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週刊こぐま通信
「室長のコラム」

3カ月を過ぎた子どもの学力差

第185号 2009/2/6(Fri)
こぐま会代表  久野 泰可

 11月から始まったばらクラス(受験クラス)の授業も、今週でステップ2が終了します。
個人面談も始まりました。これまでのテスト結果を踏まえて現時点での学力の問題点を保護者の方にお伝えしていますが、保護者の方も「こんなはずではなかった」と少し焦りを感じてきたのか、家庭学習にも気合いが入ってきたように思います。

スタートしてから3カ月たった今の時期の子どもたちの学力の現状はどのようになっているのでしょうか。基本クラスの授業はまだ12回ほどしか進んでいませんし、1月から始まった学校別指定校クラスもまだまだ基本問題の学習であるにもかかわらず、出来 - 不出来の差は日ごとに大きくなっていくように思います。トレーニングによって解決していく要素もありますから、どれだけ家庭学習を積み上げているかどうかがテスト結果にはっきり表れてきています。今の時期における「出来る - 出来ない」を分けるのは、「1回の指示をどう理解できたか」という面がかなり大きな要素であるように思います。もちろん聞き取りは単なる態度の問題ではありません。「言語」を介して行う問いかけの理解度がどこまで進んでいるかは学力を形成する大事な要素だと思います。

先日、DVDに吹き込んだ指示に従って次のような簡単な指示の聞き取りをやってみました。

  1. りんごのお部屋に、赤いを3つ書きなさい
  2. ミカンのお部屋に、青い2つと、緑のを1つ書きなさい
  3. ぶどうのお部屋に、横1列に青いを6個書き、左から3番目だけぬりなさい
  4. バナナのお部屋に、青いを4個書き、半分の数だけ色をぬりなさい

上のような指示の聞き取り問題の中で、1と2は問題なくできます。しかし、3・4の問題になると答えが分かれてきます。決して的外れの答えではありませんが、その間違いを見ると、1回の指示をどう理解したかの違いが如実にあらわれています。どのように間違えたのか典型例を挙げてみましょう。

3の誤答例
(A) 左から3番目を右から3番目と間違えてしまう
(B) 丸を6個書き、左から3つ全部を塗ってしまう

4の誤答例
(C) を4個書き、それぞれを半分ずつ塗ってしまう
(D) を4個書き、そのうちの2個を半分だけ塗ってしまう

これらの誤答例を見ると、決して的外れではないし、間違いの理由ははっきりします。
(A)は右と左を混乱しています。
(B)は左から3番目と左から3つ全部とを聞き間違えています。
(C)は「半分の数」を「それぞれを半分ずつ・・・」と理解しています。
(D)は「半分の数」と「半分だけ塗る」を混乱し、その上、同時に2つのことを行ってしまっています。

ここに表れた間違いは、理由もはっきりしていますし単純ミスといえばその通りですが、1回の指示を正確に理解することはこれからの学習においても大変重要な要素ですし、実際、本試験で合否の分かれ目もこうしたことに起因することが多いはずです。学校別指定校の指導の現場でも「出来る - 出来ない」を分ける原因の多くが、上記のような聞き間違いが原因であることが多く見受けられます。

学習がスタートして3カ月経過した子どもの学力差は、今述べたような「正しい聞き取り」ができないことからくる面が大きいように思います。この聞き取りの違いはこれから複合問題に代表される難しい問題になった時、ますます大きな差となって表れてくると思います。

子どもが身につけている言葉と、学習を通して身につけていく一般性のある言葉(言語表現)との間にある溝をどう埋めていくか・・・それが今の時期の大事な教育課題であるとともに、学力差を生み出す原因のひとつだということも知っておかなくてはなりません。

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