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週刊こぐま通信
「室長のコラム」

今、どこで差がついてしまうのか (2)

第541号 2016/8/5(Fri)
こぐま会代表  久野 泰可

 前回のコラムで、6つの領域のうち、未測量・位置表象・数の3領域についてお伝えしましたので、今回は、図形・言語・生活 他の領域について子どもたちの現状を報告いたします。

(A) 図形
1. 図形構成
基本となる三角パズルについては、相当練習してよくできているが、大小2種類の三角を使った構成になると、どこに大きな三角を使えばよいかを理解できない場合が見られる。また三角以外の形を構成する課題になると慣れの問題か、かなり個人差が出る。
2. 対称図形
折り紙を折って切ってできる形を予想する問題はよくできるが、逆に、できあがった形を見てどこをどのように切ったらよいかを判断する問題になると、相当の個人差が出る。逆の問いかけも必ずあるということを踏まえ、実際に切ってみるところまでは徹底したい。また、二つ折りの長四角、四つ折りの真四角から形を切る課題はできても、四つ折りの三角から切ってできる形をイメージする問題は、多くの子どもがまだできない。また、半分に折って重なるように残り半分を描く問題は、斜めの線が使われた場合、方向についての理解で間違うことが多い。
3. 重ね図形
2つある重ね方のうち、半分折りの重ね方が難しい。また、複数のものが真ん中に重なる、展開図のような重ね図形は、予想した通り難しい。動く面と動かない面を区別して対処することが大事。
4. 回転図形
回転の要素はいろいろな問題に組み入れられているが、イメージ化がかなり難しく、今の時期にも差がみられる。実際にカード化した物を回してみる等の実物を使った練習をして、回転のイメージ化を図ることが大事。
(B) 言語
1. 一音一文字の応用
以前は「しりとり」がほとんどであったが、最近はそれに加え、「言葉つなぎ」や「言葉づくり」が多くの学校で出されている。言葉つなぎは、聖心女子学院初等科で出された問題が発展し、また「言葉づくり」は、学習院初等科で出された課題が発展した形になっている。次第に難しさを増し、以前は出されなかった一音一文字の課題が、今や必須課題になっている。いろいろに応用されるが、基本は「いくつの音でできているか」、「どこに何の音がつくか」といった、一音一文字の考え方の基本がしっかりできているかどうかが問われている。
(ア) しりとり
ルールの理解が問われたり、前に戻ったりする課題になると差が出る。
(イ) 言葉つなぎ
下から2番目の音でつないだり、真ん中の音でつないだり・・・学校によっていろいろ工夫されているが、つないでいくうちに「しりとり」と間違えてしまう子が多くみられるので要注意。
(ウ) 言葉づくり
以前は、最初の音を組み合わせて別な言葉をつくるという課題がほとんどであったが、最近では、最後の音や真ん中の音といった具合に、必ずしも最初の音でない場合が多く、それが難しい理由になっている。どこに何の音がつくかを素早く見抜く練習が必要。
2. 話の内容理解
質問される内容が、これまでのように「登場人物」「順序」「数」「登場人物との関係づけ」だけでなく、さまざまな領域の問題が出されるようになってきている。特に、関係推理・数の操作・地図上の移動・私は誰でしょうのような問題が多い。しかし、これからはすべての領域の問題が出されてもおかしくないので、そうした練習を積み重ねることが大事。「聞く力」が、相当重視されていることが分かる。特に数の変化に関する表現には注意が必要である。
(C) 生活 他
1. 回転推理
回転に関しては、さまざまな領域でそのイメージ化が問われているが、なかでも、回転位置移動・回転図形が良く出される。また、観覧車や回転テーブル・ルーレットは、質問の内容によって、同じ方向に同じ数だけ移動させる場合と、逆方向に同じ数だけ戻る場合とがあり、その2つの方法が混乱を起こす場合が多い。なぜ逆に戻すか、その理由をしっかりつかめば混乱することはない。機械的な教え込みだけでは「なぜ」に答えられない。自分で「法則性」を見つけ出す試行錯誤が大事。
2. 魔法の箱
最近は数の変化だけでなく、位置や図形的な要素の変化も入り込んできたが、「どのように変わっているか」を言語化させることが大事。その上で、複数の箱を連続して通過していくような問題にも挑戦させる必要がある。特に間違いの原因は、最初の変化で「どのように変わっているか」を決めつけてしまうことが多く、2つ目の変化をしっかり見抜くことが大事である。
3. 常識
多くの学校で毎年出されるようになってきたが、その内容は多岐にわたっている。図鑑的な知識が求められる場合もあるが、ほとんどが生活の中で経験することが問題づくりのベースになっている。自然や社会に対する関心を高め、いろいろな経験を積むことが必要である。最近は、かなり細かいところまで聞く問題が多く、その多くが経験の有無を問う問題になっている。どんな問題が出されているかは問題集で確認する必要がある。

以上、この夏休みに担当した講座でみられた子どもたちの弱点をお伝えしましたが、実際このような課題で、「できる」「できない」の差がついていくはずです。ここをしっかり掘り下げないで、何となくただたくさんのペーパーをこなせば良いと考えて行っていたのでは、いつまでたってもこの「差」のつく問題は解決しません。相当課題を絞り込んだ練習が必要です。

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