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週刊こぐま通信
「小・中・高 現場教師が語る幼児教育の大切さ」

vol.66「集団授業の必然性と個別指導の難しさ」

2011年9月30日(金)
こぐま会
幼小一貫ひまわりクラブ算数担当
久野雅弘
 今回は、ひまわりクラブ2年生で5月ごろ行った方陣算について、お話しします。
方陣算の代表的な問題は、以下のとおりです。

【基本問題】
 碁石を使って1辺が6個の方陣(正方形)をつくりました。この方陣の周りの碁石の数はいくつになりますか?

【応用問題】
 ある方陣(正方形)の周りの碁石の数を数えたら32個ありました。この方陣のすべての碁石の数はいくつですか?
多くの子どもたちは、「碁石」や「方陣」という単語にあまり馴染みがなく、まずは、「碁石」と「方陣」が何であるかを理解させなければなりません。「碁石」が難しければ「オセロ」でも良いですし「方陣」が難しければ「方眼=マス」でも良いと思いますが、全員の子どもがイメージ&理解できたことを前提にお話しします。
まずは【基本問題】を見てみましょう。
この問題の考え方を式にすると、6-1=5、5×4=20 答え20個 となります。
「6-1=5」の発想をどう子どもから引き出すかが最大のポイントになりますが、まずはヒントをあたえず、自由に子どもにさせてみます。すると、大体の解き方は以下の3パターンになります。

(1)絵に描いて、数を数える
(2)上辺と下辺の個数を計算(6+6=12)し、残った左辺と右辺の個数を計算(4+4=8)、最後にすべて合わせる(12+8=20)
(3)1辺が6個の辺が4つあるから(6×4=24)と計算する

(3)は一見良さそうです。しかし、(1),(2)で解いた子どもたちとは導き出した答えが異なります。ここで初めて「6-1=5」についての理解が始まります。

幼児での指導の場でも感じることですが、方陣算のような問題を子どもたちに指導するにあたって、子どもたちの力をかりなければ、前に進まないことがよくあります。これを「こういう場合の解き方は・・・」と教えてしまうのは簡単ですし、確かに類似問題は「できる」ようになりますが、【応用問題】に自ら考え挑んでいく子どもを育てることはできません。複数の友だちと学習する環境の中で、互いに試行錯誤し、ヒントを出し合いながら、ひとつの論理を形成していくという感じです。
小学校受験に挑むお母さま方が家庭学習で「どう教えればよいかわからない」と声を揃えておっしゃる気持ちは、とてもよく理解できます。私も個別指導の場で、どう理解させるべきか悩むことが多くあるからです。

次に【応用問題】を見てみましょう。
この問題で【基本問題】をきちんと理解できているかどうかがわかります。
解き方としては、32÷4=8、8+1=9、9×9=81 答え81個。つまり、【基本問題】の「逆」になるため、8+1=9の発想がポイントなります。先ほどの6-1=5をしっかりと理解した上で、正確な逆思考ができなければなりません。子どもたちのこの学習への取り組む姿勢を見ていると、幼児期に行ったすべての逆思考(逆対応、逆位置移動、逆観覧車、逆しりとり、四方からの観察、鏡映像etc・・・)の学習が学力の土台になって、知的好奇心を支えているんだなと感じます。【基本問題】で論理性を伴って理解できた子どもたちは、そういった学力の土台に支えられ、【応用問題】も比較的スムーズに理解できます。何より、【応用問題】を目前にしたとき、「やってみよう」という姿勢を見せてくれます。
また、よく理解できる子どもの共通点として挙げられるのが、文章で表現された「方陣」を自分で描くことができる能力が備わっているという点です。これは、植木算やつるかめ算の場合でも共通しています。

最近の東大入試は、初見解決力が求められるという内容が過去のコラムに登場しましたが、方陣算のような問題に直面したとき、子どもに備わってなければならい「力」とは何か、教師がとるべき「指導」とは何か、毎回いろいろなことを考えさせられます。また、今後の学力の土台になる、考える力や知的好奇心を子どもに身につけさせる上で、集団授業は欠かせないものであることも感じています。

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