の基礎がどれだけ身についているかを見ようとしているのです。このような状況ですから、ペーパーのみの学習では「合格」からも遠ざかるし、ましてや将来に備えた「基礎学力の育成」にもなっていきません。そうした無駄な学習法を早くやめ、受験対策といえども、子どもの発達を踏まえ、きちんとした指導法に基づいた学習をすべきです。