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週刊こぐま通信
「室長のコラム」

夏にすべき大事なこと

第442号 2014/7/4(Fri)
こぐま会代表  久野 泰可

 昨年秋から始まった入試対策クラスも、早いもので都内の入試まで、残すところ4カ月となりました。入試にとって一番大事な「夏の学習」をどう計画するかは、「合格」に絡む大変重要な課題です。というのは、「夏のがんばり」が必ずしも合格につながらない・・・というケースもたくさん見てきたからです。そうしたケースは、ともかくたくさんのペーパーさえやればよいと考え、勉強漬けの毎日を強要してきた結果にほかなりません。精神面でのケアも含め、入試本番を一番良い状態で迎えられるようにするためには、この夏何をどうすればよいか・・・その方法を確立することが大事です。そのためには、子どもが今抱えている課題が何であるかをしっかり踏まえた対策が必要です。ペーパーのみのトレーニングを毎日行うような対策では、9月以降にその反動が必ず来ます。意欲的に学習課題に取り組むためには、「学び」と「遊び」をうまく組み合わせ、長い夏をメリハリのある生活で乗り切ることが大事です。年長の夏を楽しく過ごす、いろいろな活動を体験させながら、集中力を高めて学習に取り組む環境づくりが必要です。また、それ以上に大切なことは、毎日子どもに接する母親の気持ちの持ち方です。あれもこれもと抱え過ぎ、あせるばかりに家庭学習を徹底できない状況が、一番よくありません。ともかくこの夏は、家庭学習を徹底してやりきること・・・これにつきます。これまでの経験で工夫すべきいくつかの点を掲げますので、これを参考に、それぞれの子に一番適切な「夏の生活プラン」を立て、実行してください。

<学習面での工夫>
  1. 基礎学力が本当に身についているかを、具体物やカード教材を使って点検する。その際必要なことは、必ず答えの根拠を説明させること
  2. 基礎の点検の上に、過去問に取り組ませること。過去問にも難易度が必ずあるが、その中でも一番難しい問題にまで挑戦させること
  3. 志望校の過去問を中心に取り組ませることが前提だが、どこまで難しくしたらよいか、ということについては、実際の入試においてリーダー的役割を果たしてきた、雙葉小学校と筑波大学附属小学校の問題に必ず取り組ませること
  4. 数における暗算トレーニングは、この夏相当力を入れること。過去の例では、この8月で多くの子どもたちの暗算能力が完成している
  5. 常識問題は、この夏休みに時間をかけ、確実に解けるようにしておくこと
  6. スピードを高める練習・聞き取りミスをなくす練習は、この夏に徹底すること
  7. 家庭での学習時間の確保は各家庭の事情によって異なるが、毎日最低2時間は必要である。長ければ良いというのではないが、まずは休むことなく、毎日継続する習慣を身につけること

<生活面での工夫>
  1. 自分で考え、自分で行動できるようにするために、生活目標を1週間単位で掲げ、そのでき具合を子ども自身に管理させる(『がんばり表』の実践)
  2. 朝型の勉強に切り替えるチャンスをつくるためにも、また、協応動作のトレーニングのためにも、ラジオ体操に必ず取り組ませる
  3. 絵画や面接の対策として、絵日記をつけさせ、夏の体験をしっかり記憶させておく
  4. 自立心を身につけるために、親元を離れて行う合宿や、お泊り保育を最大限活用する
  5. 精神的なもろさを克服するために、「できないこともある」事実を一度体験させ、それを受け入れる心のゆとりを持たせる。評価を気にする子どもは、周りの大人のプレッシャーが原因であり、それが進むと身体面にもその影響が現れるので要注意
  6. 自分の考えたこと、感じたことを言葉で表現できるように、人との関わりを多く持たせる

学校側は試験で何を見ようとしているのでしょうか。それは、入学後に生かされる学力や行動力の「レディネス」が、どこまで身についているかということです。学習面だけでなく、行動面でもそうです。仮にペーパーで百点が取れても、それが入学後の学力を保証しないということは、学校側は十分承知しています。だからこそ、他の入試のように学力試験だけで合否を決めるのではなく、行動観察や面接を重視しているのです。本当に身に着いた考える力、自分で判断し、友だちと協力して問題を解決していける自立した行動力・・・このように、入学後の学習や集団生活につながる「基礎」ができているかどうかを見ようとしています。形を教え込むような「メッキ教育」は、学校側はすぐに見抜いてしまいます。「遊べない子は伸びないんだよ。だから行動観察が必要なんだ」という校長先生の言葉をもう一度思い出す必要があります。受験向けの特別な教育があるわけではありません。まともな教育で芽生える5~6歳児にとっての個性豊かな成長を学校側は求めています。この夏のがんばりが、受験のためだけでなく、将来の学習の基礎になるよう、年長児にしかできない豊かな経験をいっぱい持たせてください。そのことが結果として「合格」につながるのです。

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