週刊こぐま通信
「室長のコラム」第15回目の女子校合格フェアが行われました
第673号 2019年5月10日(金)
こぐま会代表 久野 泰可
こぐま会代表 久野 泰可

4月21日から始まり、10連休を使って行われた15回目の「女子校合格フェア」も、5月19日の聖心女子学院初等科の校長をお迎えして行う特別講演「聖心の求める子ども」を残して、ほとんど終了しました。今回のテーマは、「学力だけでは決まらない~合否を分ける行動観察~」とし、小学校受験でいま重要視されている「行動観察」に焦点を当てた、さまざまなセミナーや講座を行いました。
基調講演に先立って行われた4月21日の「願書・面接対策セミナー」では、実際に願書添削や模擬面接を担当する進路指導部の責任者から、これまでの経験を踏まえ、願書の書き方や面接時での注意すべき点を具体的にお伝えしました。その中でぜひ実践していただきたいことを次のようにお伝えしました。
ノートを1冊用意する。そこに次のようなことを書きとめておく
- 毎日1日の終わりに子どもの様子を振り返り、メモを取っておく
- 学校説明会の印象をメモしておく
- どういう人になってほしいかを夫婦で話しあい、それをメモしておく
4月28日に行われた基調講演「学力だけでは決まらない~合否を分ける行動観察~」では、最近の入試における学校側の変化や受験する保護者の学校選びの多様化をお伝えし、その背景にある考え方の変化について触れました。それは、2020年から行われる教育改革と無縁ではありません。その上で、最近の入試問題を具体的に分析し、考える力が求められる問題が何を求めているのかを明らかにしました。また、今年のテーマである「行動観察」重視の背景を分析し、準備のために行っている「望ましいとされる表現型」を教え込む塾のやり方が、学校側から批判されている現状をお伝えし、子育ての総決算として入試を捉えてほしいという学校側の意図を解説しました。
- 第15回 女子校合格フェア
基調講演「学力だけでは決まらない ~合否を分ける行動観察~」 -
- 1. 入試の現状
- 2019年度入試 女子校10校の応募状況・倍率
- 変わりつつある小学校入試の現状とその背景
(1) 学校側の対応の変化
(2) 受験する保護者側の意識の変化
(3) 合否判定と補欠合格の動き - 入試問題はどのように変わってきているか
- 行動観察および面接重視の背景
- 2. 入試問題の分析
- 学力の基礎として考える力が求められている
- 新傾向の問題
- 3. 具体的な学習法の紹介
- 飛び石
- 交換
- 言葉づくり・言葉つなぎ
- 4. 最後の決め手は行動観察
- 行動観察とは一体どんなテストなのか
(1) 特徴的な行動観察の内容
(2) 具体的な出題例
(3) 実際の行動観察でどんなことが起こるのか - 何が評価されるのか
(1) 何かが「できた - できない」で評価はされない。取り組む姿勢が問われる
(2) よく言われる「非認知能力」とは一体何なのか - なぜ、行動観察が重視されているのか
(1) 行動観察は願書面接とセットで評価される
(2) 行動観察は親の試験である - 子育ての総決算としての入試
(3) 今の学力ではなく入学後学力が伸びていくために必要なこと - 行動観察の対策
望ましい「かたち」を教え込むことではない。
集団活動の経験を蓄積し、自分で考え・自分で判断し・行動できるようになってほしい。
- 行動観察とは一体どんなテストなのか
4月28日の午後には卒業生の保護者の方を4名お迎えし、「一問一答インタビュー 合格者からのアドバイス」と題して、どのような学習方法で合格を勝ち取ったかをインタビュー形式でお話しいただきました。進行役が1年間をいくつかの時期に分け、それぞれの時期にすべき大事な対策をどのように行ってきたかをお聞きしました。
- いつから準備を始めたか
- 志望校を選択するにあたり、具体的に何をしたか(説明会、オープンスクール)
- 何を重点に置いて志望校を選択したか
- 4月末まで(基礎段階の学習:ステップ4まで)
- 1週間の大まかなスケジュール
- 1日の流れ - 平日と週末 それぞれの過ごし方
- 父と母の間で役割分担があったか
- 復習の仕方 - どのような家庭学習をしたか 振り返り方
- 家庭での学習において、分からないことを分かるようにするために何か工夫をしたか?具体的に
- 家庭での1日の学習時間
- 習い事は継続していたか
- 遊び時間の確保
- 5月~7月 夏季講習会前まで(応用段階の学習:ステップ5~)
- 応用段階に入ってからの1日の学習量の変化
- ペーパーの枚数
- 家庭学習の仕方、工夫など具体的に
- 1日のスケジュール
- 生活面で特に気をつけたこと
- 学習と遊びをどのように両立させたか
- 説明会、幼稚園、保育園の行事などとの両立
- スランプに陥ったことは?
