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週刊こぐま通信
「室長のコラム」

教科前基礎教育の重要性・・・5歳児就学報道にふれて

2005/04/14(Thu)
こぐま会代表  久野 泰可
 こぐま会は、今年4月で創立22周年を迎えました。基礎学力の低下が懸念されている昨今、私たちのめざす「基礎教育の充実」がますます重要になってきています。私たちはこれからも、子どもたちの発達に見合った系統性のある教育内容と、「事物教育」「対話教育」を中心とした無理のない教育方法で、子どもたちの「論理的思考力」を育てたいと考えています。

 ところで、最近「5歳児就学を検討している自治体がある」という報道がありました。就学年齢の1年引き下げについては、これまで何回も話題になりましたが、本格的な議論には至っていません。学力の低下懸念を受けて、さまざまなレベルでの改革が提案されはじめていますが、「5歳児就学」もその流れの中のひとつだと思います。「6・3制義務教育」という制度上の問題があり、簡単には実現しないかもしれませんが、今はやりの「教育特区」で実現をめざすということのようです。こうした議論は、「基礎教育」を実践している私たちにとっては大歓迎です。大勢の人たちに、この「5歳児就学」の問題に関心を寄せてもらい、「幼小一貫教育」についての議論がなされることを期待しています。ただ、私たちにとって最大の懸念は、5歳で就学となった場合、どんな内容の教育をしていくのかという点です。今回の構想を発表した自治体では、今6歳でやっている内容を、そのまま引きおろして5歳児でやればいいと考えているようですが、私はそうしたやり方では、何も解決しないと思います。学習の順序を踏まえれば、1年引きおろしても学習することは可能ですが、理解する力に今まで以上に個人差が出てくるはずです。それをどう解決させていくのが大問題です。つまり、入学以降始まる「教科学習」の前に、その学習を受け止める土台をしっかり築いておかなくてはだめだということです。1年早めて5歳児から教科学習を始めるのなら、その前の4歳児に、あるいは3歳児に何を身につけさせなくてはならないのか、はっきりさせておかなくてはなりません。そして、将来の教科学習に備えた知育プログラムを準備しなければ、今まで以上に理解できない子どもたちを作ってしまうことにもなりかねません。そうした、準備がしっかり整って、はじめて「5歳児就学」ということが実現できるのです。そこに手をつけないで、就学年齢を下げるだけの改革では、本当の意味での改革になりません。教育制度の変更に教育内容が伴っていかないのが一番の問題です。

 就学年齢の引き下げ問題は、幼児期の教育をどうするのかという議論と無関係ではありません。今の日本の幼稚園や保育園の教育内容をしっかりさせなくては、どんな制度上の改革をやっても、子どもたちの基礎学力は育成できません。その意味で、私たちが22年間実践し、今も修正を加えている「教科前基礎教育」の内容と方法こそ、こうした問題の解決に向けて、具体的な提案になるのではないかと考えています。

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