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週刊こぐま通信
「室長のコラム」

基礎段階の学習における学力の問題点

第234号 2010/2/26(Fri)
こぐま会代表  久野 泰可

 11月からスタートした受験対策の学習もすでに4カ月が経ち、1年間の対策期間の3分の1が終了したことになります。こぐま会ではこれまでの指導経験を生かし、子どもが物事を理解する道筋に合わせた「合格カレンダー」を実践してきました。その基礎段階の学習もあと2か月で終了することになります。5月連休前に基礎を終え、7月から始まる夏休みの前までにすべての領域の応用問題を終了させます。その後、7月~8月の難問トレーニングを経て、9月~10月の予想問題トレーニングへ導くように1年間のカリキュラムを設定しています。

その中でも一番重要な基礎段階の学習は、約半年間かけて行います。入試問題の8割に相当する課題を学習の対象とすることになりますが、それを4月いっぱいで終了させる方針です。7つのステップのうち「ステップ1」~「ステップ4」までが基礎ということになりますが、「基礎」だからといっておろそかにできません。基礎だからこそ深く理解しなくてはならないのです。そのひとつひとつを時間をじっくりかけ、事物を使った働きかけ、カードを使った試行錯誤、そしてペーパーを使ったまとめの学習と、同じことを何段階にも振り分け、トレーニングしていきます。こうした螺旋型カリキュラムがしっかりできていないと、基礎学力は定着していきません。幼児教育における「系統性」の重視は、他の学年よりも大事な意味を持っています。「カリキュラムなんかなくても、過去問をやっていれば良い」というような間違った指導とは全く違う学習法です。それが「まともな幼児教育」「入試後にも意味を持つ学習」ということになるのです。

これまでの4ヵ月間の学習を振り返り、子どもの学力等で気になるいくつかの点をお伝えします。

  1. 指示の理解、問題の意図の理解が大きな壁になっている子が多い。つまり、1回の指示で何をどう解決していけば良いのかを理解できない子が多い。記憶の要素も含めた「指示の聞き取り」が、出来・不出来につながる大きな要因であることははっきりしている。
  2. 指示の聞き取りは単に態度の問題ではなく、言葉の理解が絡んでいるため、深刻である。
  3. これまで学習した基本となる内容の中で理解の程度に個人差が大きく見られるものは、具体的な内容でいえば、未測量におけるシーソーの問題・位置表象における左右関係の理解・数における暗算能力・図形における構成能力・言語におけるしりとり問題などである。
  4. 集団活動については、自分の意見を言えるかどうか、言葉で理由説明ができるかどうかなど、言語的な表現力に大きな差がみられ、これは最後まで引きずる深刻な問題になる可能性が高い。
  5. ペーパートレーニングを先行させてきた子どもたちは、質問の形式が変わるだけで戸惑ってしまう傾向にある。初めての学習課題をペーパーのみで行うと、問題を理解する前に解く方法のみを理解するために、こうした傾向がみられる。基礎学力を定着させなくてはならないこの時期に、ペーパーを先行させた学習は、逆効果をもたらすことになる。
  6. 手先の巧緻性の課題は個人差が大きく見られるが、物事の処理の仕方と学力には相関関係があるので、作業に集中するトレーニングをこうした課題の中で培っていく必要がある。技術面だけでなく、作業に取り組む姿勢の確立に役立てていく必要がある。
  7. 数における暗算能力はまだまだ時間がかかるが、家庭での指導が徹底してきたのか、指を使って答えを出そうとする子は少なくなってきた。数の構成・数の多少・数の増減など、たし算やひき算につながる内容については、暗算で答えが出せるよう努力してほしい。今は大変だけれども、数ヶ月経った後、この「暗算トレーニング」の意味がわかる時が必ず来るはずだ。
  8. 図形に関してはまだまだ基本学習の段階であるが、最近の入試では「対称図形」「重ね図形」「回転図形」など、難しい問題が多く、図形を素材として使いながら「考える力」を求める問題が増え、どちらかというと数の問題より図形の問題の方が難問化している。その基礎となる、パズル・折り紙などを使った経験をたくさん積んでおきたい。

教室の授業でみられる子どもたちの学力の問題点をお伝えしましたので、家庭学習の参考にしてください。現在「ステップ3」の学習に入り、そのまま入試問題になりうる課題などにも挑戦しています。特に「ステップ3」と「ステップ4」の内容は、今後行う応用課題の基礎として、その理解度が重要です。今は、あせらずじっくりと時間をかけ、具体物やカードを使った練習が大事です。家庭学習を中心に受験対策を考えている方は「ひとりでとっくん おけいこカード」などを使って、繰り返し働きかけ、試行錯誤させる時間が大事です。まだまだペーパーを大量に使う時期ではありません。

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