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週刊こぐま通信
「合格者からのアドバイス」

合格者からのアドバイス(6)

2008/03/07(Fri)
こぐま会代表  久野 泰可
 来年受験される方に、どんな小さなことでも結構ですから、アドバイスをお願いします。

「最後の決め手は行動観察」(桜井先生著)という本がありますが、私も1年を終えて実感いたしました。5年間の家庭での育て方が、意欲・自信・思いやり・判断力など性格的なものを形成していくための、根であり幹であることは言うまでもありませんが、こぐま会での「表現・発表力クラス」「雙葉クラスの行動観察の時間」が葉を豊かに茂らせ、その子らしい実を実らせてくださったと感じています。
 娘が通っていた幼稚園は自由保育で、自分で考えて行動する力を養ってくれるという良い面がある反面、私立受験には不足している面もある幼稚園でした。米国育ちで、日本の礼儀作法・協調性を身につけることが不足している娘でしたので、特に力を入れてがんばるしかないと親が気合を入れても、集団の中でどう行動するかという点では、家庭でできることにも限界があり、先に挙げた2つのクラスで、娘は人間的に成長させていただいたと思います。
 集団の中で製作したり遊ぶ上で大切なこと、例えば、相談する時に参加すること、声を掛け合い楽しむべき時と、もくもくと集中すべき時の、メリハリを持ちT・P・Oに合わせた行動の取り方、おやつのいただき方やおもちゃの片づけにおける細かい点など、自然と身につけていただきました。それが、複数校合格という結果につながったのではないかと思います。
 ある学校で、5人で箱に絵を描く課題が出されたとき、2人の子どもが太陽から血を流した絵を、4つの面に描いたそうです。別の2人が不満そうに注意をし、娘は「栗のいががささっちゃったの?」と言った後、「時間がないから早く描かなくちゃ」と黙々と描き、最後に楽しく「大きな栗の木の下で」を歌ったそうです。本番の試験の行動観察では思いがけないことが起こるのですが、多少のトラブルにも動揺せず、堂々と自分らしさを発揮して楽しむ心の余裕と判断力を育てるためには、「表現・発表クラス」と、「指定校の行動観察の時間」は大変大切な時間であったと思います。

 過去問を見ると、難問奇問ではなく基本的な問題で、ペーパーを解いた量と合格は必ずしも比例しないと思います。いかにお母さまが分析・研究し、効率よく計画的に学習させるかが、最大のポイントですが、その苦労によって生み出された「5歳らしい経験をする時間」「自分で考える時間」が子どもを成長させ、それが本番の行動観察の時に合否に影響してくるように、周りの皆さんの合格からも、自分の経験からも感じています。

 このアドバイスから、受験生の皆さんに学んでいただきたいことがいくつかあります。その1つは「集団活動」の重要性です。これはたんに「行動観察」の対策という以上に、幼児期の教育は、学習も含め集団活動を通した経験が大事だということです。今、教育全体が「個別化」に向かう傾向にありますが、やはり基本は集団活動です。幼児期だからこそ子ども同士が学びあうチャンスを大事にしなくてはなりません。その活動の中で、自分の考えを発表したり、ほかのお友だちの良いところをまねたり・・・と教育のチャンスはたくさんあります。また、ここに書かれているように、実際の試験における行動観察では、予想もできない事態が起こります。その時どのように解決したら良いかは、大人が教えてできることではありません。自分で考え、自分で解決していく力は、さまざまな経験の積み重ねで育っていくものです。

もうひとつ大事な指摘があります。それは「過去問を見ると、難問奇問ではなく、基本的な問題で、ペーパーを解いた量と合格は必ずしも比例しないと思います」というご意見です。受験業界に蔓延する間違った考え方。その最大の間違いは、「入試だからともかく難しいことをたくさんやらせなくては合格できない」という考え方です。これは、商業主義に乗った業者からの、誤ったメッセージの結果だと思いますが、この方のご意見にあるとおり、過去問を見ればすべてわかります。極めて基本的な、根拠のある問題ばかりです。ふるい落とすための「難問奇問」は、一つもありません。私たちが、入試資料集を編集し多くの方に提供しているのも、実際の入試の正確な実態を知っていただきたいからです。

「事物教育」はやさしすぎて受験向きでないと言われているようです。同業者が生徒獲得のための宣伝に使っているようですが、こぐま会の教育の中身を知らない者が、事物教育とペーパー教育を単に比較して、そう言っているに過ぎません。私たちは、ペーパー学習を否定しているわけではありません。論理的な思考力を身につけるためには、ペーパー学習の前に、事物教育や対話教育をしなければいけないと考え、実行しているのです。受験向きでないというなら、毎年の合格者数を見て判断してください。どこかの塾のように、模擬テストに1回だけ参加した者を合格者数にカウントしているのではありません。5か月以上こぐま会の教育をしっかり受けた者の合格者数です。

本当に難しいことを理解させるには、基本をしっかり学習した後の応用学習ですべきです。その順序を無視し、最初から難問に取り組ませることなどできるはずはありません。基礎もできていないのに、難しいことを学習することが受験対策ではありません。合格を勝ち取るためには、基本をしっかり身につけ、柔軟な思考力を身につけることが大事です。

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