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週刊こぐま通信
「小・中・高 現場教師が語る幼児教育の大切さ」

vol.75「小学校低学年の模試」

2011年12月24日(土)
学習塾 プラウダス講師 石原弘喜
 小学校低学年の模試が盛んになっています。子どもの学力を試そうと、多くの親子が参加するようになりました。その学習に対する保護者の意識の高まりは中学受験とは無縁ではないでしょう。中学受験を有利に運ぶためには、少しでも早く先取り学習を始めたい。そういう意識が透けて見えます。

先取り学習にはメリットもデメリットもあります。先取り学習をすることで学力が低下してしまう子どももいれば、逆に先取り学習をしないことで学力が伸びない子どももいます。大切なのはその見極めと低学年の学力の本質を知ることにあります。

これまで何度も記してきたように、低学年の学力は熱せられた高温のガラスのようなものであり、いかようにでも形が変わる可能性を秘めている時期です。それは裏返せば、低学年の学力は一時的なものであるということです。その意味で、模試という手段で低学年の学力を測ることはできません。

大学受験にとっての模試と低学年にとっての模試は、物差しの目の粗さが異なります。大学受験の目の細かい物差しで、低学年の模試を捉えてしまうことはできません。大学受験の偏差値60と低学年の偏差値60の意味は違います。

子どもは親の意向に沿って、遊ぶ時間を削り一生懸命に模試を受けます。それはどんな結果であっても認めてやるべきです。間違っても結果が悪いからと怒ることは謹んでください。テストの結果が良ければ誉められ、悪ければ怒られる。それは子どもに「勉強ができていれば多少のことは目をつぶってもらえる」という意識を植え付けてしまいます。

礼儀や思いやりよりも学力が上位に位置づけられる状況で育った子どもは、成績を親や教師との取引の材料にする傾向にあります。模試の結果だけでしか子どもの学力を判断できないとしたら、それは明らかに子どもとのコミュニケーション不足です。

子どもに難易度の高い模試を受けさせ、その結果に大学受験のような細かい物差しをあてがい、それが思い通りの結果ではないからといって子どもに怒りの感情をぶつけるのは、子どもの学力を最も低下させる子育てです。一方、思い通りにいかないことで、子どもを教育的に突き放すのも選択してはならない方法です。

どこかで読んだ情報や耳にした他人の子どもの情報、または自分の思い込み。そういったものに子どもをあてはめようとするやり方は、最も子どもの学力を低下させます。それは親子関係に影を落とし、ひいては子どもの未来の人間関係にも影響を及ぼします。見識と子どもの目線、そしてバランス感覚。この三つこそが、低学年の教育にとっては欠かせない視点なのです。

最後に。

2011年は東日本大震災に見舞われ、忘れることができない年となりました。私にとって今年ほど教育観が大きく揺さぶられた年はありません。また、今年ほど確信を得た年もありません。2012年が子どもたちにとって、より良い年となることを心より願っています。

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