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週刊こぐま通信
「行動観察だより」

ジェスチャーゲーム、私は誰でしょう - 発表力・表現力を育てる -

第13回 2013/3/8(Fri)
こぐま会 廣瀬 亜利子
 今週から新たに3名の新メンバーが加わってステップCが始まりました。
はじめて教室に入ってきた3人の子どもたちは、その人数の多さと活気あふれる空気に圧倒されたのか、かなり怖気づいた表情を浮かべていました。その様子に気づいた「ベテラン組」の数人が、即座に新人の子たちに近づき話しかけていました :

「大丈夫よ。ここはね、自由に遊んだりみんなと何か作ったりするところなの。子どもらしく元気に楽しく遊ぶのが一番いいんだよって、いつも亜利子先生が言ってるよ。おふざけはダメだけどね!けじめをつけて楽しく遊ぶクラスだから。でも、あっという間にママたちが来ちゃうからそれがちょっと嫌なんだけどね。」
必要なことは全部、私に代わって子どもたちが言ってくれました。

今回は「発表する・表現する」をテーマに、「質問に答える」「私は誰でしょう」「動物模倣」と3つの課題を行いました。

はじめに「好きな絵本は何ですか?その本のどういうところが好きですか?」とみんなに向けて質問を投げかけました。その上で「今から一人ずつ聞いてみたいので、待っている間に自分の好きな絵本を思いだしておいてね。」そう声掛けをした瞬間の子どもたちの反応は2つに分かれました。答えるのが待てなくて「ハイ!ハイ!ハイ!」と早く言いたくて仕方のない子どもと、「どうしよう・・・思いつかない・・・」という表情の子ども。
順番が回ってきたときすぐに思い出せなくて答えられなった子が全体の3分の1ぐらいの割合でいましたが、その子たちのほぼ全員が、お友だちが発表しているのを聞いている間に思い出すことができたようでした。
もうひとつの質問は「今度の日曜日もしお父さまがお仕事お休みだとしたら、家族そろってどこに行きたいですか?あるいは何がしたいですか?」こちらの質問は、全員一斉にそろって「ハ~イ!」と手が上がりました。ディズニーランドからピクニックまでみんなの願望はさまざまでした。

続いて行った「私は誰でしょう」は、いわゆる3ヒントゲームですが、今回のポイントは、答えを当てることではなく、ヒントを出すほうにありました。一人ずつ順番に前に出てきて、箱の中から絵カードを1枚くじ引いて、何の仲間か、色、形、何でできているか、どういう時に使うか、どこにいるか(あるか)など、ヒントを3~4つ言ってみんなに当ててもらう、というものでした :

「私は食べ物です。赤いです。甘いです。」(イチゴジャム)
「イチゴ!」
「イチゴから作られたものです。」
「わかった!リンゴ?」
「リンゴはイチゴからできてないよ!パンにつけるの。」
「イチゴジャム!」
「正解!」

「私は飲み物です。」(牛乳)
「わかった!ジュース?」
「白いです。」
「カルピス?」
「ちがう。ん~~・・・牛からできています。」
「ステーキ!」
「だから~、飲み物!」
「あー、わかった! 牛乳だ!」
「その通り。正解!」

「私は野菜の仲間です。緑色です。丸いです。」(かぼちゃ)
「スイカ!」
「スイカじゃないよ。そんなに大きくないけど丸いところは似ている。」
「ピーマン?」
「もう少し大きいです。」
「え~?何だろう? メロン?」
「甘くないです。果物ではなくて野菜です。」
「きゅうり!」
「シンデレラに出てくる。」
「あ、わかった! カボチャでしょ?」
「ピンポ~ン!当たり!」

と、こういう調子で、答える側はもちろんのこと、ヒントを出す側も全員絶好調でした。
普段、みんなの前で話すのが苦手な子どもでも、絵とにらめっこしているうちに恥ずかしさはいつの間にか忘れて、そのものの特徴をみんなにわかってもらえるように伝えようと一生懸命になっている姿があり、非常に印象的でした。感心したのは、みんな実にヒントの出し方が上手だったことです。物の属性を正しくとらえ、それを言葉で正しく伝えることができていました。前に出てきてヒントを言う際にできるだけ緊張しないよう工夫はしたつもりですが、それにしても、ヒントを言えず黙り込んでしまう子が一人もいなかったことには本当に驚きました。

最後に「動物ジェスチャーゲーム」を行いました。これは「私は誰でしょう」のように言葉でヒントを伝えるのではなくて、くじ引いた絵の動物の真似をからだで行い、何の動物かをみんなに当ててもらうというものでした。
くじ引きの箱の中には、ウサギ、カエル、クマ、ペンギン、鳥、ゾウなど、比較的子どもたちにとって模倣し慣れているものから、タコ、ニワトリ、アヒル、サル、ウマ、さかななど、そうまだあまり模倣し慣れていないもの、できるにはできるけれど、人前で行うのはどうしても恥ずかしいものまで、さまざまなものが入っていました。自分で好きなものを選べるわけではなく、くじ引きで引き当てたものを真似しなくてはいけないという点が、子どもたちにとってはドキドキ感満載だったようでした。しかし、同じドキドキでも、いわゆる深刻に受け止めてしまって、どうしてもやりたくないと抵抗する子どもは一人もいませんでした。みんな、動物をからだで表現したいという前向きな気持ちは十分伝わってきました。はずかしくてできないと言って顔を真っ赤にしてモジモジしているような子どももいましたが、「羞恥心」はある意味自意識の成長とも言えるでしょうし、恥ずかしい気持ちが働くのは当然のことだと思います。そのような場合、私といっしょにやってみると案外恥ずかしさから逃れることができるものですので、今回も、恥ずかしい気持ちがいっぱいの子どもとはいっしょに行いました。これを何度か繰り返しているうちに、少しずつ「恥ずかしさ」を克服することができるようになっていくと思います。初めのうちから無理強いをしたくないです。いつか自分ひとりで頑張ってできたときに思いっきり褒めてあげたいからです。その子自身が自ら変わって行く力を認め、褒める、それが私の教育理念です。

今回のクラスで行った3つの課題 - 「質問に答える」「クイズ私は誰でしょう」「動物ジェスチャーゲーム」 - は、いずれもことばで、あるいはからだで自分の気持ち、考え、意思を伝える、あるいは表現するということがテーマでした。自己表現が自由自在にできるように越したことはないのは言うまでもありません。そして、こういう能力が生まれたときから備わっている子どももそうでない子どももいます。自己表現力は、育てることができる力でもあります。私たち教室はそのお手伝いをする場でもあります。こういう力は、ただ強制的に子どもに課題を強いてできるようになるというものでは決してありません。子どもたち自身が安心して取り組める環境を整えてあげること、表現すること、発表することが辛かったり苦痛であるという印象を与えてしまうと逆効果以外の何物でもありません。
ゲーム感覚で取り組める工夫をし、「楽しいこと」という印象を持たせることができるかどうかという教師側の技量にかかっているように思います。
第1ステップとしての今回、みんなかなり盛り上がって楽しんで取り組んでくれているようでした。はじめての参加で不安そうだった子どもたちも、いつのまにか大声を上げてクイズに参加していました。来週はどんな表情で入ってきてくれるか楽しみです。

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