週刊こぐま通信
「室長のコラム」夏の学習課題(4) 最近の数の出題傾向
第209号 2009/8/6(Thu)
こぐま会代表 久野 泰可
こぐま会代表 久野 泰可

小学校の入試において出題の中心となる「数」領域の問題は、問題がパターン化しないように、最近では各学校ともいろいろ工夫した問題を出しています。昔からある「分類計数」「同数発見」「数の多少」のようなパターン化した問題はほとんど出なくなりました。それに代わり、暗算能力・思考力が伴った新しい問題が出始めています。その傾向は、次のようにまとめることができます。
- 具体的場面がなく解答欄しか与えられず、暗算能力が必要とされる問題が増えてきた
- 「数の増減」に象徴されるたし算やひき算につながる問題よりも、「一対多対応」に代表されるかけ算・わり算につながる問題が多くなった
- 一度答えを出してから、別な数の操作を必要とする「複合問題」が増えつつある
- お話によって場面の数を変えてしまい、変わった状態で別な質問をする
- 「話の内容理解」の中に、数の操作に関する問題を組み込む
こうした、問題の変化に対応する能力を高めておかなくてはなりません。そのためにはまず、「数の内面化」を促進する必要があります。具体物やペーパー上に描かれた具体的な場面がなくても、お話だけで数の操作がイメージできるようにならなくてはいけません。その能力はペーパーだけの学習では身に付きません。具体物に働きかけ、数の変化を経験する中で、その操作を頭の中でできるようにすることが求められています。暗算能力は、単に数字だけを取り出した「計算能力」を高めるのではなく、話を聞いて数の変化をイメージすることができる総合力です。
「あなたたちは小学生ではないのだから、手の指でも足の指でも、なんでも使って答えを出しなさい」こんな指導がまかり通っています。しかし、そんな指導では最近の入試で問われる問題には対処できません。少し頑張れば身に付く暗算能力を、大人の安易な発想で壊してしまっているのです。答えが出れば何でもありの間違った指導では、結局子どもの伸びる芽を摘み取る結果になってしまうのです。
ところで、最近の入試傾向を踏まえてどんな単元が重要かをお伝えしましょう。
- たし算・ひき算の基礎
- 数の増減・数の合成・数の分解・数の構成
- かけ算・わり算の基礎
- 一対多対応・包含除・等分除
- 思考力が伴うもの
- 数のやりとり・魔法の箱・数の逆思考
話を通して数の変化を考えさせる典型的な問題は、絵本を使ったり、長いお話を聞かせたりする「話の内容理解」の中に数の操作が入り込む形で出現しています。このような数の操作を伴う話の内容理解は、これからますます増えていくと思います。「聞く力」と「数の操作」がセットになったこうした問題は、幼児期における数指導の大事な課題だからです。