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週刊こぐま通信
「室長のコラム」

間違った受験対策にならないように

第411号 2013/11/1(Fri)
こぐま会代表  久野 泰可

 今日から、都内の私立小学校の入試が始まりました。この日、11月1日は、受験生にとっては一つのゴールであり、また、来年受験の年中児にとっては、1年後の入試に向けたスタートの日ということになります。私立小学校の志願者が年々減り続け、今年もいくつかの学校を除いて、昨年よりも減っているようです。小学校受験も、大きな曲がり角に来ているように思います。

経済的な理由だけでなく、そもそも小学校から私立に通わせる理由が時代とともに変化してきたからなのかもしれません。これまでは、一貫校の大学まで進学を希望して小学校から入学させたいと考えていたご家庭や、激化する中学入試を避け、小学校ぐらいはゆとりを持った学校生活をさせてあげたくて、私立に入れたいと願うご両親が多かったのも事実です。しかし、時代が変化し、一貫校であっても大学は別の学校に行くというケースが増えたり、震災後、遠くの学校に通わせることに不安を感じているご家庭も増えました。また、公立校の頑張りで、私立に入れなくても公立校で頑張れば、目指す大学や学部に進学できるという実績も出てきており、私立小学校に通わせる意味を考え始めているご家庭が増えた結果かもしれません。

一方、学校側の視点に立てば、経営上の観点から新設校も増え続け、選択肢が増えて全体としては入学者の定員数が増えているのも、影響しているのかも知れません。また、本試験は受けられるのに、面接試験で日程が重なってしまった時、そのうちの一つしか受験できないという厳しい条件も、名目上の出願者の減少に影響していると思います。説明会のプレゼンの仕方に学外の専門家が加わり、演出効果を考えたり、受験生を送り出す塾側との連携を強めたり・・・と、以前では考えられなかった動きが学校側から出ていることも、時代を反映しています。その結果、卒業生を含めた多くの受験生の保護者が、学校に対するイメージが変わったと感じていることも事実です。説明会での校長の話に、がっかりして帰ってくる保護者もいれば、逆に、感動して帰ってくる保護者もいます。それは、それぞれが昔から抱いている学校に対するイメージと校長の話があまりにも違っている結果の出来事かもしれません。ですから私たちは、1回の説明会で決めてしまわないで、学校にできるだけ足を運び、外からでも良いから学校の様子を肌で感じ取ってきてくださいとお願いしてきました。説明会で聞いた話を信じて入学したものの、実際と大きく違っていたのでは、入学してから本当に後悔してしまうことになります。実際に1年生の1学期で学校を退学したケースも見られます。生徒集めのために誇大宣伝になるようなことになってしまわなければ・・・と願っています。

ところで、これから1年後の入試に向けた準備を進めようとするご家庭にとって、最大の関心事は、この1年間、どのような方針で準備したら良いかということです。幼児教室に通わせて準備をしようと考えているご家庭もあれば、家庭学習を中心に準備しようと考えているご家庭も多いと思います。いずれにしても、子どもたちが伸びていく源は家庭学習にあるわけですから、家庭での入試対策がきちんとした方針で行われなくてはなりません。初めて受験される方が、周りの噂話で右往左往し足元をすくわれないように、これからの受験対策をどうしたら良いのか。「しなければいけないこと」「してはいけないこと」、その原則をここに列挙してみます。

  1. 受験対策を特別な教育と受け止めない。幼児期の基礎教育をしっかり行うことの延長上に受験があることをしっかり認識すること
  2. 入試の実態をしっかり把握すること。間違った噂話に惑わされないために、最新の入試情報を得る手段を考えること
  3. 1年間の学習方針をしっかり持つこと。最初から過去問をペーパーのみで練習するようなことは絶対にしない。幼児教室に通って準備を進める方は、授業方針に従って復習を徹底すること。あれもこれもと抱えると、子どもが最大の被害者になってしまい、時間をかけた割には伸びない結果になってしまう
  4. 子どもの考える力は、物事に働きかけて初めて身につくことを踏まえ、教え込みの教育は絶対にしないこと。試行錯誤する時間を大切にすること
  5. その意味で、学びの最初は、事物教育を徹底すること
  6. 過去問トレーニングは、4月以降で十分間に合うので、それまでは基礎をしっかり身につけること
  7. 本当に分かったかどうかを確認するため、考え方を説明させること。できていてもできていなくても、それを実行すること
  8. 小学校入試は、学力主義で合否が決まらないことを知っておく。行動観察に象徴される集団活動での様子も、合否に大きく影響することを考え、机の前の勉強だけが入試対策だと勘違いしないこと
  9. 実際の入試は集団で行われるため、できるだけ集団で学習する経験を積むこと

以上、40年間の指導経験を踏まえ、思いつくままに掲げましたが、幼児教室の選択も含め、間違った判断をすると子どもの成長の芽を摘み取ってしまい、今学校側が求めている「子ども像」と違った方向に向かってしまう危険をはらんでいます。小学校受験は、ご両親の判断でかじ取りするわけですから、その判断を間違えないよう、ぜひ受験の実態をしっかり把握し、間違った受験対策にならないよう冷静な判断をしてください。

以前に比べると、ずいぶん入試に関する情報が公開されるようになってきましたが、それでも他の入試に比べると、情報公開が遅れています。それが、間違った受験対策がはびこる最大の原因です。いろいろな噂話が耳に入ってくると思いますが、ぜひご自身で確かめてください。そのために、最新の入試情報を得る手段を確保してください。一番良い方法は、実際の入試問題をご自身で調べたり、解いてみたりしながら、いったい何が求められているのかを知ることです。それがしっかりできていれば、噂話で足元をすくわれることはないはずです。そのために、「今年の入試がどう行われたか」をしっかり把握することです。こぐま会では、これからさまざまなセミナーで、その点を皆さまにできるだけ客観的にお伝えするつもりですので、ぜひそうしたセミナーには足を運んでください。


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