ページ内を移動するためのリンクです
MENU
ここから本文です
週刊こぐま通信
「室長のコラム」

雙葉小学校合格のための勉強会

第427号 2014/3/7(Fri)
こぐま会代表  久野 泰可

 「聖心合格のための勉強会」に続き、2月23日(日)に「第1回 雙葉合格のための勉強会」を行いました。雙葉小学校だけでなく、女子難関校を目指す方々も大勢参加されていたようです。雙葉小学校は、これまで小学校入試の問題づくりでは中心的存在でした。この学校で出される工夫された入試問題が他校に波及し、同じ趣旨の問題がいろいろ工夫されて各学校で出題されてきました。「工夫された・・・」と表現したのは、単なる機械的なトレーニングで解けてしまう問題ではなく、「考える力」が求められる問題が多数出題されていたということです。おそらく小学校入試で一番難しい問題を出していたのは、この学校だと思います。出題の意図が明確であり、そこで求められる思考力が将来の学習の基礎になっていくような問題が多く出されていました。その内容を分析すると、

  1. 特に数と図形の領域の問題に工夫が見られる
  2. 2つ以上の要素を同時に問いかけたり、2つの視点を同時に持たないと解けない問題が多い
  3. 知識の暗記で解ける問題はほとんどなく、与えられた約束をもとに、作業を通して答えを導き出さなくてはならない
  4. 工夫された多くの問題は、小学校高学年で学習する文章題で求められる思考法を、幼児の生活や遊びにテーマを求め、易しく問いかけている。しかも、そこで求められる思考法は、「消去算」や「旅人算」につながる大変高度なものである

私が、「思考方法を鍛えるのならば、この学校の問題に取り組ませるのが好ましい」と言い続けてきた結果、雙葉小学校を受験しない方々が「学校別対策 雙葉クラス」を受講してきたのは、そうした理由によるものです。この学校の問題をトレーニングしておけば、どんな学校の問題にも対応できるというのがその理由です。特に、2008年前後の数年間は相当工夫された良い問題がたくさん出されていました。最近問題が易しくなったような気がしますが、問題を作成する先生方の世代交代が行われたのかもしれません。私が工夫されたと表現した問題を3つほどご紹介しましょう。

「飛び石移動」
カエルとウサギとカンガルーが飛び石を跳んでいきます。3匹は一緒に跳びますが、カエルは1つとばし、ウサギは2つとばし、カンガルーは3つとばしで進みます。
【問題】
  • 3匹がそれぞれ2回ずつ跳んだとき、カエルとカンガルーの間に飛び石はいくつありますか。リンゴのお部屋にをかいてください。 (30秒)
  • 真ん中の飛び石の絵を見てください。カンガルーがゴールに着いたとき、カエルとウサギはどこにいますか。カエルのいる場所に、ウサギのいる場所に×をつけてください。(30秒)
  • カンガルーはゴールまで行ったら、今度は折り返して戻ってきます。カンガルーとカエルが一緒に跳び始めると、戻ってきたカンガルーがカエルに会うのは、はじめから数えると何回跳んだときですか。その数だけブドウのお部屋にをかいてください。 (30秒)

この問題を見て、旅人算を思い出す方が多いのではないでしょうか。まさしく旅人算の考え方が幼児向けに問われている問題です。

「交換」
動物村のパン屋さんは次のようにパンを取り替えてくれます。
  • メロンパン1個はドーナツ2個と換えてもらえます。
  • 食パン1斤はメロンパン2個と換えてもらえます。
  • ハンバーガー1個は、メロンパン1個とドーナツ1個と換えてもらえます。
【問題】
  • ドーナツ4個は、メロンパン何個と換えてもらえますか。
  • 食パン2斤は、ドーナツ何個と換えてもらえますか。
  • ハンバーガー4個は、食パン何斤と換えてもらえますか。

交換の問題は多くの学校で出題されていますが、そこでは、かけ算とわり算の考え方が同時に求められています。シーソーにおける「つりあい」の問題もこの考え方を応用して解きます。このハンバーガーの問題を難しくしている原因は、1種類のものと2種類のものを交換出来るとする最後の条件です。メロンパンを仲立ちにドーナツと食パンの関係を考えることができるかどうかが、決め手です。

「図形構成」
上にある3つのパズルを使って、左の形を作ろうと思います。それぞれどのパズルをいくつ使えばできるでしょうか。使うパズルのお部屋に使う数だけをかいてください。

三角パズル中心の図形構成が、三角形以外の形がもとになっている図形構成の典型的な問題です。分割線をどう入れられるかが、決め手になるでしょう。

この3問を見て、どのようにお感じになるでしょうか。少なくとも、機械的な教え込みトレーニングをしてきた子が解ける問題でないことだけは、おわかりいただけると思います。条件をしっかり理解し、問題の意図に沿って作業し、答えを導き出していかなければならないこうした問題づくりに対し、小学校入試の問題作成におけるリーダー的役割を果たしていると感じるのは私だけでしょうか。決して、振り落すための難問奇問ではありません。高度な思考力を要求する問題だと受け止めるべきです。

こうした問題を解いていく力の育成は、単純ではありません。いろいろな領域の基礎能力が身について、初めて解決可能な問題です。ですから、現段階ですべて解決しようと思ってもそれは無理です。こうした問題を解いていくために、どんな思考力を育成しておけばよいのか、その見通しを持って、今何をすべきかを考えるべきです。決して過去問そのものを与えてやるべき課題ではありません。基礎を固めるということはそういうことです。

こうした問題を解いていける力を育成するために、今回の講座でも20枚の学習ボードを用意し、それを使って繰り返し練習する方法を具体的にお伝えしました。家庭学習で子どもの理解度に応じて繰り返すことが、遠回りのようでも一番近い合格への道なのです。間違った受験対策の最たるものは、最初から過去問をペーパー学習だけで行おうとするものです。そんなやり方で、こうした工夫された問題を自らの力で解いていくことはできません。

PAGE TOP