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週刊こぐま通信
「子どもはどこでつまずくか」(44)

描き方を教え込まれた絵ほど、つまらないものはない

2009年10月9日 回答
受験生の皆さまの学習相談に、こぐま会室長がお応えします。

【質問44】
 課題画がよく出題される学校を受験します。いわゆる受験絵画の指導は全く受けていませんので心配です。これから、どんな点に気を付けて、家庭で練習したらよいでしょうか。

 よく言われる受験絵画なるものがどんなものなのか、そもそも受験絵画なるものが存在するのかどうか。世間で言われている受験絵画とは、受験対策として描き方・色の塗り方等を指導されることのようですが、そんなものを学校側が求めているのかどうか・・・私はいささか疑問を持っています。入試で絵を描く課題は、どの学校でも・・・というわけではありませんが、その出題のされ方にはいくつかのパターンがあるようです。

  1. お話を聞いて、そのお話にあった絵を描いたり、そのお話の続きを絵で表す「話の絵画化」
  2. テーマを与えられて描く「指示絵画」
  3. 「紙芝居づくり」や「絵本づくり」など集団で相談しながら描く「共同画」
  4. 「魔法使いがいて、どんなことでも願いをかなえてあげます」というような場面設定で、その答えを絵で表現するような「想像画」
  5. 与えられた形を上手に使って、1枚の絵として完成する「形を使った創造画」

問題は、こうした課題画がどんな観点で評価されているのかという点です。この点についてはさまざまな議論があるはずですが、はっきりしていることは、学校側が絵描きの専門家を求めているわけではないということです。幼児期における描画活動の教育的意味と、どんな能力の基礎として何が求められているのか等を考えると、多分学校によって出題の意図ははっきり持っているはずです。ただそれを「創造力」とか「感性の豊かさ」とか言われてしまうと、わかったようでわからないというのが正直なところです。

1枚の絵に表現された能力をどう見るか・・・出題者に聞いてみれば一番早道ですが、それができない状況では推測するしかありません。

  1. 1枚の絵から、子どもの心の状況を読み取る
  2. 1枚の絵から「知的な発達」をチェックする
  3. 1枚の絵から、色塗りなどの作業能力をチェックする
  4. 1枚の絵と、言語的な補足によって、子どもの表現力を把握する
  5. 共同絵画によって、コミュニケーション能力や協調性を把握する

こうした、いくつかの観点を考えれば考えるほど、「描き方」を指導された絵ほどつまらない絵はないと感じてしまいます。いわゆる受験絵画と言われる指導で出来上がった絵が、心のこもらない、子どもらしさを失った絵になるのは、それを描く子どもの気持ちがこもっていないから当然と言えば当然です。それだけでなく、10枚以上の絵を並べて見れば、どれが形式を指導されて描かれた絵なのかはっきりわかります。そんな絵を学校側が求めているわけはありません。

色塗りのていねいさなど、作業能力を絵を通してみることは考えられますし、もし知的な発達を見るとすれば、空間認識ははっきり表れますからそれも可能だと思います。また、子どもの絵を見ると「心の状態」がよく分かります。緊張したり、何かつらいことなどあったりして心が解放されていない場合は、描く絵が小さくなってしまいます。とすれば、受験対策として家庭で絵を描くチャンスがあれば、次のように声をかけてあげてください。

  1. 描きたいものを、できるだけ大きく元気に描く
  2. その場にふさわしい、物事の位置取りをする(記念写真を撮るのではないから、人物全員が、こちらを向いていなくてもよい・・・などと伝える)
  3. 色塗りはできるだけていねいにする
  4. 1枚の絵は、10~12分で完成させる

そして何よりも、描くチャンスをたくさんつくってあげることが大事です。その積み重ねの上で、絵を描くことが楽しいと感じさせ、描くことに自信を持たせることが大事です。子どもが絵を描くことを嫌がるとすれば、それは周りの大人の厳しい評価が原因です。

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