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週刊こぐま通信
「小・中・高 現場教師が語る幼児教育の大切さ」

vol.47「二つの“すてき”」

2011年3月4日(金)
こぐま会教務部長
幼小一貫ひまわりクラブ国語担当
山下淳二
 ひまわりクラブでは、二月に物語文の授業で『赤い車』(小松左京)というショートショートの作品に取り組んでみました。今回は、その時の授業で気付いたことについて述べてみたいと思います。


おじいさんから、「朝早くおきると、きっとなにか、ねぼうの人間には、見つからないものが、見つかるよ」と教えられたケンちゃんとミコちゃんは、ある朝、ほんとうにめずらしいものにぶつかります。

「すごい自動車!」とミコも目をまるくした。
いままで、写真で見た、どんな外国の自動車より、もっとスマートで、もっと美しく、もっとはやそうだった。ぐっと細長く、ひらべったく、ルビーのように赤くて、ピカピカ光り、座席のところには、シャボン玉のような、すきとおったカバーがかぶさっている。
すてきねえ・・・」ミコは、そのピカピカのボディに そっとさわりながらいった。

ミコは、このきれいな車のどろをふいてあげます。するとうれしくなったのか、運転手もいないのに赤い車はピョンピョンはねながら二人の後をついてきます。犬がじゃれるみたいに。

二人の前にまわりこみ、横をむいてとまった、と思ったとたんに、二人はいつのまにか、座席の中に、フワリとすくいあげられていた。
「わァ、すてき!」とミコは手をうってさけんだ。
「こんなすごい車にのったの、はじめてだわ。」

この後、車はすべるように空を飛んで、学校の校庭におります。そして、校庭で遊んでいると、空から背の高い人(実は未来から来た人)が降りてきて車に駆け寄ります。「やあ、こんなところにいたのか。」と。
それからケンちゃんはその人とお話をして、ミコちゃんに伝えます。

「ずっと未来には --- 自動車も、ああいうふうになるんだってさ」


この作品は、車の進化を考えることによって、未来に対する<夢>や<願望>を表現しているように思えます。ですから、ミコが思わずさけんでしまった<すてき>という言葉にこめられた思いをどう読みとるかということがキーポイントになります。
未来からきたこの「赤い車」がどんなにすてきなのかを理解するために、クーピーペンでこの車の絵を描いてみました。車が大好きな男の子のようには上手に描けませんが、かわいくて、かっこいい車ができあがりました。
問題は二つめの<すてき>です。今度のすてきは、車の外観ではなく、「二人はいつのまにか、座席の中に、フワリとすくいあげられていた」というところなのですが、何人かの子どもは最初の<すてき>と同じように考え、スマートとか美しいとかピカピカ光っている等の言葉を書き込んでいました。ちょっとびっくりしてしまいました。<すてき>という言葉は事物の外見を表わすためだけでなく、中味の魅力をも表わしているということがまだわかっていないのです。このあたりにやはり<二年生>という年令の壁がでてしまうのかもしれません。

最後にまた絵を描いてもらいました。「未来にはどんな車があったらよいですか?」というテーマです。最初のすてきではなく、後半のすてきにあうような魅力的な車をね、と。文章からイメージして描いた最初と違って、今度はみんな描きづらそうでした。それでも、プールのある車、好きな果物が出てくる車など、楽しい車がいっぱい完成しました。

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