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週刊こぐま通信
「行動観察だより」

自由あそび「カプラをつかって」

第19回 2013/5/28(Tue)
こぐま会教務部長 廣瀬 亜利子
 今回のテーマは、4回毎に行っている「自由あそび」でした。
ステップAが去年11月中旬から始まって今回でちょうど真ん中地点に到達したことになります。
ついこの前始まったばかりと思っていたらいつの間にか前半戦終了です。月日が経つのは本当に早いものだなぁとつくづく思いました。子どもたちとの初めての出会いの日のことは鮮明に覚えています。あのときと今と、一人ひとり思い浮かべてみて、課題はそれぞれでスタート点も皆一様ではありませんでしたが、この半年の間に大きく変わったことは確かです。クラス全体としても本当に成長したなぁと、皆が遊んでいる様子を見ながら改めてつくづくそう感じました。

今回は、遊び道具をあちこちに配置したいつもの「自由あそび」もしましたが、いつもとはちょっと違う遊びも経験してもらいました。そして今回はそちらの活動を重点に子どもたちの様子を見てみました。

全体を5~6人ずつのグループに分けて、グループごとに「カプラ」という白木でできた木製の板状ブロックを300ピースずつ配りました :

「今日は、このブロックを使って遊びましょう。何かを作ってもいいし、ゲームみたいなものを考えてもいいし、何をして遊んでも自由です。ただし、グループで相談して皆でひとつのものを作るなり、遊ぶなりしてください。一人で好きなことをやりなさいという意味ではありません。何するのかしっかり相談してね。」

私の説明が終わるや否や、ほとんどの子どもが一斉に口を開きました :
「どうする?何する?」

これから先は、各グループでかなりの激論が繰り広げられました :

「お城はどう?」
「いつもお城ばっかりじゃない。つまんないよ。折角だから何か違うことしようよ。」
「じゃあたとえば何?」
「う~ん、ドミノ倒しにしない?」
「いいね~。」
「何の形作る?」
「クジラとかどう?」
「これ全部使ってクジラ作ると本当みたいにすごく大きいのが作れるね!」
「時間足りるかな?」
「そういうことは心配しなくていいよ。やろうよ、とにかく。」
「みんなで手分けしてやればできるよ。」
「じゃあ、私はしっぽのへん作るから、誰かからだ作ってね!」
「とりあえず並べていけば?あとでつなげればいいんじゃない?」
こういう会話を交わしながらもすでに一人ひとり手元のブロックを規則的に並べ始めました。中でも、数回前まで「自由あそび」の度に「つまんない。」とつぶやきながら一人皆に背を向けて座ったままでいた子が、この日は誰よりも張り切って率先して皆をまとめようとしている光景を目にし、予期してなかったところに宝物が出て来た!というような気持ちになりました。この子は前回の紙芝居の制作における話し合いのときから変化が現われ始めたのですが、今回、その子のコミュニケーション力は本物だということを確信することができてとても嬉しく思いました。

また別のグループでは、やはり一瞬目を疑う光景がありました。
最近ちょっとしたことで、クラスに参加することが重荷に感じてしまっていた子どもがいたのですが、初めのうちはあまり居心地が良さそうではなかったのですが、しばらく経ってそのグループに目を向けてみると、その子がどんどん意見を言って、しっかりとグループ全体を引っ張りまとめていたのです。

「こうやって、こうやって、ほらね、積んでいくのどう?」
「いいよ。」
「2人ずつになって、どれが1番高く積めるか競争しようよ。」
「2人組はどうやって決める?私はちゃんとがいい。」
「そういうのダメだよ~。となり同士でいいでしょ?!」
「うん。」
「じゃあ競争ね。」
「よーいドン!」
「早いのが偉いんじゃないってアリコ先生がいつも言ってるでしょ?!」
「競争は私もいやだから。」
「倒れないで高くできるか競争にしようよ。」
「それがいい!」

こうやってこのグループは2人ずつの3チームに分かれてそれぞれ同じ形の塔を黙々と作り始めました。だんだん高くなるに従って、より緊張感と集中力が高まっていったようでした。「そ~っとね。静かに置かないと。倒れちゃうよ、気をつけなきゃ。」とお互い声をかけ合っている姿が印象的でした。ピサの斜塔のようなすばらしい塔が3本完成しました。

どのグループを覗いても、相談の様子が真剣そのもので、また話し合いながらさらに話がファンタジーの方向に発展していったグループや、きわめて現実的なものを作り上げたグループまで実にバラエティに富んだものでした :

「何作る?」
「お城とかどう?」
「学校は?」
「私は町がいいな。」
「私はマンションがいい。」
「ホテルは?」
「じゃあどれにするかジャンケンしようよ。」
「じゃあホテルが勝ったからホテルね。」
「どういうホテルにする?」
「高いのがいいね。」
「そして温泉付きがいいな。」
「プールも作らない?」
「いいね~!」

という具合にこのグループは「温泉と温水プール付きリゾートホテル」を作るということでスムーズに意見がまとまったようでした。誰が何を受け持つかについてもとても上手に決めることができたようで、制作にはいってからもとてもテキパキとそれぞれが動いていました。

また、その横の別のグループは、一人の子が「町を作ろうよ。」と提案したことに残りが全一致で賛同し、その後次々に各自から出てくるアイディアが大変想像力豊かで、結果的に完全に非現実的なファンタジーの世界に落ち着きました :

「町作らない?」
「いいね~。町作ろう。」
「マンションとか普通の形じゃないほうがおもしろいよね?」
「そうだね。じゃあ、好きなように作ってよ。私は町にあるほかのもの作るから。」
「じゃあ、私は店作る。」
「私は道。まっすぐじゃないほうがおもしろいよね。」
「そうだ、ここは砂漠っていうのはどう?」
「砂漠に町?マンション建つかな?」
「私たちが作りたいもの作ればいいんだから。砂漠にマンション、いいんじゃない?」
「じゃあ、お店も砂漠ね?」
「だったらピラミッドの形の壁があるかもしれないからそれも作ろうよ。」
「いいよ!!」

このようにして、このグループは「ピラミッド型の巨大壁がシンボルになっている砂漠の町」を完成させました。

このほかにもいくつかのプロジェクトがありましたが、どのグループも本当にすばらしいものでした。完成したものそのものも、もちろん立派ですばらしかったですが、プロジェクトチームとして、そのチームワークが本当に素晴らしかったのです。誰か一人の意見に引っ張られてまわりがただ指示に従って動かされているという光景はどこにもみられなかったのです。これこそ、半年前に行動観察のクラスが始まったばかりの頃には決して見られなかった光景です。やはり、目に見えない分なかなか日頃そのような変化には気づきにくいのですが、子どもたちはいろいろな経験を積み重ねている間に、確かに成長しているのです。

そして、もうひとつ、この日の子どもたちの様子を見ていて私の子どもたちが幼い頃、お友だちと夢中になって遊んでいたときの姿が自然に浮かんできて大変懐かしい気分になりました。子どもにとって夢中になれること、無心になって遊びに没頭する機会が与えられることは絶対的に必要だと思います。今回は子どもたちを見ているだけで、私まで童心に帰ったような気持ちになることができました。

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