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週刊こぐま通信
「今何を学習すべきか」

位置表象基礎4 右手・左手の理解

2008/06/27(Fri)
 位置表象では、基本になる関係が3つあります。それは「上下関係」「前後関係」「左右関係」です。このうち「左右関係」が最も難しいのです。今回はこの左右関係でも最も基礎になる「右手・左手」の判断について、具体的な問題を通して考えていき、そこから左右の指導方法についてお話ししていきたいと思います。「ひとりでとっくん30 右手・左手」 の中に次のような問題があります。

右手を挙げている人にをつけてください。 (解答)
上段左から2番目、3番目の子、下段真ん中、右の子にをつける。

 左右関係が難しい理由は2つあります。1つは人間の体が左右対称にできているため、左右を判断していく基準になる自分自身の右手、左手がどちらなのかわからなくなることです。もう1つは、向かい合った時、自分の右手側には相手の左手があり、相手の右手、左手がわかりにくいことです。自分の右手・左手を理解することは、自分自身のことで、絶対的なものなのですから考えやすいのですが、相手の右手、左手については、相手の立場に立ってみるという、相対的な関係を考えていかなくてはならないため難しいのです。
この時期の幼児の思考の特徴は「知的自己中心性」と言って、自分の考え方にこだわってしまって、なかなか相手の立場に立てないのです。相手の立場に立って物が考えられるようになると、論理的思考力がついてきたことになります。したがって、この右手、左手を考えていく課題は、そうした論理的思考力を養っていく上では、非常に有用な単元であるということがいえます。
 さて、ここで右手・左手を判断する方法について考えていきましょう。この右手・左手の理解に限らず「地図上の移動」などの課題においても言える事ですが、左右関係を考えていく上で大切なことは、左右の判断は自分自身の右手・左手でするということです。この問題では、自分が絵の中の子どもと同じ格好をしたことをイメージして、そのとき挙げている手がどちらになるのかで考えます。上記の問題の上段右から2番目や下段右の子どものように、向こう側を向いている人は、今の自分と同じ向きですから考えやすいのです。ところが、こちらを向いている人や下段真ん中のように寝ている人はなかなかイメージしにくいものがあります。特に向かい合っている子を考える場合は、反対を向いているということをかなりしっかり意識しないと、間違えてしまいます。

 こうした問題を間違えないようにするにはどうしたらいいのでしょう。左右関係は、次の順序で指導して行っていくといいでしょう。

1. 子ども自身の右手・左手をしっかり覚える
2. お母さんやお父さんの右手・左手を判断する
3. ペーパーに描いてある人の右手・左手を判断する
4. 手から先の右手・左手、右足・左足、右に履く靴・左に履く靴などを判断する

まず1.の自分の右手・左手の判断については、年少児や年中児のときからでも意識してできることですから、早めに覚えていくといいと思います。右手左手を覚えるといっても、一度に両手を覚えることは難しいことですし、逆に混乱してしまうことになりかねません。ですから、まず右手だけを徹底して覚えて、その反対の手が左手であると考えるといいでしょう。
例えば、クレヨンを持って絵を描いているとき、どちらの手に持っているかを聞くこと、食事をしているときに箸をどちらの手に持っているかを聞くことなど、日常生活の中で右手・左手を意識させることはいろいろな場面で出てくるでしょう。しかし、これは利き手がどちらかということにも関係します。当然ですが、日常生活では、利き手の方を多く使います。ですから、左利きの子は右手ではなく、まず左手から覚えていき、左手の反対か右手だと覚えるといいと思います。
 右手をしっかり覚えたら、その反対が左手であると教えてください。そして、右手の方にあるものを「右~」、左手の方にあるものを「左~」ということを体の部分で覚えさせてください。これは「あなたの右目はどっちですか」「左足はどちらですか」と尋ねて、考えさせながら理解していくといいでしょう。

 今回はここまでにして、次回は2.以降の指導の仕方から考えていきたいと思います。

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