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週刊こぐま通信
「室長のコラム」

来年秋に入試を迎える方へのメッセージ

第597号 2017年10月20日(金)
こぐま会代表  久野 泰可

 6月から行ってきたセミナー「年中から始める正しい受験対策」の第4回目を10月15日に実施しました。今回は同時に年中児40名を対象として、受験対策のスタートにあたってこれから進める学習のレディネスがどれくらい身に付いているかを確認するチェックテストも行いました。物理的条件で40名しか受け入れができませんでしたが、受付開始15分で満席になる程チェックテストへの希望は多く、1年後に入試を控えた皆さまの意気込みが伝わってきます。保護者の方のみのご参加も35名程いらっしゃいました。「新傾向の問題に強くなる家庭学習法」と題した今回のセミナーでは、実際に入試で出された問題の分析を行うとともに、最近行った模擬テストや「ひまわり会」講座での子どもの取り組みの様子を分析し、何が難しいのか、どうしたらそれを解決できるのかを、以下の内容でお伝えしました。

年中から始める正しい受験対策
「第4回 新傾向の問題に強くなる家庭学習法」
1. 子どもの学力の現状
a. 第4回「聖心模試」の結果から見える子どもの弱点
b. ひまわり会「つみ木問題」に見られる学力差の背景
2. 新傾向の問題とは何か
3. どのような学習法が必要か - 具体的な問題に即して
a. 交換
b. 飛び石
c. つみ木による四方からの観察
4. 現在の入試で求められる能力とは
a. 1回の指示を正確に聞き取る
b. 指示通りに作業し、答えを導き出す
c. 行動観察時におけるコミュニケーション能力
5. 望ましい学習法
a. 事物教育によるアクティブ・ラーニング
b. 対話教育による「言葉で考える」トレーニング
6. これから1年間の学習計画
a. 11月~4月まで : 基礎学力の育成
b. 5月~7月 : 応用学力の育成・過去問対策
c. 8月~9月 : 予想問題総合演習
d. 10月 : 総まとめ・基礎事項総点検
7. 本日のテスト問題の解説

新傾向の問題については、第3回目のセミナーでも少し触れましたが、実際に入試で問われる能力がどのようなものなのか、本当にペーパーだけのトレーニングでよいのかどうかを、具体的な問題を通してお伝えしました。最近の出題傾向は、いくつかの観点でまとめることができますが、ぜひ押さえておかなければならないのは以下の点です。

  1. 知識やパターンで覚え込んだ解き方でできる問題はほとんどなくなり、考える力を求める問題がほとんどである
  2. その方法として、指示の聞き取りを正確に行い、作業を通して答えを導き出す問題が多い。この作業能力を支える論理的思考が問われている
  3. ある学校で出された新しい課題が、翌年他の学校に波及する。それが新しい傾向をつくり出している。そのため、受験する学校の過去問練習だけでは対応しきれない
  4. 非認知能力を求める課題が、行動観察として出されている

こうした動きは、10年前には予想もできなかったことです。それだけ、入試の傾向が変わりつつあるということです。にもかかわらず、相も変わらず過去問をペーパーだけのトレーニングで済まそうとする対策がはびこっています。現在の入試を冷静に分析すれば、そんな対策で対応できるほど単純ではありません。子どもの力を正当に評価するために、学校側は相当力を入れて問題の作成に取り組んでいます。この現実から学ぶ姿勢が足りません。10年前と同じ方法では手遅れなのです。そこを理解していただくために、こうしたセミナーを開催してきているのです。

新傾向の問題の中から、特に最近の傾向である「交換」「飛び石移動」「つみ木を使った四方からの観察」を選び、どこで子どもがつまずくか、それを乗り越えるためにどんな基礎学習をしたらよいのか、過去問を自分の力で解けるようにするためにはその基礎としてどんな学習をしたらよいのか・・・そんなことを具体的にお伝えしました。

1年後に問われる難しい問題を、1年前の今解けないのは当然です。解き方を教え込んでしまえば一見できるようになりますが、それは本当に理解したことにはなりません。その証拠に、類似問題を解かせたり、解き方を説明させてもできないのです。教室での子どもたちの取り組みを見ていると、間違いの原因が一番やさしい基礎の部分にあることが良く分かります。

  1. 「交換」の問題ができないのは、一対多対応や包含除といった、かけ算・わり算の基礎が分かっていないからです
  2. 「飛び石移動」の問題でつまずく子は、一番基礎となるコマの動かし方ができないからです
  3. 「つみ木を使った四方からの観察」ができないのは、右手・左手の理解や、具体物を使った四方からの観察ができていないからです。そして、平面に表現された立体物がイメージできないからです

このように、難しいとされる課題ができないのは、考える力がそのレベルに到達していないのではなく、明らかに基礎とされる部分がしっかり身に付いていないからです。そのためには、基礎が何で応用が何であるかをしっかり捉え、その基礎の部分を、少なくとも年長の4月頃までは徹底してやらないといけないのです。過去問はそれからです。こぐま会では、5月の連休明けから過去問に本格的に取り組ませます。それまでは徹底して基礎を鍛えます。そのことが、どんな問われ方をしても自分の力で解いていける力の源になるのです。問題は指導者が難しい課題の基礎が何であるかが分かっていないところにあり、その結果、結局過去問に頼ってしまうところにあるのです。子どもが物事をどのように理解し、どのように解決していくか・・・そこが掴めていなければ、基礎から応用への学習は組み立てられません。過去問をやっていれば保護者の方は安心しますから、教師は楽なのですが、子どもの理解がそれについていかなければ、教育として意味をなさないのです。そのことは、保護者の皆さまも薄々理解しているはずです。「難問~」とした講座が最近不人気なのはその表れで、「難問」さえ冠していれば人が集まった時代は終わり、ごまかしのきかない時代になったのです。

入試問題の8割は基礎的な問題です。残りの2割のために、1年間かけて教え込みのトレーニングを行い、その結果「難しい問題はできるのに、基礎的な問題で点が取れない」といった逆転現象が起こるのです。子どもが主体的に物事に取り組む姿勢を身につけているかどうかが、これからの入試で問われる基本になって行くことは確実です。だからこそ、教え込みの教育を排除して、基本を徹底する基礎教育に時間をかけるべきなのです。

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