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週刊こぐま通信
「室長のコラム」

「原国語」という考え方について

第115号 2007/08/23(Thu)
こぐま会代表  久野 泰可

 8月17日の新聞は、中央教育審議会が、基本方針を「ゆとり教育」から「確かな学力の向上」に転換した上で、自分の考えを文章や言葉で表現する「言語力」を全教科で育成していく方針を固めたことを報じています。以前から次期指導要領の改訂では、国語を学習の基本にすえ、論理的思考力を育成することを表明していましたから、今回の報道はその最終確認ということになります。
今後、各教科ごとに具体的な育成方策をまとめるようですが、私たちが20年以上も前から主張してきた「論理的思考力の育成」に、文科省が本腰を入れて取り組むことは、遅きに失したとはいえ歓迎すべきことです。

 幼児期の基礎教育に携わっている私たちは、この方針をどのように受け止めたら良いのか。入試問題の変化も含めて考えておかなくてはなりません。国語科の指導要領を見れば明らかなように、小学校以降の教科学習では、国語科は、聞く力・話す力・読む力・書く力の4つが授業内容を構成する柱になっています。幼児期の基礎教育においては、発達の現状を考えれば、「聞く力」と「話す力」に重点を置かざるを得ません。しかし、論理的思考力の育成との兼ね合いを考えれば、単に国語科の内容だけで解決できるわけではありませんので、すべての領域の学習を通して、論理的思考力と言語力を育てていかなくてはなりません。

 数学者であった遠山啓氏は、1972年発行の「歩き始めの算数」の中で、幼児期における数の教育は、小学校で学ぶことをやさしく薄めて学習するのではなく、教科学習を支える考え方を生活や遊びにテーマを求めて育成すべきだと主張し、『原数学』なる概念を打ち出しました。私は、遠山氏のこの考え方を支えに、36年間現場で実践し、幼児期の基礎教育の内容を「KUNO―METHOD」として確立しました。遠山氏は著書の中で、自分は専門外で十分わからないけど、きっと『原数学』と同じように『原国語』『原音楽』・・・があるはずだと主張していました。

 そのように考えると『原国語』の内容を、『原数学』と同じように、もっと豊かにしなくてはならないと考えています。聞く力の代表としての「話の内容理解」、話す力の代表としての「お話づくり」だけでなく、日本語理解としての『言葉の学習』も含めて、3つの柱で『原国語』の内容を考えてきましたが、もう少し視点を広げ、子どもたちの生活や遊びにテーマを求め、楽しく経験できる活動を工夫すべきだと思います。

 また、今まではあまり問題にしてこなかった、読む力の基礎・書く力の基礎をどのような内容で学習していけばよいのか、ということについても考えなくてはなりません。幼児の発達段階に合わないとしても、現実の幼児たちはすでに読んだり書いたりしているわけですから、この事実に目をつぶっているわけにはいきません。『原国語』があるとするなら、そうした読み・書きも含めて基礎教育の内容を確立しなくてはならないと考えています。

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