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週刊こぐま通信
「室長のコラム」

論理性の芽生え

第48号 2006/03/02(Thu)
こぐま会代表  久野 泰可

 2月23日で46歳になった皇太子さまが、誕生日の記者会見で語った愛子さまのご成長ぶりについて、アエラの記者から感想を求められました。力士の名前を覚え、ひらがなで書いたり、神経衰弱をしたり、野菜作りをしたりする愛子さまの様子について4歳のこどもの発達としてどうなのか、コメントを求められたのです。

 私自身が実際に教育の現場でみているわけでなはないし、あれができるこれができるといっても、どのような経験や教育の結果としてそうなったのかがわからなければ、コメントのしようもないということを前置きとして話した上で、4歳の子どもの一般的な発達の様子や、私たちの教室に通う子どもの具体的な様子を伝えました。その中で、幼児の記憶力は、われわれ大人が想像する以上に、優れていることも伝えました。

 その上で、私たちが目指す教育の目標とてらして、私がすばらしいと感じたのは、雅子さまが、風邪で寝込んだときの愛子さまの振る舞いなどの様子からうかがえる、人と人とのかかわりあいの中で、相手の立場にたって物事を感じ、考えられる成長ぶりでした。相手の立場に立って物事を考えることができるということは、物事に別な視点を持てるようになることであり、それはまさしく「論理性の芽生え」なのです。

 私たちが幼児期の基礎教育の目標として掲げている、論理的思考力の土台作りは、別な言い方をすれば「可逆的な思考力」の育成であり、その可逆性を支えるのは、

(1)物事を別な視点でとらえることができる
(2)時間的順序を逆にして(戻して)発想できる  の2点です。

 相手の立場に立って物事を考えることができるという社会性の発達は、思考力の発達にとってもきわめて大切なものなのです。

 小学校入試で問われる、「四方からの観察」や、「観点を変えた分類」、「数のやり取り」、「数の操作における逆思考の問題」等・・・・難しいとされる問題にはすべて、可逆的な思考力が求められています。だからこそ、ペーパーだけの教え込みでは、そうした思考力は育たないし、今の入試の現状にまったく対応できなくなっているのです。

「学力低下」が叫ばれている今の日本の教育に欠落しているのは、この「論理的思考力を育てる教育」なのです。そこに気づかないで「読み書き計算」を徹底すれば、学力低下は防ぐことができると考えている有識者があまりにも多いこと。子どもの学力の現状をもっと詳しく調べ、有効な対策を立てなければ、この国の教育は世界の水準からどんどん引き離されていくばかりです。

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