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週刊こぐま通信
「子どもはどこでつまずくか」(8)

考えていることを言葉で表現することの難しさ

2008年12月26日 回答
受験生の皆さまの学習相談に、こぐま会室長がお応えします。

【質問8】
 具体物であれ、ペーパーであれ、答えの根拠を言葉で説明することの重要性を指摘され家庭でも実行していますが、なかなかうまくいきません。答えが正しく出せるのに理由が説明できないのはなぜなのか。本当にわかっているのか心配です。

 自分が思っていることや考えたことを言葉を通して相手に伝えることは、幼児にとってたいへん難しいことです。しかし、正確な言葉にならなくても身振り手振りを含めて、思ったこと、考えたことを表現することが不可能なわけではありません。大人のように誰にでもわかる言葉で説明するのは無理だとしても、答えの根拠を説明することは子どもなりにできるはずです。ですから、完璧な説明を求めず、子どもの言わんとしていることをよく理解してあげようという姿勢で臨めば、必ず答えは返ってくるはずです。子どもたちは日常生活で使っている言葉で説明しようとします。まだ一般性のある言葉は使えなくても、言わんとしていることはわかります。成長の一段階として受け止め、そうした表現も受け入れていく必要があります。その上で一般性のある言葉や言い回しとつなげてあげることが必要です。表現だけでなく、聞き取りや指示の理解についても成長段階にある子どもの現実として、何が難しいのか、その現実を指導者はよく見ておく必要があります。

たとえば、数の比較で「どちらがいくつ多い?」という問いに対して、「~が何個多い」と答えられても、同じ場面を今度は「どちらがいくつ少ない」と聞くと答えられない場合が出てきます。目に見えない数を聞いているため、目に見える少ない数全部を答えてしまうことが少なくありません。つまり、赤9個と青11個を比べた時、「青の方が2個多い」と言えても「赤の方が2個少ない」と言えず、「赤の方が9個少ない」となってしまうのです。また、「何個少ない」ということがわからない子に「何個足りない」といえばわかってくれます。「違いはいくつ?」と聞いても「違いってなんだろう?」と考え込んでしまう子も出てきます。

このように、概念を示す言葉は本当に難しいと思います。ですから、理由説明をするとなるとそれ以上に難しくなりますが、考え方がしっかり身についていれば、たどたどしくても子どもなりの説明はできるはずです。説明できない理由が、言語自体の難しさや慣れということよりも「考える力」が身についていないことからくるものであるとするなら、それは正さなくてはなりません。そのためには、考え方をしっかり身につけさせることです。使う言葉は目の前の現実をどう認識したかによって異なってきます。その認識を育てなくては、いくら難しい言葉をたくさん教え込んでも本当に身についたことにはなりません。最近文科省が盛んに言っている「国語を通して論理的思考力を育てる」という方針は、幼児期の教育を深く掘り下げてみていけばいくほど、大事であるということがわかります。

幼児にとって言葉で理由説明をすることは難しいことではありますが、その言語化の出来具合によってどこまで深く認識できているかも判断できます。その意味でも根拠を説明する経験は、できる限りチャンスを見つけて実行してください。

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