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週刊こぐま通信
「室長のコラム」

春の学習課題

第333号 2012/3/23(Fri)
こぐま会代表  久野 泰可

 11月からスタートしたばらクラスの授業も、基礎学習の最後の段階である「ステップ4」まで進み、4月一杯でこのステップの学習も終わります。入試に関連する課題の8割ぐらいをカバーすることになり、5月からは、相当量の過去問に取り組むことができるようになります。そこから始まる応用段階の学習は、夏休み前までにすべてを終了することになり、夏から10月までは、入試に向けた実践的なトレーニングをすることになります。子どもの成長や理解の順序性に合わせて1年間の学習計画を立てないと、ペーパー中心の過去問トレーニングだけに取り組む結果になってしまい、「思考力」を育てる学習にはなりません。形をのみ込むのは早い子どもたちですから、教え込みを徹底してトレーニングを積めば、「理解しなくても、できてしまう」現象が起こります。そんなやり方では、今の入試に通用しません。まったく初めての問題に対応していくためには、「自ら考える力」を養っておかなくてはならないからです。その意味で、あと半年余りを残した今の時期の学習がとても重要です。積み上げの土台が少しずつ固まり、応用段階に飛躍しようとしているこの時期に、より強固に基礎固めをする意味で、春休みの学習は少し工夫が必要です。その工夫とは、

  1. まだこの時期は、ペーパーを使って行う学習だけに特化しない
  2. 具体物やカードを使って試行錯誤させ、その結果導き出した答えの根拠を説明させる
  3. すごろく・じゃんけん・飛び石等の問題は、作業を通して答えを導き出すことを徹底させる
  4. ステップ3と4に関する単元を、徹底的に復習する
  5. 暗算練習・記憶・聞き取り練習も毎日少しの時間で良いので、取り入れる
  6. 5~6枚のペーパーをセットにして準備し、テスト形式で問題を解かせる。その間の20~30分間を集中して取り組むトレーニングを積むことが効果的である。その後で1枚1枚丁寧に答えの根拠を説明させながら、答え合わせをする
  7. 間違いには、必ず理由がある。なぜ間違えたのかをしっかり把握し、子どもにも伝える。間違えても決して解き方を教え込まないで、子ども自身に考えさせる

学習相談に見える方には、以上のようなお話をしています。親の焦る気持ちが前面に出てくると、「ペーパーのみの過去問練習」になりがちですが、それは間違いです。ペーパーだけに特化した学習は、まだ早すぎます。具体物やカードを使い、作業を通して答えの導き出し方を経験させないと、学校側が工夫する、新傾向の問題に対応することができません。一歩一歩前進する子どもの成長を信じ、焦る気持ちを抑え、その子の歩みに合わせた学習法を編み出すべきです。家庭での学習の進め方を間違えると、「こんなはずではなかった」ということになりがちです。子どもが抱える問題の多くが、この家庭学習の進め方の間違いに起因しているということは、長年の経験でたくさん見てきました。これから子どもに起こるマイナス変化は、ほとんどが学習に関する「母子関係」に起因しています。その変わり目が春休みであることが多いのは、残り半年余りを残したこの時期から、親の気持ちの入れ替えがあるからかもしれません。

ペーパー以外の「試行錯誤させる学習」と言っても、イメージがわかないという方が大勢いらっしゃいますので、授業でどのように学習しているかをお話ししています。そのやり方全てが家庭でできるわけではありませんが、いろいろ工夫されて、私たちも取り入れたいと思うような練習を編み出しているご家庭も少なくありません。この春休みに行っている学校別の講習会では、例えば以下のような方法で、難問とされる問題の基礎づくりをしています。子どもも楽しみながら取り組んでいますので、参考にしてみてください。

1日目
(1) 一対多対応(機械の見本とおはじきを使って)
赤いボタンを押すと球が2個、青いボタンを押すと球が3個出てくる機械がある。
A)赤いボタンを3回押すと何個でてきますか?
B)青いボタンを3回押すと何個でてきますか?
C)12個の玉を出すには、赤いボタンだけだと何回押したらよいですか?
D)12個の玉を出すには、青いボタンだけだと何回押したらよいですか?
E)青いボタンが壊れています。青いボタン2回分の玉を、赤いボタンを押して出すには、赤いボタンを何回押せば良いですか?
2日目
(1) 図形構成(大小三角パズルを使って)
A)大きさの違う三角パズルでの図形構成
B)大小の三角パズルでできる形を探す
C)お手本のどこに大きい三角パズルを置くかを考え、黄色く塗る
(2) じゃんけんゲームを使った課題(すごろくとコマ・じゃんけんサイコロを使って)
A)3人1組になり、サイコロを使ったじゃんけんゲームを行う。一番勝った人だけが進む約束をする。
  • 勝てば、どんな勝ち方をしても1個ずつ進む場合
  • 勝ち方によって進む数が変わる場合
     グーで勝ったら、1つ進む
     チョキで勝ったら、2つ進む
     パーで勝ったら、5つ進む
B)花子さんと太郎さんがじゃんけんゲームをしたという前提で、勝敗表を見てどこに着いたかをそれぞれ考える。進むルールはより難しくし、
 グーで勝ったら1つ進み、グーで負けたら1つ戻る
 チョキで勝ったら2つ進み、チョキで負けたら2つ戻る
 パーで勝ったら3つ進み、パーで負けたら3つ戻る
3日目
(1) 一対多対応 (果物カードとおはじきを使って)交換の基本学習
リンゴ1個とミカン2個が交換できる
ミカン1個とイチゴ3個が交換できる
という約束で、以下の6つの基本学習をカードを使って行う。
A)リンゴ3個はミカン何個ですか?
B)ミカン3個は、イチゴ何個ですか?
C)ミカン8個はリンゴ何個ですか?
D)イチゴ12個は、ミカン何個ですか?
E)リンゴ1個は、イチゴ何個ですか?
F)イチゴ12個は、リンゴ何個ですか?
(2) 違った形の10の島をつくろう(模造紙と正方形の島を使って)
A)正方形を5枚使い、いろいろな形の島を、3人で工夫して作る
回転したり、反射したりして同じになるものは数に入れない
B)色画用紙で作ったものを、ペーパーの方眼に転記する

子どもたちは、こうした活動・働きかけを通して、「自ら考える力」を身につけ、ペーパーで出された新しい問題にも自分で解き方を工夫していけるのです。ペーパー学習を徹底する前に、こうした感覚で子どもたちの「思考力」を高めていってください。

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