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週刊こぐま通信
「室長のコラム」

日本も悪質なコピー社会です

第305号 2011/8/12(Fri)
こぐま会代表  久野 泰可

 先日匿名で「ある有名な幼児教室で、こぐま会の教材をコピーして使用している」という電話がありました。こうした類の告発はこれまでもたくさんいただいています。だいぶ以前になりますが、ある有名な幼児教室でこぐまの教材をコピーして使用したり、自分たちのオリジナルな教材だと言って会員の皆さんに販売していたという匿名の電話も頂き、その実物も郵送されてきたことがありました。こぐま会の教材が多くの教室でコピーされて使われているという話はよく聞きます。実際に詳しく調べたわけではありませんが、そこに通う保護者や元職員がそう言うのですから、たぶん間違いないでしょう。こうした事態にこれまでは法的な手段を持って対応することはしてきませんでしたが、あまりにも悪質な例が目立ってきており、何らかの法的手段を講じるつもりでいます。個人の学習向けに販売している教材を教室授業の教材として使う場合、今の法律でどう判断されるのか、専門家ではないので細かいところはわかりませんが、こぐま会の名前を消して自分の教室名を書きこみコピーして使用するとなると、これは明らかに違法行為です。私たちが30年以上かけて作り上げてきた教具教材を許可もなくコピーして無断使用し、また、自社開発だと偽っているとすれば明らかに著作権侵害です。

一方、教材を制作して販売している会社の中でも、私たちの商品を真似て商品化しているところもあるようです。「ひとりでとっくん100冊」を分解し、それを違ったやり方で並べ直し、中味の類似した商品を作っているところもあると聞きます。どんな商品でもヒットすると真似られる時代ですから、この件についてはどのように法的制裁が取れるのか難しいところだと思います。また、こんなこともあります。数の領域でかけ算の考え方を学習する内容を私たちは20年近く前から「一対多対応」という呼び方で括っており、その名前を冠した商品も制作販売していますが、多分この言葉は、どんな辞書を引いても出てこないだろうと思います。この問題集を企画した時、「一対一対応」があるなら一に対して2以上の数が対応する問題は、「一対多対応」で括ろうと「造語」を提案したのは私だったと記憶していますが、いまやその「一対多対応」と題した問題集が他社からも出ているようです。また、問題集だけでなく、こぐま会のヒット商品である「はしのおけいこ」 という教材が「おはしのけいこ」と題し、類似した商品として他社から出された経験もあります。「こぐま会」は商標登録できても、「はしのおけいこ」のような一般的な言葉は商標登録できないのが現状のようです。

ビール業界でも同じような商品が出回る時代ですから、それを見ると仕方ないことなのかと思いますが、オリジナルな知的財産がどのように守られるのか、少し学ばないといけないと思います。こぐま会のヒット商品の一つである「ひとりでとっくん365日」は、中国でも販売し、思考力を育てる教材として今話題になっています。この教材を出す際に、コピー商品を防ぐために解答や解説をつけないで販売しようと議論したことを記憶しています。また、韓国でオリジナルのペーパー教材を幼稚園に販売する際も、やはり同じようにコピーされることを防ぐ意味で、一切の解答や解説をつけないで販売しています。

上海ではすでに提携教室が5教室でき、小学校受験の世界では話題の教室になっているようです。そこでは、「論理教室」として日本と同じカリキュラムで指導していますが、有名な小学校の先生から推薦されて教室に通ってくる子も多数いるようです。今後「具体物教材」の販売や「ひとりでとっくんシリーズ」の販売を手掛ける予定ですが、コピー商品が出回ることを防ぐ対策がまた必要になってくるかもしれません。しかし、考えてみればこれほど露骨ではありませんが、わが日本でも同じような行為をする人たちがいるということは事実のようで、知的財産に関するコピー問題は韓国や中国だけではありません。巧妙にやる分、日本の方が悪質かもしれません。国語教材をめぐって作家と問題集を作成する会社や、使用する塾側といろいろ問題が生じていることは知っていますが、こうした問題は今後多発する可能性があります。

「真似られるのは一流の証拠ですよ」といって慰めてくれる人たちもいますが、金銭的な問題よりも、そのコピー商品を使って商売するという感覚が教育者にはなじまないのです。こぐま会のカリキュラムや教材は、授業を通して作り上げてきたという意味で、子どもたちとの共同作業の賜物です。ですから、決して私たちが占有するものではなく、幼児教育界の共有財産として守られ、生かされていけば良いと思っています。しかし、それをコピーして商売する人たちがいるとすれば、やはり許せない行為です。

どんなに精巧に真似ようと、オリジナルなものを超えるコピー商品は出るはずもなく、最後に残るのはやはりオリジナルなものだという信念を貫き、子どもたちから学んだ貴重な経験を、カリキュラムや教具・教材に結晶させていこうと思います。

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