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週刊こぐま通信
「小・中・高 現場教師が語る幼児教育の大切さ」

vol.24「幼小一貫「ひまわりクラブ」2年目の挑戦」

2010年9月17日(金)
こぐま会代表
幼小一貫ひまわりクラブ主宰
久野泰可
 受験を終えた子どもたちを対象に、年長の1月から、それまでの学習を生かした新しい視点で小学校で学ぶ算数を指導しようと開講した「ひまわりクラブ」も、2年目の授業が進行し、もうすぐ第8期(1期10回の授業)を迎えます。開講当初考えた目標は次のようなものでした。

 1. 受験向けに学習してきたことを最大限生かし、小学校の学習内容につなげる
 2. 小学校算数で問題になる「文章題」に、新しい視点で取り組む
 3. 3年生までに、小学校6年生までの教科書レベルの内容を習得させる
 4. 論理数学的思考を育てるために指導法を工夫する

すでに77回の授業を終えた現在の状況は、以下の通りです。
(ア)現在の小学校受験における数領域の課題は、四則演算全てを扱っている。特に「一対多対応」の学習は、扱う数の範囲は小さいとはいえ、小学校3年生までの内容を含んでおり、生活事象における数の変化の把握については、相当進んでいることになる。その学習を終えた子どもたちを、今の小学校課程の進み具合、つまり、3年間かけてわり算まで理解させるという指導に引き戻す理由はどこにもない。考え方のレベルでかけ算・わり算の世界まで理解しているのなら、あとは数式の意味を伝えてあげるだけのことだから、早い段階で四則演算はマスターできるはずだ。このように考え、それまでの学習につなげて指導した結果、年長卒業までに四則演算の基本は全てマスターできた。そのうえで、2年目の現在は次の課題まで進んできている。

 (1) たし算は、4ケタの繰り上がりのある計算までできるようになっている
 (2) ひき算は、4ケタの繰り下がりのある計算までできるようになっている
 (3) かけ算は、3桁×2桁の筆算までできるようになった
 (4) わり算は、3桁÷1桁の筆算までできるようになった

(イ)習得した計算の範囲に応じて、さまざまな文章題に取り組んでいる。また、植木算・消去算・つるかめ算・年齢算・方陣算といった論理的思考力が求められる文章題にも挑戦させてきた。

(ウ)分数・小数の考え方、計算も指導できた。

(エ)難しい単位換算も克服できた。

(オ)図形課題については、小学校4年生で扱う、角度・三角形・四角形などの学習まで進んできている。

(カ)その他の課題も一部の内容を除き、大体小学校4年生までの内容を、80回近い授業で習得できるようになっている。

こうした学習を進める中で、幼小一貫教育の指導方法として新たに試みてきたことは次のようなことです。
1.計算指導を終えてから文章題指導に入るという従来の指導法だけでは、本当に計算式を理解したことにはならないと考え、作問練習に力を入れてきた。文章を読んで式を立てるだけでなく、式を見て文章を考える練習を強化した。その相互交流を通して、思考過程に応じて計算式を自在に使える力を身につけさせた。例えば、幼児期に学習した一場面の絵(たとえば誕生会で用意したごちそうが乗ったテーブルの場面)を見て、それまで身に付けた四則演算・単位換算・分数小数などを駆使して、さまざまな文章題を作問させるような課題に挑戦させている。

2.論理数学的思考を身につけさせる一つの方法として、3人グループで難しいと思われる文章題を考えさせ、グループとしての解答を発表させる。解答までたどり着く過程で、自分の考えを説明したり、友だちの解答に対して意見を述べたり・・・そうしたやり取りを通して、数学的な論理をしっかり身につけるよう試みた。この集団で考える授業法は、子どもたちも大変興味を示し、取り組んでいる。個別授業が盛んな今、集団授業の良さを取り戻す一つの形ができたように思う。自分の考えを相手に伝え、また相手の意見を理解しようと努める・・・そうしたやりとりこそ、「論理を育てる」大事な経験ではないかと思う。実際喜々として取り組む子どもの姿を見て、こうした経験をたくさん積ませることが大事であると考えている。

計算至上主義の低学年の算数指導を何とか変えなくてはいけない。計算ができても文章題ができないような子どもを作ってはならない。幼児期の学習を無駄にしてはならない・・・そんな思いを強く持ちながら、「幼小一貫教育」の在り方を追究してきました。その結果、早い段階で四則演算ができるということは、数学的な思考を育てる意味で、実に大事なことであるということをいつも感じています。ただ、計算だけができればよいという教育は、何の力にもならないということもはっきりしています。ある生活場面の数の変化をどんな数式で表すか、具体と抽象を行き交う思考力を低学年のうちにしっかり身につけさせること・・・算数における幼小一貫教育の課題が見えてきたように思います。

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