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週刊こぐま通信
「室長のコラム」

数の学習総まとめ

第643号 2018年9月28日(金)
こぐま会代表  久野 泰可

 9月第2週から始まった最後の総まとめの授業は、「未測量」「位置表象」と進み、今週は「数」の領域の総まとめを行いました。「数」に関しては、小学校入試でもよく出題され、思考力が一番求められる領域です。小学校の算数科の基礎として、また入試問題への対策として、私たちがこれまで行ってきた数の学習課題は以下のとおりです。
  1. 計数・同数発見
  2. 数の構成
  3. 分類
  4. 一対一対応
  5. 等分
  6. 一対多対応
  7. 包含除
  8. 数の増減
  9. 数のやりとり
  10. 交換
  11. 植木算的思考・消去算的思考など

算数科の基礎として考えた以上の内容は、すべて数式を使わず、具体物やカードを使い、暗算能力を高めた上で、最後にペーパートレーニングで点検します。ペーパーで求められるすべてのことは、すでに具体物やカードを使った学習で行っているわけですから、ペーパーができなければ、そこに戻れば良いわけです。数式を使わないで行う指導ですから、逆に数式を使えば、スムーズに小学校の内容につないでいけるわけです。決して入試に出るからやるのではなく、算数の基礎としての内容を考えれば、以上のような内容になります。それが応用されて入試問題になっていくわけですから、基礎教育を徹底させれば、そのことがすなわち入試対策になるのです。こぐま会の教育はともすると入試のための特別訓練だと受け止められている場合が多いのですが、それは間違いです。入試があろうとなかろうと、上に掲げた内容は将来のために必要な学習です。

今週行った最後のまとめの授業は、上の課題を意識しながら、10枚のペーパーをテスト形式で行いました。録音音声を流して行うと大体25分程度で終わります。現在の入試においては、ペーパーテストで使う枚数は8枚~12枚ぐらいがほとんどです。ですからペーパートレーニングは、10枚程度を30分かけて集中して行う方法が一番入試の現状に合っていますし効果的です。一度に1時間も2時間もペーパーに取り組ませるような方法は子どもの発達(集中力)に合っていないばかりか、現実の入試にも合っていないやり方です。

さて、今回の授業で行った学習は以下の10枚です。

  1. 数の構成
  2. 数の等分
  3. 数の総合問題-1
  4. 数の総合問題-2
  5. 数の多少とその応用
  6. 一対多対応とその応用
  7. 数の増減とその応用
  8. 数のやりとり
  9. 交換・置き換え
  10. 消去の考え方

最後のまとめですから、基本問題を中心に行いましたが、最後の3問はかなり考える力が要求される問題です。

問題を作成する立場から、それぞれの問題に込めた狙いは、
  1. 「数のやりとり」の問題は、考え方がパターン化しないように、おはじきの取り方のルールを変えてみる
  2. 「交換」の問題は、難しくさせる要素である、1種類のものが2種類のものと交換できるという約束を入れる
  3. 小学校高学年で行う消去算の考え方につながる最後の問題は、買ったものの数と値段の違いがなぜ生じるのか・・・その違いに気づくところから問題解決の糸口をつかめるかどうか
こうした意図を盛り込んで、入試で一度も出されたことのない問題に取り組ませることでそれまでの学習で身に付けてきたことを活かせるかどうかのチェックもしています。
数式を使って四則演算の世界に導く前に、こうした問題を筋道立てて解かせることが、算数的思考を育てることにつながっていくわけです。それは、入試に出る - 出ないに関係なく、幼児期の今こそ挑戦させるべき課題です。

最後の問題を少し解説しましょう。

消去の考え方
上のお部屋を見てください。
動物村の果物屋さんに、ウサギとクマが買物に来ました。ウサギはリンゴ2個とミカン1個を買って、ドングリ5個を払いました。クマはリンゴ2個とミカン2個を買って、ドングリ6個を払いました。
クマの方がドングリを1個多く払っていますね。
  1. ミカン1個の値段は、ドングリいくつでしょうか。その数だけミカンのお部屋に青いをかいてください。
  2. リンゴ1個の値段は、ドングリいくつでしょうか。その数だけリンゴのお部屋に青いをかいてください。
  3. リンゴ3個とミカン2個の値段は、ドングリいくつでしょうか。その数だけ1番下のお部屋に青いをかいてください。

この問題は、消去算の一番基本である次のような問題と考え方は同じです。

ノート2冊と鉛筆3本で390円です。ノート2冊と鉛筆5本で490円です。
それでは、ノート1冊と鉛筆1本の値段はそれぞれいくらになりますか。

消去算は、買ったものとその値段の関係を見て「なぜ値段の違いが生じるのか」という視点から解決の糸口を探し、それぞれの値段を考えるものです。今回の問題で求められているのは、
1. ミカンの値段 2.リンゴの値段 3.リンゴ3個とミカン2個を買った時の値段はいくらかの3つです。

答え合わせの際、ミカンの値段を説明するときに子どもたちが注目していたのは、「ミカンが1個増えるとドングリが1個増える」ということでした。「だから、ミカンの値段はドングリ1個」と、こたえてくれました。「違いは何か」「その違いがどうして生じるか」というような見方は、多くの子どもたちができていました。

ミカンの値段がわかった段階で、次にリンゴの値段を考える際、最初の例示を見て「ミカン1個がドングリ1個ならば、リンゴ2個は、ドングリ4個になり、半分の2個がリンゴ1個分の値段になる」・・・と迷いなく答えてくれます。5~6歳児が、これだけ筋道立てて考えることができるのは、これまでの学習の積み上げがあったからにほかなりません。数式は使えませんが、考え方で解いていくこうした問題であれば、幼児でも取り組むことが可能であるということは、現場の人間は知っておくべきです。片方のミカンが分かれば、もうひとつのリンゴの値段も分かると考えることができるのです。

最後の「リンゴ3個とミカン2個はドングリいくつ分ですか」を解く場合、2つのやり方が見られました。リンゴ1個とミカン1個の値段がわかっているから、それぞれをリンゴ3個とミカン2個に当てはめて考える場合と、リンゴ2個とミカン2個はドングリ6個とわかっているので、それにリンゴ1個分を加えれば8個になる・・・という具合です。子どもたちの取り組みを見ていると、考える力の成長を感じます。

ところで、最近の数の問題は生活の一場面を使った数の総合問題として出題されることが多く見られます。例えば、次のような問題です。

数の総合問題
太郎君と花子さん、メガネをかけた次郎君が、山へハイキングに来ました。秋なのでキノコやクリの実や木の実がたくさんあります。
  1. 右側に落ちているクリよりも、2個多いクリが木の中に隠れています。木の中には何個のクリが隠れていますか。その数だけクリのお部屋に青いをかいてください。
  2. 3人はここにあるキノコを2個ずつ採りました。キノコはいくつ残っていますか。その数だけキノコのお部屋に青いをかいてください。
  3. 3人はここにあるリンゴを全部もいで持って帰りました。帰ってから、ハイキングに来れなかった京子さんも入れて、4人にケンカしないように分けることにしました。リンゴは1人いくつもらえますか。その数だけリンゴのお部屋に青いをかいてください。

これまでの数の問題は、単元ごとに1枚のペーパーになっていたものが、最近は1枚のペーパーで数に関するさまざまな問題が問いかけられています。そのため、指定された問題を解くために、どこの部分の数を見ればいいのかの判断もしなければなりません。その意味で、数といえども作業能力が相当求められています。単純な受け答えではなく、作業能力が求められたり、論理が求められたりする問題が今後増えていく可能性は非常に高いと思います。

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