ページ内を移動するためのリンクです
MENU
ここから本文です
週刊こぐま通信
「室長のコラム」

父親サークル 土曜ゼミを終えて

第260号 2010/9/17(Fri)
こぐま会代表  久野 泰可

 9月11日(土)夕方6時半から、今年度最後の「土曜ゼミ」を行いました。今回は「願書・面接対策、および直前学習対策」と題したセミナーと懇親会を企画しました。第5回目とあって、40名以上のお父さまが集まり盛況でした。夜10時半過ぎまで懇親会は続き、その中で担任との面談を行ったり、また同じ学校を受験する方同士で情報交換をされていました。私も10人ほどのお父さまと面談し、第1志望校の確認や、併願校の対策の仕方など、いろいろ細かな相談を受けました。お父さま方の熱心さには圧倒されました。

懇親会に先立ち、6時半から8時半まで「願書・面接対策」と、「入試1カ月半前の家庭学習の在り方」をお伝えしました。そのうちの「願書・面接対策」で私がどうしても伝えたかったことは、以下のようなことです。

  1. 学校側が願書・面接で何を見ようとしているのかをしっかり押さえ、その意向に沿った対応をすること。ポイントは2点。一つは第1志望かどうかを見ようとしているということ。またもう一つは、子どもの「育ち」の背景を見られること。そのためには、志望する学校の教育方針をしっかりと理解し、その学校で学ばせたい気持ちを強く伝えること。そして、何よりも父親の「子育て参加」が必要だということです。

  2. 願書を拝見すると、美辞麗句の羅列が多く見られます。何を学校側に伝えたいか。家庭の考え方をしっかり書くことが大事です。決してノウハウ本から引用したり、借り物の言葉を使わない事。そのためには、エピソードを交えて、具体的に書くことです。対策本を読めば読むほど、試験官にとって何も残らない、心を打たない文章になってしまいます。

  3. 面接も想定問答集を暗記していくようでは、しっかりとした対応はできません。毎年、母親が緊張してあがってしまい、思う通りに話せないということをよく聞きます。それは、答え方によって100点があり90点がありと考えているからです。面接は、答えた中身で点数はつきません。学校側が見ようとしているのは、第1志望であるかどうかということ。そのためには、その学校で学びたいという強い気持ちと、その学校に対する理解・協力の姿勢を見せることが重要です。こう答えたから何点などという評価はしていません。出来 - 不出来を気にするからこそ、あがってしまって何も話せないのです。もっと自然体で、学校の先生にご家庭の熱意を伝えるつもりで臨めば、何も緊張することはありません。過去の例を見れば、面接のキーパーソンは父親です。どこまで子育てにかかわり、子どもを預ける学校をどれだけ理解しようと努めたか・・・その努力が、学校側に「醸し出す雰囲気」として伝わっていくのです。第2志望だからと思った瞬間、その気持ちはどこかに現れます。学校側はそこを見抜こうとしているのです。

  4. 子どもの面接対策は、大人以上に想定問答集の繰り返しのトレーニングではマイナスです。面接では「何をどう答えたか」ではなく、その背景にある素の姿、身に付いた「育ち」を見ようとしています。決して答えた内容で優劣は付きません。「どんなテレビを見ますか」と聞かれたら、「テレビは見ません」と言いなさい。「どんな絵本を見ますか」と聞かれたらこう答えなさい。「宝物は何ですか」と聞かれたらこう答えなさい・・・そんな練習をしている子が最近多く見られます。それが面接対策だといって塾側で徹底して行っているようですが、そんな練習はすぐに見抜かれます。なぜかといえば、今の面接は答えた内容に関して、また新たな発展した質問をしてくるからです。普段子ども自身が考えてもいなかった答え方をしたらすぐにばれてしまうし、一番いけない「ウソ」をついたことになります。ウソをついてまでも「こう答えなさい」の訓練は、マイナス効果です。こんな例があります。それは、母親のことを「お母さま」と言いなさい、父親のことを「お父さま」と言いなさいと強制し練習することです。普段から「お母さま」で呼んでいるならともかく、「ママ」でも「お母さん」でも良いのです。呼び方に優劣があるのではなく、そこに子どもの気持ちがこもっているかどうかです。自分自身が「お母さま」などと言ったことのない指導者が、受験用に子どもに向かって「お母さま」と言いなさいと強制する構図は滑稽としか思えません。それが受験指導であるなら、そんな指導はしない方がましです。訓練によって答え方をたたきこむやり方をしても、学校側はすぐに見抜きます。そうした子どもが多いことをある学校の校長は嘆いていました。心のこもらない訓練をされすぎた子どもたちの本当の姿を学校側は知っているのです。そんな機械的な訓練を学校側が望むはずはありません。

真近に迫った願書提出や面接を控え、落ち着かない毎日かと思いますが、面接は家庭の気持ちを伝える唯一の場であるという認識に立ち、自然体で臨んでください。子育ての総決算の入試です。子どもの成長を信じ、これまでの子育てのあり方について自信を持って面接に臨んでください。身についたもの・信じたものしか、相手に共感を与えません。借り物でない、それぞれのご家庭で信じてきたもの・大切にしてきたものを、学校側に伝えてください。

PAGE TOP