- あったとしたらどのように克服したのか
- 日課として毎日行なっていたことはあるか
- 夏休み
- 過ごし方
- 講習会の活用、取り方、1日の学習量 - 講習会がある週、ない週
- 夏休みの思い出づくり
- 学習以外に意図的にしたことで特にお奨めのこと
- 願書・面接準備
- 9月~(入試直前2カ月)
- 学習面 - 基本に戻ったのはいつ?
- 子どもに対して特に気を使ったこと
- 家庭生活において気をつけたこと
- 面接と願書について - 当日のことでいくつか質問
- 子どもが日常生活をいつも通りに過ごせるように気をつけたこと
- 直前の注意点
- 直前1週間について - 学習面と生活面
- 前日どのように過ごしたか
- 当日 - 服装、交通手段、声掛け
- 入試を振り返って
- 入試を経験して得たこと
- しない方が良かったと思うこと、する必要なかったと後で思ったこと
- これからの方にアドバイス
- 在校生として
- 「この学校で良かった」と改めて思う点
- 実際の学校生活についてもしお伝えいただけることがあれば
- その学校に合格するために身につけておくべきこと - 保護者の目から見て感じること
- その学校に求められる子ども(本質的な要素)
- 保護者の立場からその学校のアピールポイントは?
などにお答えいただきました。実際に経験された方々からのお話は、これから受験される皆さまにはとても参考になったのではないかと思います。また、入学後の学校の様子もお伝えしていただき、とかく閉ざされがちな学校情報を得る貴重な時間だったと思います。
4月29日から5月2日の休みを挟み、フェアは5月3日から再開しました。5月3日と4日の両日に、女子校10校の「学校別合格対策セミナー」を行いました。既に昨年の12月に2019年度入試結果報告会を行い、今年1月と2月には、学校別に2019年度の入試問題分析を行っています。そのため、今回は過去10年間の問題を分析し、よく出される領域の問題を「予想問題」として、今年受験する皆さまにお伝えしました。10年間の問題の流れを見ると、その学校の入試問題の傾向が分かります。それを分析し、合格のために必要な学習項目を具体的な問題を通してお伝えしましたが、現在の入試においてはそれだけでは足りません。その学校で一度も出されたことのない問題が突然出されることがあります。しかし、根拠のない問題ではありません。現在の入試全体でよく出される問題です。例えば、つみ木を使った四方からの観察、交換、言葉づくり、回転推理・・・こうした問題が多くの学校で出されているのには理由があります。それは、ある学校で新しく出された問題が他校にすぐに波及するからです。新しい問題を作りたいと考えている入試担当の先生方は、他校の新しい問題に影響を受け、同じ趣旨の問題を作ろうとします。それが波及すると、新傾向の問題として多くの学校の問題づくりに影響してくるのです。例えば、現在多くの学校で出されているつみ木を使った四方からの観察は、明らかに慶應義塾横浜初等部で開校初年度の入試で出された影響にほかなりません。こうした現状を考えると、その学校の過去問だけでなく、現在入試で出題されている新傾向の問題にも取り組んでおかなければなりません。
5月5日には、来年秋以降に受験する年中児の皆さまを中心に「年中からの受験対策」として、これからどのような考え方で入試対策に臨んでいただきたいかをお話ししました。
- 第15回 女子校合格フェア
正しい受験法「年中から始める小学校受験対策」 -
- 1. 入試の現状
- 学校側の変化
- 受験する側の変化
- 2. これからの入試で、学校が求めるもの
- 考える力が身についているか
- 集団活動において、物事に主体的に取り組めるか
- 自分で考え、判断し、行動できるか
- 3. 間違った受験対策にならないために
- 形を教え込んではならないという学校側からの警鐘
- 教え込みはしない
- 考える道筋を大切にした系統性を踏まえた学習を
