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週刊こぐま通信
「室長のコラム」

女子校の問題傾向(1)

第417号 2013/12/20(Fri)
こぐま会代表  久野 泰可

 12月8日のセミナーに引き続き、15日は、女子校10校の学力問題を詳しく分析するセミナーを行いました。「今年どんな問題が出されたのか」、「それは、どんな意図を持って出されたのか」、「最近の出題の中で、どう位置づけられるのか」などを具体的に伝えるセミナーでした。学校ごとに約10分間、今年出された問題の中で注目すべき問題をスクリーンで示し、何が難しいのか、どこで間違えるのか、どんな学習を積み上げればよいのかなどをお伝えしました。

参加された皆さまには、今年出された学力問題を学校別・領域別に仕分けした一覧表をお渡しし、それを見ながら今年の傾向を分析しました。

(1) 数の問題が相当減り、易しくなった
(2) その代わり、位置表象や図形の問題が多くなった
(3) 言語領域の問題は、「話の内容理解」が中心であるが、「一音一文字」に象徴される言葉の理解に関する問題が増えている
(4) 少なくなった数の問題の内、一場面を使った数の総合問題が増えている。しかも、一場面を使って、四則演算につながる多くの質問が用意されている
(5) 未測量領域は「言葉による関係推理」、位置表象は「四方からの観察」と「移動」の問題が中心となっている
(6) 図形領域は、「図形構成」が中心であるが、「対称図形」や「重ね図形」も多く出されている
図形構成は、三角中心のパズルから、正方形を中心としたものに変わりつつある
(7) 言語領域の「話の内容理解」は、話が長くなり、設問の数が増えている。ある学校では、一つの話に対して、9問を用意していた
(8) 常識問題は相変わらず多く出されており、特に理科的常識が多い

(4)の「一場面を使った数の総合問題」とはどんな問題か、ある学校の問題を紹介しましょう。

一場面を使った数の総合問題 (2014年度入試より)
左の絵を見て次の問題に答えてください。
  • カニは全部で何匹いますか。その数だけ1つのお部屋にをかいてください。
  • タコ壺にはタコが2匹ずつ入っています。タコは全部で何匹いますか。その数だけ2つのお部屋にをかいてください。
  • 白い魚としま模様の魚は、どちらが多いですか。3つのお部屋から選んで、多いほうの魚にをつけ、多い数だけをつけてください。
  • カメがこのあと5匹来ました。何匹になりましたか。その数だけ1つのお部屋にをかいてください。
  • カモメが3羽飛んで行って、その後6羽来ました。何羽になりましたか。その数だけ2つのお部屋にをかいてください。

従来の問題と大きく違うのは、一つの場面を使った質問が、すべて異なる数の操作をしなければならないという点です。これまでは、同じ趣旨の問題が3~4問続いたのですが、最近は、四則演算全てにつながる内容が一つの場面で問われているということです。問題制作に相当神経を使っていることがうかがえます。「交換」や「数のやりとり」といった、論理性を求める問題は減りましたが、こうした基礎的な問題の中で、数の概念がどこまで完成しているかを見ようとしています。また、いずれの問題にも幼児期に大事な「聞き取り」の要素もたくさん盛り込まれているのがわかります。

また、図形構成の課題が、三角パズル中心から少し変化し始めているというのは、次のような問題が出されているからです。

図形構成 (2014年度入試より)
上のお部屋を見てください。左の形を何枚か使って形を作ったとき、できる形に、できない形に×がついていますね。
  • 同じように、下のお部屋の左の形を使ってできないものを、それぞれ右のお部屋の中から探して、×をつけてください。

以上のような問題を見ると、三角を基本と考えた図形構成から、正方形をいくつかくっつけた形を一つの単位ブロックと考え、それを使ってできる形を考える問題が工夫され始めたということです。


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