ページ内を移動するためのリンクです
MENU
ここから本文です
週刊こぐま通信
「室長のコラム」

年中児 間違った受験対策にならないように(2)

第358号 2012/10/5(Fri)
こぐま会代表  久野 泰可

 9月30日の午前中「こぐまクラブ」において、来年受験する年中児の保護者を対象に、「合格に向けた1年間の受験対策」と題したセミナーを行いました。こぐま会では、年中児の「ゆりクラス」において、9月から「セブンステップスカリキュラム」による受験対策がスタートしており、そのプログラムに沿って受験準備を進められている会員の方も、これから入会される方も参加してのセミナーでした。

こぐま会代表セミナー「合格に向けた1年間の受験対策」
小学校入試の現状
  1. 試験日程の変化  2013年度は大きく変化
  2. 入試問題の傾向  考える力が求められている
  3. 合否判定に関して  実力主義だが学力主義ではない
  4. 学校側が評価しようとしているものは何か
こぐま会の入試対策
  1. ばらクラスの授業内容
  2. 体を使い(集団活動)、手を使い(個別作業)、頭を使った(ペーパーワーク)3段階学習法
  3. 事物教育・対話教育はなぜ必要か
1年間の指導の流れ
  1. 9月から、従来のばらクラスステップ1を開始
  2. 学力差を極力なくすために、ステップ学習終了後、2回の「フォローアップスタディ」を設ける
  3. 年内にステップ2まで終了し、1月からはステップ3
  4. 4月一杯でステップ4を終了し、基礎段階の学習を完成させる
    連休明けからステップ5・6の応用学習
  5. 7月夏休み前までにすべての新出単元の学習を終える
  6. 夏休みから直前までの4カ月を、入試直前実戦トレーニング

この時期に保護者の皆さんに何を伝えるべきか。それは、最新の入試情報と1年間の学習計画の立て方以外にありません。今年は慶應義塾横浜初等部の開校があり、8月25日の説明会でその概要が発表されました。また、女子校の中で、東洋英和女学院小学部や立教女学院小学校の試験日程が変わりました。他の学校においても、細かい点での変更もいくつかありました。そうした試験日程の変化等がなぜ起こっているのか、その背景には、小学校入試を取り巻くさまざまな問題があるということを、詳しくお伝えしました。また、合格に向けた1年間の学習計画の立て方については、過去問をすぐに学習の対象にするのではなく、基礎をどのように積み上げていくのかを具体的にお伝えしました。こぐま会で行う、ラセン形の「セブンステップスカリキュラム」の内容を公開し、また1年間の学習がどのように進んでいくのかを伝えるために毎週の授業を記録した40ページの写真集を配布し、その内容を具体的にお伝えしました。その上で、次のような考え方で1年間の学習計画を立てることをお勧めしました。

  • 5月連休前までに、基礎段階の学習を終える
  • 7月夏休み前までに、応用段階の学習を終える
  • 夏季の学習において、難しい過去問に取り組ませる
  • 8月の終わりに、5領域のまとめ・チェックを行う
  • 9月~10月の直前2カ月は、総合予想問題で実践的なトレーニングを積む

受験対策の学習において見られる間違った方法の多くは、こうした学習プランのないまま、最初から過去問を学習課題とし、ペーパーのみの学習に終始することです。こうした間違った受験対策が、受験専門の教室でもまかり通っているのは、次のような理由によるものです。

  1. 子どもがものごとをどのように理解していくかの専門的知識を持ち合わせていないので、基礎が何か、応用が何かすらわかっていない
  2. 入試問題で何が問われているのか、出題する学校側の教育的意図が十分分析できていない。だから何か特別な入試問題だとして説明される
  3. 受験教育は特別な教育であり、教育の原理など踏まえなくても良いと考えている
  4. 幼児期の子どもたちの「考える力」を育てるより、教え込んでしまった方が手っ取り早く受験対策ができると考えている
  5. 教え込みの教育なら、考える力を育てる指導手順を示すカリキュラムも必要ない。だから、その日の授業意図も説明されず、ただ過去問の出来不出来が報告されるだけ

入会相談で、転塾されてくる方々の話を聞いているうちに、間違った入試対策のやり方がどんなものか、具体的にわかってきました。こんな教育が、「受験教育」の名のもとに高い月謝を取って行われているとしたら、同業者としていたたまれない気持ちになります。1年以上家族一丸となって取り組む教育ですから、その後の学習の基礎になっていく、「まともな幼児教育」が行われるべきです。日本の幼稚園や保育園が意図的な教育を放棄している現状ですから、小学校の入試に向けた学習内容が「特別な教育」に映るかもしれません。しかし、私が見学した諸外国の幼稚園では、当たり前のように行っている教育内容です。数の教育も、図形の教育も、論理の教育も、すべて、幼稚園の正課の中で取り上げられている内容です。決して特別な教育ではありません。その意味で日本では、唯一「小学校への受験教育」が意図的な学習内容をもった教育なのです。だから私は常々「小学校入試」が幼児期の学習の良い動機づけになっていると言ってきたのです。本来ならば、幼稚園・保育園でなされる教育内容が、悲しいことに、今の日本では受験教育の世界にしか存在しないのです。だからこそ、受験に向けた準備教育が教育の原理を無視した「特殊な教育」にならないよう、まともな方法で積み上げていっていただきたいのです。

PAGE TOP