ページ内を移動するためのリンクです
MENU
ここから本文です
週刊こぐま通信
「行動観察だより」

自由あそび

第22回 2013/6/21(Fri)
こぐま会 廣瀬 亜利子
 今回は、4週間に1回行う恒例の「自由あそび」でした。
教室全体にいくつかの遊び道具を配置して遊びコーナーを作り、自分の好きなところに行って自由に遊ぶという、いつものスタイルでしたが、今回遊び道具を今までと若干変えました。今まで毎回あった輪投げの代わりに風船と長縄が新しく加わりました。それ以外はつみ木と絵本とボーリングを用意しました。

「『走らない』『隣のコーナーにご迷惑になるようなことはしない』『大声を出さない』というお約束はしっかり守ってね。もう一つ大事なお約束、一番守ってほしいお約束があるでしょう?何だったか覚えている?」

「楽しく遊ぶ~!!!」と一斉に声がかえってきました。そして誰かが、
「ルールは...」と言い出すとあわてて皆がそろって「守ってね!でも楽しく遊びましょう!」と大合唱でした。つい最近クラスに入ってきた数人の子たちはちょっと戸惑っている様子でしたが、じきに「元気モード」の波に自然に乗ることができたようでした。

つみ木コーナーでは、もはやシリーズ化している「歯医者さんごっこ」がまた始まりました。レギュラーメンバーの数人と準レギュラーメンバーを中心に、初参加の子どもたちも加わって7~8人の大きなグループとなりました :

「じゃあ今日も歯医者さんごっこする?」
「する!する!」
ちゃんは歯医者さんでしょ?」
「いいの?私歯医者さんでいいの?」
「いいよ、ちゃんの歯医者さんおもしろいから。私はお薬作る人になる。」
「私は看護士。」「私はお金の係りになる。」
「受付の人ってこと?」 「うん、そう。」 「わかった。」
「私も看護士がいいな。」 「じゃあ、ジャンケンする?」
「別に2人とも看護士でいいんじゃない?」
「そうだよ。どこの病院でも2人ぐらいはいるよ、絶対!」
「じゃあ、薬の人も2人でいい? 私も薬作りたいから。」
「いいんだけど、患者さんがいないよねぇ。」
「じゃあ、ちゃんが患者さんになったら?」
「いやだ、絶対にいや。私は薬を作りたい。」
「じゃあ、誰か町に出て小人捕まえてきて。」
「何で??」
「捕まえてきた小人を患者さんにするのはどう?」
「いいねぇ~。」
「じゃあ、私小人になる。でも捕まえられなかったら患者さんはいないってことでいい?」
「いいけど、走っちゃだめだよ。亜利子先生と走らない約束したでしょ?」
「そうだね。じゃあやっぱり小人はやめた。」
「いなくていいよ、患者さん。そのうち来るんじゃない?」
患者候補者はその後も現れず、結局、つみ木を1個患者に見立てて更に会話は発展していきました。今回もまた子どもたちの会話を心から楽しませてもらいました。

ボーリングコーナーでも、初めからお互いにお友だちが倒したピンを率先して並べ直してあげたり、順番を譲り合ったりしてとても和気あいあいと楽しそうでした。そしてしばらくすると、ルール決めの相談が始まりました :

「何本倒れたら何点にする?」 「1本1点でいいんじゃない?」
「うん、いいよ。で、何回ずつ投げる?」 「2回は?」
「順番はどうする?」 「背の高い順は?」
「それだとちゃんが最後って決まっちゃうから、やっぱりジャンケンにしない?」

子どもたちはいつの間にか、ただボールを順番に投げてピンを倒しているだけではなく、ルールを決めて「ゲーム化して楽しむ」というレベルまで達していたのです。それだけでなく、他者を気遣う気持ちが更に育ってきたことを目の当たりにすることができました。

一方、「長縄」と「風船」は皆にとって経験がまだ浅く、予想通りの展開となりました。
「長縄」について、あらかじめ「お部屋の中だし狭いから、大縄と綱引きはしないでね。」と約束を交わしました。皆そこは忠実に守ることができ、「ヘビ」という他の遊びを思いついたのは良かったのですが、波立つように動く「ヘビ」の上をむこう側に飛び越えることを嬉しそうに何度も繰り返しているうちに、だんだんエスカレートしていってしまいました。とうとう誰かがキャーッと叫んでしまったあたりから、完全に一線を越えてしまいました。
「風船」については、「ふわふわしているから、ただ追っかけていると絶対に隣のお邪魔になってしまうと思うから、遊び方を工夫してみて。」と事前に促しました。一つのグループはとても良い考えが浮かんでしばらくとても良かったのですが、次第に崩れていってしまいました。もう一つのグループは何度私に促されても、どうしても良い考えが浮かんでこなかったようで、ただひたすら風船をポンポン皆で突き合っているうちに、何度も隣のグループに突入してしまい、私に注意される度に「まずい!」と気づくものの、しばらくするとまた同じことを繰り返してしまう、という状況でした。
そんな中、絵本コーナーにいた子どもたちは、周りで子どもたちがキャーキャー言いながら走りまわっても何しても、一切気になることなく、自分が読んでいる絵本にのみ一点集中していました。

今回もまた子どもたち一人ひとりが自由に遊ぶ様子を観察して、みんな確実に成長したなぁと強く実感しました。少なくとも、「友だちと関わる」「会話を交わす」「協力する」「他者を思いやる」、これらについてはほぼ完成に近い状態まで来たと言い切ることができます。
今後の課題は、今回のような「風船」「長縄」など、ついエスカレートして一線を越えてしまいやすい道具で遊ぶとき、「遊びの工夫」「約束は必ず守るという意識をより高く」することです。また、揉め事やおふざけなどがグループ内や周りで突発的に起きたとき、どのように対処すればいいのか瞬時に判断して実行に移す力もぜひつけてほしいです。そのために、決して私たち大人が「こうしなさい、ああしなさい」とマニュアルのように教え込むのではなく、逆にクラスの中で、良くないこともあえていろいろ経験しておくことだと思います。あらゆる種類の「集団遊び」を通して、その経験を積み重ねていく中で、子どもたちは無意識のうちに、「判断力」がついていくのだと思います。子どもたちは必ず、お友だちとの遊びの中で何かに気づき変わっていくのです。やはり「集団活動の経験値を上げること」、たどり着くのはこの一言です。

PAGE TOP