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週刊こぐま通信
「行動観察だより」

共同絵画 「梅雨のある日のブルーノ」を聞いて

第23回 2013/6/28(Fri)
こぐま会 廣瀬 亜利子
 今回のテーマは「共同制作」で、「聞いたお話の続きの場面を4~5人のグループごとに相談して模造紙1枚に描く」という課題でした。
以前、個別の課題画がテーマだったときに、シリーズ「猫のブルーノ」から一編を使いましたが、同じシリーズの中に「梅雨のある日のブルーノ」という、ちょうど今の季節に合っている一編があり、今回はこのお話を使いました。
このお話自体はそれほど長くもなく内容も単純です :
梅雨のある日、朝からの雨模様で外に出られず、中庭の様子をじっと観察しているブルーノの目に飛び込んできたカエル、カタツムリ、アジサイの花、雨に濡れた葉っぱなどの様子や気持ちについて、ブルーノ目線で描かれています。やがて雨が止み、お日様が出てきて、友だちのトムが中庭に現れたのを見て「トム君といっしょに遊びに外に出よう!」と言って話は終わります。

「この後、ブルーノとトムはどこで何をしたでしょうか?グループごとにまず話し合ってください。
そして決まったら、その大きい紙全部を使ってお互い協力し合って絵を描いてください。」
と皆に向かって声がけをした瞬間、一斉に各テーブルから聞こえてきました :

「何することにする?」「どこで?」
「遊園地とかはどう?」
「中庭がいいなぁ~。」
「かくれんぼ?」「鬼ごっこ?」......etc.

数回前のクラスで、グループごとに紙芝居作りをしたときのことを思い出しました。あのとき、話し合うにも何についてどう話し合ったらよいのか誰もわからず、初めのうちしばらくの間、どのグループも沈黙でした。このままではらちが明かないと思い、話し合いを誘導しました。各グループの中に入り込んでヒントを与え、レールに乗せました。そうこうしているうちにも子どもたちは次第に自力で動き始めました。最終的には各グループとも、大変立派な作品に仕上がりました。
今回はというと、沈黙は一瞬たりともなく、さっと話し合いが始まったのです。真っ白の模造紙の上に、自分たちだけの力で何かを創り出すことは容易なことではありません。話し合うべき項目も、紙芝居のときと同様にいくつもあります :
1. 何を描くか、つまりブルーノが何をして遊ぶのか
2. 誰が何を描くか
3. トムは何色か
4. 模造紙のどこを空側(地面側)にするか
5. どこで遊ぶのか
6. 遊び道具の色、形など
7. 背景には何を描くか

子どもたちは真剣に話し合っていました。一人ひとりの話し合っている様子をしばらくの間見ていましたが、どの子もその目が真剣そのものでした。意思表示もしっかりとできていました。そして全体的に、上記の項目について、私に誘導されることはほとんどなく、自然なこととして議題に上っていたことは、期待以上でした。紙芝居のときの話し合いの場面がフラッシュバックされたのでしょうか。やはり一回でも経験が多ければ、その分子どもたちの心の中に記憶としてちゃんと残っているのだということを改めて確信することができました。

絵が完成し、皆で発表会を行いました :

「遊園地に出かけて行って観覧車やジェットコースターに乗る」
「空に出た虹が水たまりに綺麗に映り、その虹色の水たまりで遊ぶ」
「お花畑に出かけて行ってそこで鬼ごっこをする」
「中庭でかくれんぼする」
「野原に行って毛糸できたボールを転がして遊ぶ」
「町に出かけて行き、町に住む別の友達の家をたずねる」
「公園に行って鉄棒、ジャングルジム、滑り台で遊ぶ」
「空に虹が見えたので、トムとブルーノのどちらがより高いところに上って虹に近づけるか競争する」

まだたった5~6歳の子どもたちが、皆で意見交換し、知恵を出し合い、力を合わせた結果、「何もないところ」からこれほどすばらしい作品を創り出すことができたのです。
各グループの間で自然に生まれた「チームワーク」こそが、これほどの作品を生み出し得たのだと思います。
子どもたちは一歩一歩確実に前に向かって歩いています。

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