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週刊こぐま通信
「室長のコラム」

難しい問題を通して、基礎を点検する

第352号 2012/8/24(Fri)
こぐま会代表  久野 泰可

 入試本番まで、残すところあと2カ月余りとなりました。長い夏休みだと思っていたのに、あっという間に過ぎてしまい、やり残したことのほうが多く、焦りを感じているご家庭も多いかと思います。しかし、欲張ってやったところで良い効果は得られません。夏の最後の締めくくりとして、本当に「夏の学習」が身に付いたかどうかを、もう一度振り返ってみるゆとりがほしいものです。特に、いろいろなテストを受け、その成績いかんで右往左往するお母さんが毎年多く見られますが、模擬テストそのものがどのような考えで作られているのか、本当に現実の入試を反映して作られているのかどうか、その点を踏まえた分析をしないで点数だけを気にしていたのでは、足元をすくわれてしまいます。大学入試のように学力試験だけで合否が決まっていくわけではない小学校入試ですから、模擬テストの内容構成そのものもよく吟味して受けないと意味がありません。

さて、夏季講習会も大半が終了し、20日からは夏季集中授業が始まりました。この集中授業の内容は、ばらクラス(受験クラス)最後の「ステップ7」の学習です。これまで学習してきた内容をもう一度この時点で点検しようと考えた総まとめの授業で、入試で問われる問題の考え方の基本を領域ごとに整理し、点検します。授業では毎回、次のような内容の10枚のペーパーをテスト形式で行い、その後1枚1枚を詳しく解説します。

未測量大きさの系列化/長さの相対化/順対応/逆対応/砂糖水の甘さ/言葉による三者関係の推理/シーソー/つりあい/量の保存/風呂水の変化
位置表象点図形/方眼上の移動/右手・左手/方眼上の位置および移動/回転移動/すごろくの応用/四方からの観察(A)/四方からの観察(B)/地図上の移動(A)/地図上の移動(B)
数の総合問題(A)/数の等分/数の総合問題(B)/数の総合問題(C)/数の多少とその応用/一対多対応とその応用/数の増減とその応用/数のやりとり/交換/二重分類
図形つみ木の変化/回転図形/図形構成/図形分割/折り紙を使った対称図形/線対称/重ね図形/図形系列/展開図/回転図形
言語一音一文字/言葉づくり/しりとり/動きを表す言葉/昔話/話の内容理解(A)/話の内容理解(B)

毎年感じることですが、この夏の集中授業で各クラスのメンバーが1カ月半ぶりに再会し元のクラスに戻って授業してみると、どの子も本当に成長したな・・・と感じる場面に多く出くわします。ひと回りもふた回りも大きくなり、ひとつひとつの仕草に、落ち着きと自信が感じられます。30分のペーパーテストも、よく集中して取り組んでいます。特に、月齢の低かった子どもたちの成長には目を見張るものがあります。夏の学習が最大のヤマ場といわれる背景には、夏にはこうした飛躍的な成長がみられるという意味もあるからでしょう。

A) 人前で話せなかった子が、大きな声でお話しできるようになった
B) いつも指を使っていた子が、暗算で10以内の数の操作ができるようになった
C) 2段階も3段階も経て答えを導き出す問題についても、根拠を求められると、しっかり説明できるようになった
D) 自信がなくいつも隣が気になっていた子が、ほとんどの問題を自分の力で解くことができるようになった

このような成長した姿を毎年夏の終わりに見てきたからこそ、「早いうちからの過去問トレーニングは意味がない。ある時期になれば必ず解決する問題を、早いうちからやる必要はない」と繰り返し強調してきたのです。逆にいえば、今こそ、難しい過去問に取り組ませるチャンスなのです。難しい問題を自分の力で解けるようになるためには、相当の基礎学力の積み上げが必要です。解き方そのものを教え込まれても、それは本当に身についた力にはなりません。たとえ難しい問題に1回で答えられなくても、繰り返し挑戦することによって考え方のトレーニングになり、そのことが結果として学力全体を押し上げるのです。難しい問題が出ないから基礎だけやっておけば・・・という発想では、やさしいとされる基本問題すらもできないという結果になってしまいます。「難しい問題」を通して基礎を点検するという方法を夏の終わりのこの時期に、ぜひ実行してください。

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