- 学習の始まりが「過去問対策」では、子どもの考える力は身につかない - 聞く力・考える力・作業する力をどう身につけるか
- 4. 年中からの受験対策
- 学ぶ内容を明確にし、系統化する
(1) セブンステップスカリキュラム - 6領域×7段階の指導
(2) 考える力を育てる10の思考法ものごとの特徴をつかむ/いくつかのものごとを比較する/ある観点に沿って、ものごとを順序づける/全体と部分の関係を把握する/観点を変えてものごとを捉える/ものごとを相対化してとらえる/逆に考える/あるものごとを、ひとまとまりにして捉える/規則性を発見する/AとB,BとCの関係から、AとCの関係を推理する - 学ぶ方法を子どもの理解の道筋にあわせる
(1) 事物教育
(2) 具体から抽象へ・基礎から応用へ
(3) 3段階学習法
(4) 対話教育 - 行動観察の評価は親の責任でもある その意味で子育ての総決算と考えるべき
- こぐま会の取り組み - 入試までの指導の流れ
- 学ぶ内容を明確にし、系統化する
現在の入試で求められている能力を分析し、これから1年半続く入試対策のための学習をどのような考え方で進めたらよいかを、具体的事例に即してお話しさせていただきました。学習の始まりが過去問練習にならないように、系統立てられたカリキュラムに基づいて、しっかりとした積み上げの学習をしていくようにお伝えしました。1年後にできればいいものを、1年前に前倒しでやってもできないのは当然です。過去問を素材にするのではなく、過去問レベルの問題ができるようになるためには、どのような道筋をたどっていけばいいのかを考えた学習を進めるべきです。そのために必要な学習の手立てを、6領域のセブンステップスカリキュラムで示し、また考える力を育てる10の思考法について詳しく解説しました。
5日の午後には、今重要視されている「行動観察分析セミナー」を行いました。行動観察が重視されている背景や、どんな課題が課せられているのか、また学校側はどんな評価観点で子どもたちを見ようとしているのか・・・などについて、日ごろから行動観察のクラスを担当している教師からお伝えいたしました。小学校の入試対策で一番分かりにくいのは、行動観察の対策です。しかし、何度もお伝えしているように、形を教え込まれた子どもたちは、時に異常とも思える行動をとります。教えられてきたとおりの「型通りの」対応しかできず、自分で考え、自分で判断し、自分で行動できる人間からは一番離れた存在になってしまいます。見た目の素晴らしさだけを教え込まれてきた子は、実際の場面になるととても浮いた存在になってしまい、いい意味での子どもらしさが消えてしまっています。教える大人が好ましいと判断した「型」がいかに意味のないものか・・・実際の場面に立ち会うとすぐに分かってしまいます。
「ねえみんな、どんなものを作ろうか、私はお城がいいんだけどみんなはどう?」・・・とそこまではいいのですが、その後が続かないのです。「みんなはどう?」と聞きながら、ほかの子どもたちの言っていることに何も耳を傾けず、自分の考えを押し通すようなまったくちぐはぐな行動をとるのです。教えられたとおりに行う劇の練習をしているのではありません。その都度自分で考え判断できなければ、何のための行動観察なのでしょうか。そうした子どもたちの行動はすぐに見破られ、結果として合格できていません。こうした子どもたちをたくさん見て来た私たちは、「型」を教え込む間違った行動観察の指導を絶対に受けてはならないと警告を発しています。
このほか、両親模擬面接や学校別相談ブースでの進路相談・学習相談も行いました。
「学力だけでは決まらない~合否を分ける行動観察~」として5日間にわたって行った第15回女子校合格フェアは、子ども向け講座も含め、総勢述べ980名の皆様に参加していただき、無事終了いたしました。あとひとつ残っているセミナーは、5月19日に行われる聖心女子学院初等科校長先生による特別講演「聖心の求める子ども」です。こちらも大変多くの方にお申し込みいただき、すぐに満席となってしまった講座です。