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週刊こぐま通信
「小・中・高 現場教師が語る幼児教育の大切さ」

vol.29「実践活動は不可欠なもの」

2010年10月22日(金)
こぐま会 Primary English代表
第一教務部長
廣瀬亜利子
 子どもたちに英語を教えるにあたって、目標はただ一つ、「コミュニケイトできる英語」を目指すことです。単語の数だけ増えても、その言葉を実際に使えなければ単なる「知識」としての英語に留まってしまいます。コミュニケイトできるというのは、「自己表現できること」です。しかも、子どもが何を自分が話しているのか理解できていることが大切です。
そのためにも、教える相手が小学生の子どもと言えども、最初から文法に沿って系統立てて指導していく必要があります。ただ、そうはいってもやはり子どもたちが理解できる説明、方法でなければなりません。したがって、いつもある一定の順序を踏みます。まず、その日のテーマである言い回しについて、その意味を、子どもたちが理解できるまで説明します。次に、絵カードなどを使って言い回しを繰り返し練習してみます。そして「実践活動」― 場面設定などで実際使ってみる ― を行います。
これが私のクラスの大きな特徴で、他の英語教室と最も差別化できる点だと思います。どのクラスでも、約1時間の授業の半分を「実践活動」にあてています。

なぜ「実践」を私が重要視し、時間をかけるかというと、学習してきたことを頭で完璧に理解しているつもりでも、実際の場面などに接してみると、そう簡単に口から出てくるものではないからです。そこで、毎回その内容に合わせて、何か一場面を設定するなり、ゲームをするなりして、実際にまず使ってみます。しかし1回だけでは不十分なので、場面や内容を変えるなどして、一つの項目について、いろいろな角度から実践を積んでいきます。
「実践活動」といっても、内容はさまざまです。場面設定をはじめ、料理、工作、ゲームなども行います。数の学習では、ゲームなどの他、算数を英語で行ったりもします。
その中で、私が最も力を入れているものが「場面設定」です。各種お店、スーパーマーケット、家庭内、レストラン、カフェテリア、郵便局、飛行機の中、路上、教室など、場面はいろいろ設定しますが、いずれの場合も臨場感を持たせるために、各場面で使う道具類は、なるべく本物または本物に近いものを用意しています。食べ物、例えばたこ焼き、どら焼き、パンケーキなどは本当に作ります。そして本物ではなく「ごっこ」の時でも、美術専門スタッフに、なるべく本物に近く見えるものを作ってもらいます。

「お店づくり」をする上で、ずっと大活躍してきた道具が一つあります。それは「パペットシアター」といって、本来は指人形の芝居を行う小さな舞台として作られたものですが、机にこれを置いて表示を変えるだけで、いろいろなお店に変身してしまうという優れものです。ハンバーガー、クレープ、たこ焼き、パンケーキ、アイスクリーム、どら焼き、お菓子、ピザ、そして時には文房具、雑貨にいたるまで、これまでさまざまなお店に変身してきました。

「どら焼き屋さん」 一年生の授業から
店主・・・May I help you?
・・・Yes, please. Do you have dorayakies?
店主・・・Yes, I do.
・・・I want dorayakies, please.
店主・・・How many doray kies do you want?
・・・I want 1 dorayaki, please.
店主・・・What filling do you want? I have jam, fresh cream, chocolate and “anko”.
・・・I want chocolate, please.
店主・・・Here you are! Thank you!
・・・Thank you!

この日は、おかわりを買いにもう一度並んでもらおうと、あえて小さめのどら焼きを作りました。そして翌週、パペットシアターは、どら焼き屋さんからアイスクリーム屋さんに変身しました。どら焼き屋さんでの1回や2回の会話では、とても自分のものになるほど身につかないからです。前回と同じ会話を、今度はアイスクリーム屋さんという設定で行いました。前回よりも慣れていて、よりスムーズに会話が運びました。この日は本物のアイスクリームではありませんでしたが、並んで買って、また並んで・・・と、美術のスタッフが見るからにおいしそうなアイスクリームを本物そっくりに作ってくれたおかげで、子どもたちは「ごっこ遊び」を十分に楽しみながら、会話の練習をすることができました。

ある事物を通して、実際にその言葉なり言い回しを使ってみる、体験してみることで、それが子どもにとって「経験」となって、より効果的に身体に吸収しやすくなるのです。だからこそ、実践活動を行うことは、英語の上達のために、絶対不可欠なものなのです。
実践活動は、幼児教育においても最も大切な活動ですが、児童英語教育においても同じことが言えると思います。

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