週刊こぐま通信
「小・中・高 現場教師が語る幼児教育の大切さ」vol.45「子どもが何かを学ぶとき」
2011年2月19日(Sat)
こぐま会 Primary English代表
第一教務部長
廣瀬亜利子
“Good afternoon!”こぐま会 Primary English代表
第一教務部長
廣瀬亜利子
“Good afternoon, dear children! How are you?”
“I’m fine, thank you!”
まだ英語を習い始めて間もない子どもたち(年長児)のクラスに、つい先日遥々バングラデシュからお客さまが見学にいらしたときの会話です。
ここまで完璧な会話が成り立つことは全く予想していなかったので正直驚きましたが、「自慢の子どもたち」を目の当たりにした瞬間でした。
バングラデシュから見学に見えたこの日、「はじめての英語」は、全10回のクラスの5回目でした :
1. Speaking
2. Words
3. Numbers and Colours
4. Role Playing
1. “Good afternoon.”
2. “How are you?” “I’m fine, thank you.”
3. “How is the weather today?” “It’s sunny.”
2. “How are you?” “I’m fine, thank you.”
3. “How is the weather today?” “It’s sunny.”
2. Words
1. “It’s a balloon.”
2. The sound of “r”. --- rabbit, rat, red, ribbon, rice
2. The sound of “r”. --- rabbit, rat, red, ribbon, rice
3. Numbers and Colours
1. Counting 1~10
2. “Colour 3 flowers in pink.”
2. “Colour 3 flowers in pink.”
4. Role Playing
“At the Grocer’s”
“Good afternoon”というあいさつで毎回授業はスタートしますが、1回目にはじめて子どもたちと会ったとき、皆ただポカーンと私の顔を見ていました。「魔法がかかったようにきれいに言えるようになるから一緒に練習しましょう。」と励ましのことばをかけました。そしてただ“good afternoon”のフレーズを丸ごと何回も真似させるのではなく、“good,” “afternoon,” “after,” “noon,” それぞれのことばの意味を日本語でしっかり伝えました。それから“good”、“after”、 “noon” それぞれを正しく言う練習をしました。そのとき“good”の“d”, “after”、の“ter”を重点的に何度も正しく言う練習をし、最後に“good afternoon”とひとまとまりで言ってみました。すると、実に綺麗に言えるようになっていたのです。ほんの数分前までできなかったことができるようになっているので、子どもたちも自分の変化に驚きつつも本当に嬉しそうでした。そして家に帰ってから言ってみると、今度はご両親がわが子の綺麗な“Good afternoon”に感動し、子どもはますます良い気分になれるのです。このようにして子どもたちのモチベーションはますます高まっていきます。この日は、突然外国からお客さまが現れ、それまで練習してきたことが実践できた上に、「使えた!」という確かな実感を味わうことができたのではないかと思います。“How are you?”と不意に問いかけられても、ごく自然に“I’m fine, thank you!”と答えているのを見たときは、期待を遙かに超えた展開だっただけに、本当に驚きました。
2. Words では、タンバリンの規則的な音に合わせて、“It’s a _____.”というフレーズに名詞を入れて正しく発音する練習をします。私、子ども、私、子ども...というように交互に言っていくのですが、長縄跳びに順番に入っていくことをイメージしてもらって、同じ調子でリズミカルに途切れることなく続けていきます。第5回のこの日は50語ぐらい続けることができました。第1回の授業では10語でしたが、子どもたちの「もっとやりたい!」という強いコールに答えていくうちに、たった5回目にして50語に増えたという次第です。ただし、ここではリズムに乗りつつも1音1音を正しく発音することが目的ですので、50語のことばの意味を覚えたということではありません。1音1音の正しい発音の仕方を習得することが、「はじめての英語」クラスにおけるとても重要な課題のひとつです。はじめから正しい発音を身につけさせることで、きれいな英語を話すことができるというのと同時に、もう少し先で習うphonicsによる読み書きの学習のためにも大変有効になるからです。
4. Role Playingでは、「八百屋さん」の場面設定をしてお買い物ごっこをしました。
“Hello!”, “Hello!”, “A carrot, please.” “Thank you.” “Bye!”という簡単なやりとりですが、これで十分に会話が成り立っています。しかも生まれてはじめての子ども同士の会話です。まだ英語を始めたばかりの子どもたち同士でも、理解して通じ合えたということを体感できたと思います。実際、外国に行ってお買い物をするときも、これで十分買い物はできるのです。キラキラと目を輝かせながら買い物ごっこを楽しんでいる子どもたちの姿は、バングラデシュの先生たちにとっても大変新鮮だったようです。
バングラデシュの英語教育の現状について話を聞けば聞くほど、日本における公立中学校の英語教育ととても似ているという印象を受けました。日本の英語教育もかなり遅れているというのは残念ながら世界的に知られた事実です。文法と単語を暗記し、結果、英文を読む(英語から母語に訳す)ことは比較的できるようになる一方で、話す、聞く、書くがほとんどできるようにならないというアンバランスさが目立ちます。単語や構文の丸暗記では知的好奇心は刺激されないでしょう。この点が正に両国が抱える共通の問題点だと思います。ゲームを取り入れたり、歌を歌ったり体を動かすなど、授業のプログラムそのものが楽しく参加できるような内容であるというのは、もちろん大事な要素ですが、更に知的好奇心をくすぐる何かがそこにあれば、子どもはただ楽しいだけでなく、「学ぶことの楽しみ」を実感でき、学習へのモチベーションも上がるのではないかという気がします。
「何事もはじめが肝心」、「英語に対する第一印象は一生付きまとう」、「好きこそものの上手なれ」、この3大エッセンスを10回の講座の中に満遍なく流し込むことで、「英語は楽しい、だからもっと上手になりたい、気がついたらまわりに比べて英語が得意になっていた。」というレールに乗せることができ、そのレールにさえ乗ってしまえば、その後の英語人生はほぼ安泰かなと思います。
毎年1月から年長児を対象に開講している「はじめての英語」クラスですが、この先誰にとっても避けて通れない「英語」を、今のうちから学ぶことが楽しいと心から思えるように仕向けていくこと、これがこのクラスにおける教師の使命だと思っています。