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週刊こぐま通信
「小・中・高 現場教師が語る幼児教育の大切さ」

vol.3「幼児期の教育環境の重要性とこぐま会との出会い」

2010年4月9日(金)
プラウダス塾長 渋谷 充
数学の勉強は、日常生活の中で無秩序に得た経験を発展的に体系化していくものであって欲しいものです。大切なのは経験→体系化という順序なのですが、それが逆転している現代の教育環境は、子供たちにとっては非常に殺伐としたものとなっていることがうかがえます。また、一言に経験といってもそれは能動的な行動の蓄積であることが望ましいのですが、現代では子供たちが得られる経験はおよそ用意されたものばかりで、創意工夫をしなくとも得られる受動的なものばかりが子供たちを待っているのも嘆かわしい限りです。また、数学の証明は演繹法(数学的帰納法も含め)で構築しなければならないのですが、その数学を体得するためには帰納的に多くの経験を取得する必要があります。演繹的に定理のみを教え込んだり、解き方を教えてばかりでは子供の考える力は全く身につきません。一方で能動的な行動による経験は紙面では表現できないほどの量と質を持っていますので、その多寡が後に数学を学ぶ上で大きく影響を及ぼすことはいうまでもありません。ですからそのようなアナログ性をもった経験がうまく体系化される術として数学の勉強を活用して欲しいと願います。余談ではありますが、計算のスピードが速くても大学受験を迎える頃にはいろんな意味でほぼ意味のないことに終わります。

話は変わりますが、先に述べたような側面から現代の教育が抱える問題を考えた場合、幼児期の家庭教育の重要性にたどり着いてしまいます。私は、平素は大学受験の数学を担当しながら高校受験・中学受験と幅広い年齢の子供たちを相手にしていて年々子供たちの考える体力が衰えているのを憂慮していました。そこには教え手の問題ももちろんあるのですが、子供を取り巻く環境が多分に影響していることにも気づかされました。粉挽き職人が川の水をきれいにするようなことまでしてはどうかと思いながらも、難関大学の数学の問題を解けるようにしてあげるためにはと深く思慮にふけるうちに、家庭での教育環境を考えたり幼児期の教育を考えたりすることに心惹かれていく自分がいました。
やはり、子どもたちの学力低下は教育環境によるところが大きいことは否めません。そして現代の教育問題は、少子化や各コミュニティの崩壊などの社会問題とあいまってかなり複雑化し、解決法を一元的に語ることはできません。よって問題の原因はまたの機会にさぐるとしても、子供たちには良質な思考の連鎖をうむためのベースになる環境を与えてあげることが正しいと定義したいところです。それは子供が子供であることを許され、過干渉にならないような適度なしつけがある環境。そのような環境下では子供たちは人間本来の知的好奇心に導かれ、多くの能動的な行動をとるようになります。しかし、そのような環境をつくることを教育法として確立しようとしても、あまりにも恣意的になっても打算的になっても駄目で、うまく教育メソッドとして具現化させるのは難しいものです。

私がこぐま会の教育を導入しようと思ったのは、私が考える理想的な環境に子供たちをおくことができると思ったからです。こぐま会における事物教育は、思考の基本となる概念をすべて事物から学び取る良さがあります。事物を扱うことで得られる能動的経験は自然と意図のバランスが良く、数ある教育法の中でも脳発達の根源的なものに訴えかけ、幼児期にさせる経験として非常に良質なものであると確信しています。こぐま教育とは偶然の出会いではありましたが、私から熱烈な業務提携の希望を出し、その後長い研修などを経て仙台でこぐま教育を導入することができました。1年経過した今、仙台の「プラウダス×こぐま会」の1期生はもう小学1年生の勉強をしていますが、皆能動的に楽しく勉学に励んでいます。そこには技能訓練のみで疲れた子供は一人もいません。導入して本当に良かったと、関係方々には非常に感謝しております。

最後になりますが、勉強を進める上で「気づく」ということは非常に大切です。そこから思考がスタートするので、気づけない子供にいくら定理を教えても効果があがりません。山野ではカタクリが薄いピンクの花を咲かせ、ふきのとうやうどが芽生え始めました。それに気づき、そこから春の訪れを感じることができる子供は知的好奇心に満ち溢れたすばらしい人生を過ごすにちがいありません。
保護者の皆様へ
何に対しても無関心な疲れたお子様にしてしまってはいないでしょうか。気づき→考察のような思考の基本となる事象は決して、いわゆる“勉強”から得られるものではなく、このような自然や日常の具体事物にあることを保護者の方々にはくれぐれもご理解いただきたいと思います。

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